特定の目的のための英語(とくていのもくてきのためのえいご、英語: English for specific purposes、ESP)は、英語教育の分野で、ビジネス英語(英語版)、技術英語 (Technical English)、科学英語 ( Scientific English)、医学英語 (English for medical professionals)、著述家のための英語 (English for waiters)、観光英語 (English for tourism)、芸術的目的のための英語 (English for Art Purposes) などが含まれているが、「specialized English」(非英語話者にもわかりやすいよう、単語を1500程度に制限し、センテンスの長さも短くした、国際放送用の英語)とは異なる概念であり、混同してはならない[1]。ESPのひとつとしての航空英語は、パイロットや、航空管制官、民間航空機の訓練生など、航空無線によるコミュニケーションに従事する者たちに教えられる[2][リンク切れ]。ESPはまた、特定の目的のための言語(英語版)のアバターのひとつとも見なされる[3]。
日本語では「特定目的の英語」[4]、「目的別英語」[5]などとも表現される。
絶対的な特徴
Tony Dudley-Evansは、以下のような、ESPの「絶対的な特徴」を与えた[6][7]。
- ESP は、学習者の特定の欲求(必要)に応じて定義される。
- ESP は、それが関わるディシプリン(学問分野)に底通する方法論や実践活動を活用する。
- ESP は、文法、語彙、記録 (register)、学習技能、ディスクール(言説)、ジャンルなどにおいて、そうした活動にふさわしい言語に中心を置く。
付加的な特徴
Strevens (1988)
ESP は以下の特徴をもつ場合があるが、必須ではない。
- 習得されるべき特定の言語能力を限定する。(例えば、読解のみに限定する。)
- 事前に用意された手法にいっさい拠ることなく教えられる。(pp.1-2)
Dudley-Evans & St John (1998)
- ESP は、特定のディシプリンと関連づけられ、あるいは、そのために設計される。
- ESP は、それが教授される特定の状況において、一般的な英語の教授とは異なる方法論が用いられる。
- ESP は、高等教育レベルであれ、職業教育であれ、成人の学習者のために設計されることもある。いずれにせよ、中等教育の学習者向けに用いられることもある。
- ESP は、一般的には中程度から上位の学習者を対象に設計される。
- ESP コースの大部分には、初学者が用いることができるような、言語システムについての基礎的知識が組み込まれている。 (pp. 4-5)
ESP は、世界各国の数多くの大学で教授されている。TESOL、IATEFLなど、英語教員の学会組織の多くには、ESP についての部門が設けられている。ESP コースの設計にも注目が注がれている[8][9]。ESP の教授は、第二言語としての英語(en:English as a second or foreign language)や学術目的の英語(英語版) (EAP) との共通する面も多い。急速に拡大しつつあるビジネス英語は、特定の目的のための英語を広義に捉えた場合には、その一部と考えられる。
- Laurence, Anthony (1998). “Defining English for specific purposes and the role of the ESP practitioner” (PDF). Center for Language Research 1997 Annual Review (会津大学語学研究センター): 115-120. http://www.laurenceanthony.net/abstracts/Aizukiyo97.pdf 2016年3月23日閲覧。.
- Tony Dudley-Evans (8 November 1997). An Overview of ESP in the 1990s (PDF). The Japan Conference on English for Specific Purposes. Center for Language Research. University of Aizu. pp. 5–11. 2016年3月23日閲覧。
- Hutchinson, T. & A. Waters. 1987. English for Specific Purposes: A learning-centered approach. Cambridge: Cambridge University Press.
- Eric.ed.gov, Dudley-Evans, Tony. An Overview of ESP in the 1990s. In: The Japan Conference on English for Specific Purposes Proceedings (Aizuwakamatsu City, Fukushima, Japan, November 8, 1997)
- Amazon.co.uk, Dudley-Evans, Tony (1998). Developments in English for Specific Purposes: A multi-disciplinary approach. Cambridge University Press.
- Developmentalpsychologyarena.com, Helen Basturkmen. Ideas and Options in English for Specific Purposes. Published by: Routledge, 2005. ISBN 978-0-8058-4418-4.
- The Japan Conference on English for Specific Purposes Proceedings (Aizuwakamatsu City, Fukushima, November 8, 1997) Orr, Thomas, Ed.
記事
- Esp-world.info, Hewings, M. 2002. A history of ESP through 'English for Specific Purposes'.
- Iteslj.org, Kristen Gatehouse. Key Issues in English for Specific Purposes (ESP) Curriculum Development. The Internet TESL Journal.
- Antlab.sci.waseda.ac.jp, Laurence Anthony. English for Specific Purposes: What does it mean? Why is it different?