逆格子ベクトル(ぎゃくこうしべくとる、Reciprocal lattice vector)とは、物性物理における問題、特に結晶構造の解析やバンド計算等に用いる数学的な概念の一つで、波数の概念の一般化である。
1次元格子点(点列)のフーリエ変換
3次元の実空間中にある無限に続く点列を考える。点間隔を表すベクトルをとすると、
これをフーリエ変換すると、逆空間(k空間、波数空間、逆格子空間)では次の式で表されような無限に続く平面の列(法線、面間隔)になる。
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点列を次のような「くし型関数」として表す。
これをフーリエ変換すると、3次元デルタ関数の性質より、
このデルタ関数の中身が0になる条件式
は無限に続く平面の列を表している。 |
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2次元格子点のフーリエ変換
3次元実空間中にある無限に続く2次元格子点は、次のように表される。
これをフーリエ変換すると、波数空間では2次元的に規則正しく並んだ無限に長いロッドになり、次の式で表される。
これを逆格子ロッドと呼び、結晶表面の構造解析でよく用いられる。
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2次元格子を、くし型関数を用いて次のように表す。
これは上述の点列の畳み込みであることが分かる。つまり畳み込みを記号で表すとすると、
よって上述の点列のフーリエ変換の結果と畳み込みの性質より、2次元格子のフーリエ変換は2つの平面列の積であることがわかる。
2つの平面が重なる部分は直線(無限に長いロッド)になる。よってこれは無限に長いロッドが二次元的に並んだものである。 |
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3次元格子のフーリエ変換
3次元の実空間中の格子点は、次のように表される。
これをフーリエ変換すると、波数空間では次の式で表される3次元格子点になる。
これを逆格子点と呼ぶ。
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3次元格子を、くし型関数を用いて次のように表す。
2次元格子の場合と同様に、これも上述の点列の畳み込みで表せる。
よって上述の点列のフーリエ変換の結果と畳み込みの性質より、3次元格子のフーリエ変換は3つの平面列の積であることがわかる。
3つの平面が重なる部分は点になる。よってこれは点が3次元的に無限に並んだものである。 |
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構造を調べたい3次元結晶の実空間における基本並進ベクトル(基本単位ベクトル)を {a1, a2, a3} とする。このとき、この結晶の逆格子空間での基本並進ベクトル(基本単位ベクトル、基本逆格子ベクトル、単に基本ベクトルとも言う){b1, b2, b3} は、以下のように定義される。
ここで・は内積、×は外積である。このように逆格子空間の基本ベクトルを定義すると、aとbの間には以下の直交関係がある。
また、{b1, b2, b3} と任意の整数の組 m = (m1, m2, m3) によって構成されるベクトル
を逆格子ベクトルという。逆格子ベクトルGm で表現されるベクトルの終点((m1, m2, m3) で表される)の集まりが逆格子、そしてそのそれぞれの終点が逆格子点である。
任意の実格子ベクトルRn と逆格子ベクトルGm には、
という関係がある。ただしNmn は適当な整数である。
尚、基本並進ベクトルがつくる平行六面体(=単位胞)の体積は、
となる。ここでΩは実空間での単位胞の体積で、ΩGは逆格子空間での単位胞の体積である。
逆格子の単位胞は、逆格子の対称性を十分に反映していない。そこで逆格子の原点とその近くにある逆格子点との二等分面で囲まれた領域が用いられ、これをブリルアンゾーンと呼ぶ。ブリルアンゾーンは逆格子の対称性を反映しており、その体積は逆格子の単位胞の体積と同じになる。