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フランツ・リストの練習曲集 ウィキペディアから
超絶技巧練習曲(ちょうぜつぎこうれんしゅうきょく、フランス語:Études d'exécution transcendante, サール番号:S.139, ラーベ番号:R.2b)は、ハンガリーのピアニスト、フランツ・リストの作曲した、ピアノのための12の練習曲である。2度にわたる改訂が行われている。原題は「卓抜した演奏のための練習曲集」というほどの意味である[1]。
すべて異なる調で書かれている。2曲組で同じ調号の長調と短調(平行調)とし、2曲ごとに調号の♭がひとつずつ増えていく。この事とタイトルから、初版と第2版とでは全ての調性を網羅しようとしていたが結局断念して12曲に落ち着いたと考えられる。初版と第2、3版では曲順が異なる。第1番と第9番を除き、第2版と第3版とは小節数が異なる(ただし、第1番と第9番も若干音形が異なるものの、第2版と第3版とは本質的に差はない)。
以下は第2、3版の構成である。特記したもの以外は第1版の曲を改作したもの。テンポの変更も記す。
第2版にはタイトルはまだついておらず、『マゼッパ』の題がついたのは1840年の改作からである。また第2版のみつけられる愛称ではあるが、シューマンが特に第6番、第7番、第8番の3曲を以下のように評した。
嵐の練習曲、恐怖の練習曲で、これを弾きこなせる者は世界中探してもせいぜい10人くらいしかあるまい。へたな演奏家が弾いたら、物笑いの種になる事だろう。
まれにだが、第3版の第10番ヘ短調を俗称で『熱情』と呼ぶことがある。
以下は初版の構成である[2]。
第2稿の「24の大練習曲」については良く演奏される第3稿に比べるとはるかに難度が高い。しかし、演奏効果は第3稿の方が高いという見識が一般的なので、第2稿がコンサートで演奏される事はほとんど無いに等しい。ピアニストクラウディオ・アラウ、ピアノ教師ゲンリフ・ネイガウスの2人ともが「演奏不可能」との見解で一致している。
ロベルト・シューマンの音楽エッセイ集『音楽と音楽家』には、1837年時点での「24の大練習曲集」についてのエッセイが収められており、内容は以下のようになっている。
前にも言った通り、この曲は巨匠による演奏で聴かなければならない。できる事ならば、フランツ・リスト自身による演奏がいいだろう。しかし、たとえリストが弾いても、あらゆる限界を超えたところや、得られる効果が、犠牲にされた美しさに対して、充分の償いとなっていないようなところでは、耳障りな箇所がたくさんあるだろうと思う。しかし何はともあれ、来るべき冬の彼の到着は、心から待ち遠しい。
つまり、第2稿はリスト本人の技術をもってしても、十分な表現力をこめた演奏は非常に困難ではないかとシューマンが考える程の難易度という事である。 但し、このエッセイはシューマンがリストによる演奏を聴く前に書かれたものである。
前述のように演奏・録音されるのはもっぱら第3稿である。ショパンの練習曲ほどではないが演奏される機会が多く、ピアノの演奏会用練習曲では代表的な存在である。知名度が突出した曲がないことや、全12曲でCD1枚に収まる長さ(65~70分程度)のため、全曲録音される場合が多い。
アレキサンダー・ボロウスキー、ラザール・ベルマン、クラウディオ・アラウ、ジョルジュ・シフラなどが知られる。また若いピアニストがヴィルトゥオーソ性を示すためにレパートリーに選ぶことが多く、近年ではフレディ・ケンプ、小菅優、アリス=紗良・オット、ボリス・ベレゾフスキーなどが録音している。
演奏困難な第2稿の全曲録音は、レスリー・ハワードのリスト全曲集に含まれるものが代表的。ジャニス・ウェバーもCDを出していたが、絶版[3]。マッシモ・ゴンが全曲演奏を達成[4]し、イディル・ビレットは69歳で全曲録音に成功[5]している。このように、必ずしも演奏不可能、というわけではなくなった。このほか、ジン・ウェンビンがアジア人で初の全曲録音を達成している[6]。シモーネ・ジェナレッリ[7]は初稿と第2稿の双方をデジタル配信している。
最も平易な初稿を好むピアニストも若干名おり、イディル・ビレット、シモーネ・ジェナレッリ[8]、ウィリアム・ウォルフラムは全曲を吹き込んでいる。オリヴィア・シャム、大井和郎が抜粋を録音している。
映像では、David Ezra Okonşar(スタジオ録画。廃盤)とRussell Sherman(ライブ演奏)がそれぞれ全曲演奏のDVDを出している。
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