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祭式において唱えられるヤジュス(yajus 「祭詞」)を収録したもの。yajur は yajus の連音形である。 祭式において行作を担当するアドヴァリユ祭官(adhvaryu)によって護持されてきた[1]:169。
ヤジュスとは、祭式の効力が現れる事を祈って、神格や祭具、供物などに一定の行作と共に呼びかける言葉で、多くは散文で書かれている。祭式の作法や供物の献呈方法など祭式の実務が詠まれている。
韻文の部分は大部分リグ・ヴェーダに同じものが存在するが、散文で書かれた祭文や祈りの文句はヤジュル・ヴェーダに固有のもので、より重要性が高い[1]:177。
成立年代は、紀元前800年を中心とする数百年間と推定されている。
パタンジャリの伝えるところによれば101の流派(シャーカー)に分かれて伝承されていたという[1]:169。5種の学派によるサンヒターが現在に伝えられている[2]:175-177[1]:169-170。
このうち最初の4種類は互いに近い関係にあり、黒ヤジュル・ヴェーダ(Kṛṣṇa Yajurveda)と称する。最後のヴァージャサネーイ・サンヒターは以上と異なり、白ヤジュル・ヴェーダ(Śukla Yajurveda)と呼ばれる。白ヤジュル・ヴェーダはさらにカーンヴァ派とマーディヤンディナ派の2種類に分かれるが、両者の違いは主に祭文の読み方に限られる[2]:177。
黒ヤジュル・ヴェーダと白ヤジュル・ヴェーダのサンヒターの主要な違いは、後者が祭官が唱えるマントラ(韻文部分および散文の祭文)のみを含むのに対して、前者はマントラだけでなく神学的議論を記した部分、すなわちブラーフマナに相当する部分が含まれている点にある[1]:170-171。したがって黒ヤジュル・ヴェーダは原則として独立したブラーフマナを持たない。タイッティリーヤ派のみはタイッティリーヤ・ブラーフマナを別に持つが、これはサンヒターに含まれるブラーフマナ相当部分に対する続編にあたる[2]:211[1]:192。これに対して白ヤジュル・ヴェーダはきわめて詳細なシャタパタ・ブラーフマナを独立して持っている[2]:212-217[1]:192-194。『黒ヤジュル・ヴェーダ』は『白ヤジュル・ヴェーダ』よりも古く成立したと考えられている[2]:179[1]:171。
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