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沖縄県宮古島市の下地島にある池 ウィキペディアから
通り池(とおりいけ)は、沖縄県宮古島市の下地島の西岸にある池である。「下地島の通り池」として国の名勝及び天然記念物に指定されている。
下地島北西部の海岸近くにある大小2つの円形の池で、一の池と呼ばれる海側(南側)の池が直径75メートル、水深45メートル、二の池と呼ばれる陸側(北側)の池が直径55メートル、水深25メートルである。地上からは2つの池が並んでいるように見えるが、これらは地下でつながっており、さらに海側の池は洞穴で海とも通じている。「通り池」という名は、このような池の構造に由来する。この地形は、海岸にあった鍾乳洞が、波によって侵食されて大きくなり、天井が部分的に崩落して形成された陥没ドリーネに海水が浸入したものである[1]。池の周辺には石灰岩が点在するカレンフェルトと呼ばれるカルスト地形が発達している[2][3][4]。
この池は海とつながっているために潮の干満につれて水面が上下し、サーモクラインによって色が変化して見える[5]。また、深度によって塩分濃度や水温に差があるため、多種多様な魚介類が分布しており、サーモクラインによる神秘的な景観とも相まって、絶好のダイビングスポットとなっている[6]。
このような地形は希少であり、また、周囲に学術上貴重な植物が分布していることから、通り池は、2006年7月28日に国の名勝及び天然記念物に指定されている。名勝と天然記念物との二重指定は33年ぶりのことである。なお、この指定によって通り池でのダイビングが規制を受けることはないとされる[3]。
下地島の西海岸には、通り池と同様の陥没ドリーネが点在している[7]。通り池のさらに先には、鍋底池(鍋底)というやや小さい池がある。この池も、通り池と同様に洞窟で海につながっており、ミニ通り池とも呼ばれている[2]。鍋底池までは2002年に遊歩道が整備されていたが、2016年の台風で損壊して通り池から先は通行止めになっている[8]。
神秘的な景観を見せる通り池にはいくつかの伝説が残っている。
伊良部島に下地という村があった。ある男が漁に出てよなたまという魚を釣った。この魚は、人面体魚で、話すことができた。漁師は、珍しいので明日の集まりで人に見せて楽しもうと思い、炭火をおこして炙りかごに載せて乾かしていた。その夜遅く、隣家に住んでいた子供が急に泣き出し、伊良部村に行こうと言い出した。夜中だったので、母親は何とかなだめようとしたが、子供は泣き止まないばかりかいっそう激しく泣き叫んだ。母親が仕方なく子供を抱いて外へ出ると、子供は母親にしっかりと抱き着いて離れない。母親も怪しく思っていると、遠くから大きな声が聞こえてきた。
「よなたま、よなたま、どうして帰りが遅いのか」
すると、隣家で乾かされていたよなたまは
「私は今、炭火の上にのせられて半夜も乾かされています。早く迎えをよこしてください」
と答えた。母子は身の毛がよだち、急いで伊良部村に向かった。翌朝下地村へ行ってみると、村は洗いつくされて跡形もなくなっていた。今も村の跡は残っているが、集落はなくなってしまった。
昔、この付近の木泊村には2軒の家があった。そのうちの1軒に住む漁師がユナイタマ(ジュゴン)を捕らえ、半身を切って隣家にも分けた。ユナイタマが海に助けを求めると、大波が3度押し寄せてユナイタマを運び去り、波が引いた後には、2軒の家があったところがぽっかりと池になっていた。
ある人の後妻に、継子の兄と実子の弟がいた。この兄弟が3、4歳の頃、後妻は二人を連れて通り池に行き、継子を池の端に寝かせ、実子は懐に抱いて、継子が寝入ったら池に落とそうと企てた。しかし、母親が先に寝入ってしまった間に、子供達は位置を替えて、継子が懐に入り、実子が池の端で寝ていた。母親は継子だと思った子を池に蹴り落とし、急いで家に帰ったが、抱えてきた子は継子であった。
昔、下地島に住んでいた漁師が妻に先立たれ、残った子を育てるために後妻を迎えた。3人は仲良く暮らしたが、やがて自分の子が生まれると、後妻は先妻との間の継子を疎ましく思うようになった。ある日、男が漁に出かけると、継母は2人の子供を通り池に連れ出し、継子の兄を滑りやすいつるつるとした岩場に、実子の弟をごつごつとした岩場に寝かせた。
継母は夜中につるつるとした岩場に寝ていた子を通り池に突き落とすと、残った子を背負って一目散に家へと走り出した。すると、兄弟がいないことに気づいた背中の子は、継母にこうたずねた。「弟はどうしたの?」優しい兄は、岩がごつごつして眠れないという弟と場所を変わってやっていたのだが、継母はそれを知らずに自分の実子を池に突き落としたのだった。間違って我が子を殺したことに気づいた継母は、自分も通り池に飛び込んで命を絶った。
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