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遥感衛星
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遥感衛星(中国語: 遥感卫星、英語: Yaogan Weixing (YW) [1])は、中国の地球観測衛星シリーズであると称される一連の衛星であるが、軍事利用も可能な光学撮影(EO)衛星、合成開口レーダー(SAR)衛星または、軍艦の位置測定用の3つ組衛星(ELINT衛星)から構成されることから、西側のアナリストは、地球観測という名目で偽装された軍用衛星(偵察衛星、スパイ衛星)シリーズであると分析している[2]。 なお、遥感はリモートセンシングの意味である。
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概要
中国のメディアはこの衛星を科学実験、国土資源調査、作物収量の評価、災害モニタリングなどに使用する衛星と報道している。しかし西側のアナリストは軍事目的もあると指摘している[3] [4] [5] [6]。 アナリストらはこれらの衛星がそれぞれ光学センサないしは合成開口レーダーセンサを備えていることを確信している[7] 。
衛星の開発は、光学撮影衛星と3つ組衛星(ELINT衛星)は中国空間技術研究院(CAST)が行い、合成開口レーダー(SAR)衛星は上海航天技術研究院(SAST)が行っている。両研究院ともに、中国航天工業公司(CASC)に所属している。打上げには長征ロケットが使用される[8] 。射場は太原衛星発射センター、酒泉衛星発射センター、西昌衛星発射センターまたは文昌衛星発射場(海南島)が使用される[9] 。
遥感1号は打上げから約4年後の2010年2月4日に崩壊したと見られている。破片の数が少ないことと、軌道速度が低いことから、高速衝突によるものでなく、内部爆発による崩壊の可能性が疑われている[10] 。
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衛星の種別と付番
要約
視点
遥感衛星シリーズは、2006年4月から2024年4月までに、下表のように公表されているだけで74グループ、147基が打上げられている。
遥感衛星には、単独衛星、2基で1グループのもの、3基で1グループのものがあり、番号はグループごとに付けられている。当初は通番で番号が付けられていたが、遥感30-01 (中国語表記では「遥感30号01組」)から、「主番号-枝番号」の形式が用いられる場合が多くなって来ている。ただし、単独の通番が用いられる場合も残っている(37号、41号)。同一グループ内の衛星を区別する場合は、中国語表記では「遥感39号05組01星」のように「番号+星」と表し、英語表記では「Yaogan 39-05A」のようにアルファベットの添え字で区別する。
遥感衛星のうち、最も多数を占める種別は、1グループ3基でほぼ同一の軌道上を飛行するELINT衛星であり、36グループ、106基と、グループ数では全グループの約48%、衛星数では全衛星の約72%を占めている。
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3つ組衛星 (ELINT衛星)
要約
視点
3つ組衛星(トリプレット)は、ほぼ同じ軌道上を3つの衛星が100km程度離れて飛ぶ衛星グループであり[11] 、3基の衛星は1基のロケットで同時に打上げられる。このような3基編隊の運用形態にする理由は、通常は、各衛星への電波到着時刻差 (Time Difference Of Arrival)から、地上の電波送信源(特にレーダー)の位置を割り出すためである [6]。 このため、これらの3つ組衛星グループもELINT衛星である可能性が高いと考えられている [4] [5]。
これらの28グループは、周回高度が約1100km、軌道傾斜角が約63.4°の9グループ(高高度グループ: 遥感9、16、17、20、25、31号(4グループ))、周回高度が約600kmから500km、軌道傾斜角が約35°の19グループ(35°グループ: 遥感30号(10グループ)、35号(5グループ)、36号(4グループ))に分かれる。また、周回高度または軌道傾斜角から、これらの3つ組衛星に関連があると考えられる単独衛星が4基存在する(34号、34-02号、34-03号、34-04号) [12] [13] [14] [15] 。
高高度グループは、周回高度、軌道傾斜角がアメリカ海軍広域海上監視システム(NOSS)と類似しており、NOSS衛星と同じく、高緯度地域を含む全地球上の船舶の位置を特定し、動静を監視するためのELINT衛星ではないかと考えられている[6]。衛星間の距離は、例えば 遥感31-04 A, B, C 衛星の相互の距離は、公開されている TLEからの計算によれば、110kmから140kmであり、NOSSと同程度である。高高度グループは、2021年3月13日の遥感31-04号の打上げを最後に、2024年12月現在まで打上げは途絶えている。
35°グループは2022年12月現在、1カ月に1グループ程度の頻度で打上げられている。これらのグループもELINT衛星である可能性が高いが、高高度グループよりスワス幅が狭く、軌道傾斜角が35°であるので、高緯度地域はカバレージに含まれない。衛星間の距離は、例えば 遥感35-02 A, B, C 衛星の相互の距離は、TLEからの計算によれば、900kmから1800kmであり、高高度グループあるいはNOSSとはかなり異なる。このような軌道配置とする意図については、はっきりしていない。
