硬膜外腔(こうまくがいくう、英:Epidural space)は、解剖学上、硬膜椎骨(脊椎)の間の潜在的な空間である[1][2]

概要 硬膜外腔, 概要 ...
硬膜外腔
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脊髄髄質と膜
概要
表記・識別
ラテン語 Spatium epidurale,
spatium extradurale,
cavum epidurale
MeSH D004824
グレイ解剖学 p.875
TA A14.1.01.112、A14.1.01.110
FMA 71228
解剖学用語
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英語の"epidural"は、古代ギリシャ語に由来する。上を意味する"ἐπί"と硬膜を意味する"dura mater"である。ヒトの硬膜外腔には、リンパ管、脊髄神経根、疎性結合織英語版脂肪組織、小動脈硬膜静脈洞英語版、および椎骨静脈叢英語版のネットワークが含まれている[3]

硬膜外投与: epidural administration)とは脊髄周囲の硬膜外腔に薬剤を注入する投与経路である。この投与経路からは、硬膜外麻酔において、局所麻酔薬オピオイドが投与される[4]。他に、造影剤[5]などの診断薬、グルココルチコイドなどの薬剤を投与するためにも用いられる。硬膜外腔には、カテーテルを留置し、治療期間中はその場所に留置し続けることも可能である[6]。意図的な硬膜外投与の技術は、1921年にスペインの軍医フィデル・パヘス英語版[7]によって初めて報告された[8]

頭蓋硬膜外腔

頭蓋骨では、硬膜の骨膜層が頭蓋骨の内面に付着し、髄膜層がくも膜の上に重なっている。それらの間に硬膜外腔がある。硬膜の2層は数カ所で分離し、髄膜層は脳実質の奥深くまで突き出し、脳組織を区画する線維性隔壁を形成している。硬膜外腔は、硬膜外静脈洞が存在するのに十分な広さがある[2][9][10]

4つの線維性隔壁がある:[9]

  1. 大脳鎌、大脳左半球と右半球を分ける。上矢状静脈洞と下矢状静脈洞が含まれている。
  2. 小脳テント英語版小脳から大脳を分離し、横静脈洞、直静脈洞、および上錐体洞を含む。
  3. 鞍隔膜、下垂体窩を上側から囲み、下垂体を保護している。前洞と後洞を含む。
  4. 小脳鎌英語版、左右の小脳半球を分離し、後頭洞を含む。

病的な状態では、血液などの液体がこの空間を満たすことがある。たとえば、断裂した髄膜動脈(多くの場合中硬膜動脈)または硬膜静脈洞(まれに)がこの潜在的な空間に出血し、硬膜外血腫を引き起こす可能性がある[10]

概要 硬膜外麻酔の模式図 ...
硬膜外麻酔の模式図
治療法
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赤: くも膜下腔

ピンク: 硬膜外腔
薄黄色: 脊髄

硬膜外針(ツーイ針)は硬膜外腔に到達している。
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脊髄硬膜外腔

脊柱管において、骨膜層は、体によって形成される脊柱管の内面に付着する。髄膜層は、くも膜脊髄の上にある[2]。椎骨と硬膜鞘の間には脊髄硬膜外腔がある。頭蓋硬膜外腔とは異なり、脊髄硬膜外腔には脂肪組織、内椎骨静脈叢、および脊髄神経根が含まれる[1]

硬膜外腔は頸部で最も小さく、1~2mmである。第2~第3腰椎で5~6mmまで拡大する。その後、腰椎下部および仙骨部まで徐々に拡大する[11]。ただし、第1仙椎レベルで2mmまで、腰部中央部以降でサイズが減少するという説もある[12]硬膜外麻酔はこの腔に局所麻酔薬を注入することにより、行われる。麻酔科の文献やカルテに単に硬膜外腔と記載されていれば、ほぼ、この脊髄硬膜外腔である。

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

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