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結合係数(けつごうけいすう、英: coupling coefficient または 英: inductive coupling factor)は、変圧器(トランス)の一次巻線と二次巻線との結合の度合いを示す無次元数である。記号ではk で表し、日本語ではどちらも結合係数であるが、定義上ではcoupling coefficientは-1以上+1以下の値をとり[注 1]、inductive coupling factorは0以上1までの値をとる[1]。この値が1に近い変圧器を密結合変圧器(または単に変圧器)という。通常の密結合変圧器の結合係数はk = 0.99を超える。この値が1よりも十分に小さく、使用される周波数において漏れインダクタンスのリアクタンス(短絡インダクタンス)、が有効に働くように設計された変圧器を磁気漏れ変圧器という。k = 0.98程度であっても使用される周波数における漏れインダクタンスのリアクタンス(短絡インダクタンス)が大きければ磁気漏れ変圧器になり得る。[注 2]
結合係数は巻線の自己インダクタンス中の有効インダクタンスの比である。言い換えれば変圧器の一次側・二次側それぞれの自己インダクタンスのうち、何割が変圧器として働き、何割がチョークコイルとして働いているかを表す係数であるといえる。
理想的な変圧器の磁束は全て主磁束[注 3]で構成され、漏れ磁束[注 4]がない。この場合の結合係数k = 1(または-1)である。しかし、実際の変圧器では漏れ磁束があるので、結合係数は1よりも小さくなる。そして、この漏れ磁束が変圧器の一次側、二次側にそれぞれ直列に接続されたインダクタンスになる。これが漏れインダクタンス[注 5][注 6]である。漏れインダクタンスは変圧器の一次巻線または二次巻線に直列に接続されたチョークコイルと等価な働きをする。
一次巻線、二次巻線の自己インダクタンスをそれぞれL1、L2 、一次側、二次側の有効インダクタンス(励磁インダクタンス)[注 7][注 8]をそれぞれM1 、M2 とすれば次の式が成り立つ。
漏れインダクタンス[3]は、等価回路においては一次側漏れインダクタンスL e1 、二次側漏れインダクタンスL e2 として表される。
つまり、変圧器として働くのは全巻線の自己インダクタンスのうちのk 倍である。例えば結合係数k = 0.7 として、一次巻線の自己インダクタンスがL1 = 1 H ならば、変圧器として働く有効インダクタンスはM1 = 0.7 H であるということになる。そして残りの部分 0.3 H は漏れインダクタンスになる。これは二次巻線側においても同じことが言える。
一次巻線側、または二次巻線側にインピーダンス変換した漏れインダクタンスはL e1 、L e2 とも同じ値になる。また、結合係数は一次側から見ても二次側から見ても同じ値である。
励磁インダクタンスと相互インダクタンスM との関係は以下のとおりである。
結合係数(coupling coefficient)は相互インダクタンスMと各巻線の自己インダクタンスL1、L2から以下のように定義される。巻線が減極性に巻かれている場合は相互インダクタンスMの値は正となるので結合係数は正となり、加極性に巻かれている場合は相互インダクタンスMの値が負となるので結合係数も負となる。
結合係数(inductive coupling factor)は主磁束のパーミアンスと一次側総磁束のパーミアンスと二次側総磁束のパーミアンスから次のように定義される。
どちらの結合係数も絶対値は等しくなる。
変圧器の結合係数は、JIS C5321に定められた測定法によって自己インダクタンスLopen と漏れインダクタンス(短絡インダクタンス)Lsc [注 9][注 10]を実測して求める。Lsc は変圧器の一次巻線、または二次巻線を短絡して、他方から実測することにより得られる値である。実測したLopen とLsc から以下の式で結合係数k が求められる。結合係数は一次側から実測しても二次側から実測しても同じ値になる[注 11][注 12]。
一般的な変圧器の性質として、漏れ磁束の効果を一切考慮しない理想変圧器においては、巻数比(変成比)N2 /N1 と変圧比V2 /V1 は等しくなる。しかし実際の変圧器の結合係数まで考慮に入れた場合、軽負荷またはほとんど二次電流が流れない状態では変圧比は以下のようになる。
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