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<略歴>
環境・文化アクティビスト。文化人類学者。NGO「ナマケモノ倶楽部」代表。「スローライフ」、「ハチドリのひとしずく」、「100万人のキャンドルナイト」、「しあわせの経済」、「ローカリゼーション」などのキャンペーンを展開。著書に『スロー・イズ・ビューティフル』(平凡社)、『ゆっくり小学校』(SOKEIパブリッシング)、『弱虫でいいんだよ』(ちくまプリマー新書)など。映像作品に『サティシュの学校』など、DVDブックシリーズ全9作がある。
<詳細>
環境・文化アクティビスト。文化人類学者。NGO「ナマケモノ倶楽部」代表。1952年、東京生まれ。兄は建築家・環境運動家の大岩剛一(2019年逝去)。「辻信一」は、尊敬する哲学者、鶴見俊輔から授かったペンネーム。
1972年、早稲田大学文学部入学、同年冬退学。1977年、北米に渡り、さまざまな職業に従事しながらカナダ、アメリカの諸大学で哲学、文化人類学を学ぶ。[1]。1988年、米国コーネル大学で人類学博士号を取得[1]。博士論文は「Tradition and Social Change: An Ideological Analysis of the Montreal Jewish Immigrant Ghetto in the Early Twentieth Century」。
その後カナダ・マッギール大学研究員としてモントリオールに在住。その間、日本の諸雑誌に寄稿。1988年に『ヒア・アンド・ゼア――北米大陸ホーボー通信』(思想の科学社)、1990年に『日系カナダ人』(晶文社)を上梓。1989年から1990年にかけて、メキシコのエル・コレヒヨ・デ・メヒコ大学院大学客員教員を務める。
1991年に帰国、明治学院大学国際学部教員として文化人類学などを担当。翌1992年には国際会議「もうひとつのコロンブス500年――先住民族の英知に学ぶ」を主宰。先住民族、マイノリティ研究、身体性などをテーマに研究・執筆活動を行いながら、社会運動や環境運動への関与を深める。また学生や一般の希望者を募って、北米、中南米、アジア各地へのフィールド・トリップやツアーを実施。現地住民との親密な連携を基礎に独自の「エコカルチャー・ツーリズム」をつくり上げた。
1995年より「マングローブ植林行動計画(アクトマン)」の一員としてエクアドルでの環境保全活動に参加。1999年、中南米の森に棲む動物ナマケモノの低エネ、循環型、共生、非暴力の生き方から、持続可能な社会や暮らしのヒントを学び、提案しようというNGO「ナマケモノ倶楽部」を立ち上げ、以来その代表を務める[2]。このNGOを中心に環境運動と文化運動、そしてエコビジネス運動を融合させた社会変革運動を展開する。
2001年に『スロー・イズ・ビューティフル――遅さとしての文化』(平凡社)を出版、「スローライフ」という新しい思想を世に広めた。フェアトレード・ビジネスの先駆者でナマケモノ倶楽部の共同設立者である中村隆市氏とともに、「スロービジネス」を提唱、自ら「スロー」、「カフェスロー」、「スローウォーターカフェ」、「ゆっくり堂」などの起業に参画した。
2001年、アメリカのブッシュ政権が発表した原子力発電の拡大を含むエネルギー政策に反対する国際的なキャンペーンに共鳴、日本での自主停電運動を提唱。同年5月にオープンした「カフェスロー」で、電気を使わない「暗闇カフェ」を開催。2003年には夏至と冬至の夜の2時間、「でんきを消して、スローな夜を」を合言葉とする「100万人のキャンドルナイト」を呼びかけ、以来、呼びかけ人を務める。また、ナマケモノ倶楽部の「アンペアダウン」キャンペーンなどを通じて、省エネ・脱原発運動を展開した。
2005年以来、世界に向けてGNH(国民総幸福)を唱えるブータンを度々訪問してフィールドワークを進める一方、日本における経済至上主義からの脱却を目指すGNHキャンペーンを主導。2008年、その成果を『GNH――もうひとつの豊かさへ、10人の提案』(辻信一編著・大月書店)にまとめた。
2009年より「アジアの叡知」をテーマにした映像インタビューシリーズを映像作家・本田茂氏と着手。DVDブック『サティシュ・クマールの今、ここにある未来』、DVD『川口由一の自然農という幸せ』、DVDブック『レイジーマン物語』(ゆっくり堂)などこれまでに8巻が刊行された。
3・11東日本大震災と福島原発事故以後は、ナマケモノ倶楽部を中心に「ポスト3・11時代を創る」キャンペーンを展開。その成果は『ホーキせよ!』(ナマケモノ倶楽部)として出版された。また、友人である上野宗則氏と、サティシュ・クマールの「スモール・スクール」に着想を得た「大人のためのアンラーン<学びほぐし>の場づくり」を掲げ、2012年から2018年まで「ゆっくり小学校」プロジェクトに取り組み、延べ100名近くの「小」学生と学びと遊びの時間を共にした。
2017年より3年間、ヘレナ・ノーバーグ=ホッジが提唱する「ローカリゼーション運動」を日本に紹介しようと「しあわせの経済」国際フォーラムの開催に尽力。企業、団体、NGO、学生といった多様なセクターで構成される実行委員会をまとめあげた。
2020年1月、最終講義を一般公開で行い、各地から教え子や市民約300名が参加。同年3月、明治学院大学国際学部を定年退職。同学部名誉教授になる。
現在も環境アクティビストとして講演活動・執筆活動に取り組む中で、特に若い世代の環境・平和活動の応援に時間を割いている。
趣味は、音楽鑑賞(ブラック・ミュージックとジャズ)、散歩とヨガ。俳句と落語。古今亭菊千代師匠率いる落語の会“ぼちぼち亭” の立ち上げに関わり、「ぼちぼち亭ぬうりん坊」を名乗る。
おもな著書に『スロー・イズ・ビューティフル』(平凡社)、『弱虫でいいんだよ』(ちくまプリマー新書)、『ナマケモノ教授のムダのてつがく』(さくら舎)など。映像作品に『川口由一の自然農というしあわせ』、『ヴァンダナ・シヴァのいのちの種を抱きしめて』、『サティシュの学校ーみんな、特別なアーティスト』など、DVDブックシリーズ全9作がある。
2008年から2011年まで、様々な分野の注目すべき変革者たちとの対話を収めた「ゆっくりノートブック」シリーズ全8巻(大月書店)を刊行。このほか『「ゆっくり」でいいんだよ』(ちくまプリマー新書)、『スローライフのために「しないこと」』(ポプラ社)、『常世の舟を漕ぎて――水俣病私史』(語り:緒方正人、世織書房)、『ハチドリのひとしずく―いま、私にできること』(光文社)など多数の著書を持つ。
訳書として、セヴァン・カリス=スズキ『あなたが世界を変える日』(学陽書房)、デヴィッド・スズキ『いのちの中にある地球――最終講義:持続可能な未来のために 』(NHK出版)、スラック・シワラック『しあわせの開発学――エンゲージド・ブディズム入門』(ゆっくり堂)などがある。
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