Loading AI tools
ウィキペディアから
細胞外シグナル調節キナーゼまたは細胞外シグナル制御キナーゼ(さいぼうがいシグナルちょうせつ/せいぎょキナーゼ、英: extracellular signal-regulated kinase、略称: ERK)は、細胞内のシグナル伝達分子として機能するプロテインキナーゼであり、減数分裂や有糸分裂の他、分化細胞の分裂終了後の機能にも関与している。古典的MAPK(英: classical MAPK)とも呼ばれる。
MAPK/ERK経路では、Rasはc-Rafを活性化し、MEK(MKKまたはMAP2Kと表記されることもある)、その後にERKが活性化される。一般的にRasは成長ホルモンによって、受容体型チロシンキナーゼとGRB2/SOSを介して活性化されるが、他のシグナルによって活性化される場合もある。ERKはELK1[1]など多くの転写因子や、下流のいくつかのプロテインキナーゼを活性化することが知られている。
MAPK1(mitogen-activated protein kinase 1)はERK2(extracellular signal-regulated kinase 2)という名称でも知られる。85%の配列同一性を有する2つの類似したタンパク質が、当初ERK1、ERK2と命名された[2]。これらは、上皮成長因子受容体などの細胞表面のチロシンキナーゼの活性化後に迅速にリン酸化されるプロテインキナーゼの探索から発見された。ERKのリン酸化は自身のキナーゼ活性の活性化をもたらす。
細胞表面受容体とERKの活性化を結びつける分子イベントは複雑である。GTP結合タンパク質RasはERKの活性化に関与していることが知られている[3]。Rasによって活性化されるプロテインキナーゼRaf-1(c-Raf)は「MAPキナーゼキナーゼ」をリン酸化することが示されており、「MAPキナーゼキナーゼキナーゼ」として知られる[4]。MAPキナーゼキナーゼはMEK(MAPK/ERK kinase)と呼ばれており、ERKを活性化する[5]。このように受容体型チロシンキナーゼ、Ras、Raf、MEK、MAPK(ERK)は細胞外のシグナルとERKの活性化を結びつけるシグナル伝達カスケードを構成する[6](MAPK/ERK経路を参照)。
MAPK1を欠失したノックアウトマウスは、初期発生に大きな欠陥が生じる[7]。B細胞でのMapk1の条件的欠失から、T細胞依存的な抗体産生におけるMAPK1の役割が示されている[8]。Mapk1に優性機能獲得型変異を有するトランスジェニックマウスからはT細胞の発生におけるMAPK1の役割が示されている[9]。発生中の大脳皮質の神経前駆細胞でのMapk1の条件的不活化は、皮質厚の減少と神経前駆細胞の増殖の減少をもたらす[10]。
MAPK3(mitogen-activated protein kinase 3)はERK1(extracellular signal-regulated kinase 1)という名称でも知られる。MAPK3を欠失したノックアウトマウスは生存可能であるが、それは大部分の細胞においてMAPK1がMAPK3の機能の一部を果たすことができるためであると考えられている[11]。主な例外はT細胞であり、MAPK3を欠失したマウスはCD4+CD8+段階後のT細胞の発生が低下する。
異常なRas/Rafシグナル、DNA損傷、酸化ストレスによるERK1/2経路の活性化は細胞老化をもたらす[12]。がん治療による軽度のDNA損傷はERK1/2による老化を引き起こすが、より重度のDNA損傷ではERK1/2は活性化されず、アポトーシスによる細胞死が誘導される[12]。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.