一つの説明として、米国の空母打撃群のような艦隊に対して、DF-21D、DF-26のような対艦弾道ミサイルによる攻撃を行う場合を想定して、高高度グループのELINT衛星で艦隊の位置を粗く把握し、35°グループでミサイル誘導に必要な高精度位置測定を行うことを意図しているのではないかとの意見が複数の専門家から出されている [4] [5]。 中国が、東シナ海または南シナ海における米国との軍事衝突を主眼において衛星システムを整備していると考えれば、高緯度地域の探査能力を顧みない35°グループの軌道配置は合理的とも言える。
特異衛星・遥感34号、34-02号、34-03号、34-04号
要約
視点
2021年4月30日 07:27 UTCに、酒泉発射場から長征4号C型ロケットを用いて打上げられた遥感34号(国際衛星識別符号:2021-037A、アメリカ宇宙軍衛星カタログ番号:48340)を、同日付の新華社は、光学撮影用衛星と発表しているが[16]、 アマチュア観測者などの観測データによれば、この衛星は光学撮影用に適した太陽同期軌道ではなく、3つ組衛星の高高度グループの典型的な軌道である、軌道傾斜角約63.4度、近地点高度約1083km、遠地点高度約1105kmの軌道に入っている。
また、2022年3月17日に、新華社は、同日 07:09 UTCに、リモートセンシング衛星「遥感34-02号」(国際衛星識別符号:2022-017A、アメリカ宇宙軍衛星カタログ番号:52084)を、酒泉発射場から長征4号C型ロケットを用いて打上げ、計画通りの軌道への投入に成功したと発表した[17]。この衛星は遥感34号と同様の軌道傾斜角約63.4度、高度約1097kmの軌道に入ったことが確認されている[18]。
続いて、2022年11月15日に「遥感34-03号」(国際衛星識別符号:2022-154A、アメリカ宇宙軍衛星カタログ番号:54249)が、2023年3月31日には「遥感34-04号」(国際衛星識別符号:2023-048A、アメリカ宇宙軍衛星カタログ番号:56157)が打上げられ、同様の軌道に入っている。
遥感シリーズに属する、光学撮影用と公表されている他の衛星は、すべて太陽同期軌道に投入されており、遥感34号シリーズのみが例外となる。また、アマチュア観測者などの観測でも、これら4基は3つ組衛星ではなく単独の衛星であるが、今まで遥感シリーズで、高高度3つ組衛星用軌道に単独の衛星が投入された例はこの4件しかない。
遥感34号のみが例外の段階では、従来型の高高度3つ組衛星として計画されたが、1基のみが正常に軌道に投入され、残り2基は展開に失敗して、結果としてこのような不可解な状況になっている可能性が考えられたが、同様の特徴を持った遥感34-02号が打ち上げられたので、この可能性はほぼ無くなった。
2024年12月現在、遥感34号は高高度3つ組衛星 遥感31-02号とほぼ同じ軌道面にあり、遥感31-02号を約10分の時間差で追尾している。同様に、遥感34-02号は遥感31-03号を、遥感34-03号は遥感31-04号を、遥感34-04号は遥感31-01号を、約10分の時間差で追尾している。
以上から、遥感34号シリーズの4基は、現在の時点では、光学撮影衛星であるにしろ、そうでないにしろ、従来の遥感シリーズ衛星の範疇に収まらない特異な衛星であり、高高度3つ組衛星と軌道が類似していることから、高高度3つ組衛星と何らかの関係がある、新規の任務を帯びた新型衛星である可能性が考えられる(例えば米軍のキラー衛星から遥感シリーズの高高度3つ組衛星を護衛する攻撃型衛星など)。
アメリカの類似衛星
2022年4月17日に、米国ヴァンデンバーグ空軍基地から Falcon 9 Block 5 ロケットを用いて、機密衛星 USA-327 (NRO所属、NROL-85) が打ち上げられ、従来のNOSS衛星の典型的な軌道である、近地点高度 1008 km、遠地点高度 1207 km、軌道傾斜角 63.4°の軌道に投入されたことがアマチュア観測者の観測で確認されたが、この衛星は単独衛星であることが確認された[19]。
従来のNOSS 3 (INTRUDER)衛星は、ペアの衛星が100km程度の間隔を空けて、ほぼ同じ軌道上を飛び、各衛星への電波到着時刻差から、海上の軍艦の位置測定を行うELINT衛星であり、遥感衛星の3つ組高高度グループと軌道、用途が酷似している。USA-327 は従来のNOSS衛星の典型的軌道であるが、単独衛星であるという遥感34号シリーズと類似した存在である。
Falcon 9 Block 5 の低軌道(LEO)へのペイロード打上げ能力は最大16.25トンに達するので(第1段ロケット着陸回収の場合)、単独衛星の USA-327 はこの程度の質量を持つことになる。これは推定される NOSS 3 衛星1基の質量(約5トン)の3倍以上であり、かなり大質量の衛星であることになる。
この衛星は、NOSS衛星を中国などのキラー衛星の攻撃から防御する戦闘衛星であるか、または、NOSS衛星と用途、軌道が競合する遥感シリーズの高高度3つ組衛星を攻撃するためのキラー衛星である可能性が有る。この場合、攻撃対象の衛星に接近するためには大規模なマニューバーが必要であり、そのために大量の燃料を消費することになる。衛星の質量が従来の NOSS 3衛星と比べて3倍以上も重いのは、大量の燃料を搭載しているためと考えれば辻褄が合う。
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打上げ記録
要約
視点
太原:太原衛星発射センター(Taiyuan Satellite Launch Center)
酒泉:酒泉衛星発射センター(Jiuquan Satellite Launch Center)
西昌:西昌衛星発射センター(Xichang Satellite Launch Center)
文昌:文昌衛星発射場(Wenchang Satellite Launch Site;海南島)
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関連項目
脚注
外部リンク
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