阪田流向かい飛車(さかたりゅうむかいびしゃ)または坂田流向かい飛車[1][2]は、将棋戦法のひとつ。

△ 角
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居飛車模様から後手が変化する力戦振り飛車坂田三吉(阪田三吉)が1919年5月11日木見金治郎の七段昇段披露会席上で土居市太郎を相手に指した一局(東西両雄棋戦、結果は坂田の勝ち)が著名となり、のちにこう呼ばれるようになった(図1)[3]

この戦法の元となる定跡は江戸時代からあり、坂田の創案ではない。九世名人大橋宗英の門下である金親盤次が残した定跡書『金親駒組集』に平手向飛車が掲載されており、先手が指している。初手から▲7六歩△3四歩▲7八金△8四歩▲2二角成△同銀▲7七金△8五歩▲8八飛という順が紹介されているのが、現時点で確認される最古の記録である。金親が活躍したのは江戸の天明年間(1781年から1788年)であるので、坂田土居戦からでも130年以上前の話である[3]小林東四郎が、渡瀬荘次郎と指した実戦譜が残る[4]

概要

急戦策と持久戦策があり、いずれもさばきよりも抑え込むことが中心で居飛車党でも使いこなしやすい戦法である。筋違い角を組み合わせる[5]など、先手の飛車先を逆襲する狙いは単純明快ながら破壊力があり、相手にする方も甘く見ていると一気に潰される展開になる。

記録では坂田自身が阪田流向かい飛車と呼ばれるものを用いたのは上述の七段昇段披露会で、有名な南禅寺の決戦(先手木村義雄 後手坂田三吉、結果は木村の勝ち)などで用いた戦法は阪田流ではなかった。

坂田 持ち駒 △銀歩
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対土居戦は、5月11日に大阪市の「知恩院」、1日置いて13日から兵庫県宝塚市の「寿楼」に場を移して指し継がれ、17日に決着がついた一局である。この大一番をきっかけに「阪田流向かい飛車」として有名になった。

この一局は「角損の一局」としても知られている。図1がその局面で、後手の角は助からないが、実戦は△8一飛▲5四歩△8六歩▲8八歩△5四銀▲3二角△7七銀と進み、最後は後手の坂田が勝つ。

局後、土居はこの一局について「△3三角は古人の法なれど先手より角を換わられ△同金にて姿悪しく……」と、坂田新手とはみなしていない[3]また坂田は「あんなんでよかったら、ほかになんぼでもあるがな」と笑ったという。[要出典]

指し方は、▲7六歩△3四歩▲2六歩△3二金▲2五歩という相居飛車模様から、△3三角▲同角成△同金として後手が向かい飛車に振る。進んで図2。ここから△2四歩▲同歩△同金と攻める。

図3が小林式阪田流と呼ばれる指し方で、小林健二が四、五段のころに指していた。陣形を△5二金もしくは△5二玉と構えて△2四歩▲同歩△同銀と積極的に指す手法である。

図4は坂田流角命戦法と呼ばれ、坂田流向かい飛車から腰掛銀+2八角うちで、居飛車側の飛車の媚びんを狙う[6]

持ち駒 △ 角
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持ち駒 △ 角
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持ち駒 △ 角
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実例

この戦法に対し豊川孝弘が2010年の著書『阪田流向かい飛車戦法』でこのような急戦策は上級者には通用しないことが多いと述べている。しかし一手損角換わりと序盤の出だしが共通していることもあり、特に先手の趣向で序盤で▲7八金△9四歩の交換が入った場合、これらが後手が飛車を振る際にポイントになる手なので、後手が阪田流にすることも多く、山崎隆之糸谷哲郎渡辺明[7]森下卓[8]らが採用している。

また元々、ノーマル向かい飛車やダイレクト向かい飛車を得意とする、佐藤康光土佐浩司[9]らに採用例がある。

糸谷哲郎は、2018年度だけで4度の後手番での使用があり、すべて勝利している[10]

脚注

参考文献

外部リンク

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