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大江健三郎の小説 ウィキペディアから
『洪水はわが魂に及び』(こうずいはわがたましいにおよび)は日本の小説家・大江健三郎の純文学長編小説。1973年に新潮社より「純文学書下ろし特別作品」として出版された。第26回野間文芸賞受賞。
大木勇魚は息子で知的障害のある幼児ジンと共に、社会から逃避し、東京郊外の核避難所跡に籠もり、瞑想によって「樹木の魂」「鯨の魂」と交感して暮らしている。
勇魚は「自由航海団」の若者たちに出会う。「自由航海団」は、来たるカタストロフにそなえた集団訓練を行う、社会にうまく適応できなかった夢想的な少年たちである。
あるきっかけから「自由航海団」メムバーの女の子、伊奈子とジンは心を通わせるようになる。勇魚は「自由航海団」リーダーの喬木と「鯨の木」について話をする。勇魚と「自由航海団」は徐々に打ち解けていく。
勇魚が、妻の父である保守系の大物政治家「怪」(け)の個人秘書であった時に犯した罪を「自由航海団」のメムバーに打ち明けたことで、彼らから信頼されて仲間となる。勇魚は「自由航海団」における「言葉の専門家」として『カラマーゾフの兄弟』の講読を行い、少年らを教育する。
「自由航海団」は、自分たちの情報をマスメディアに売ったカメラマン、縮む男を尋問中に殺害してしまう。「自由航海団」の存在が公になると、核避難所は機動隊に包囲されて銃撃戦へと発展する。
勇魚はジン、ドクター、伊奈子、喬木を核避難所から脱出させ、多麻吉と共に最後まで篭城を続ける。
その中で勇魚は、自らが自認する樹木や鯨の代理人とは僭称に過ぎず、それらを殺さんと謀る人々と同じ側の人間であった事を悟る。そして機動隊の放水によって水で満たされる核避難所の中で「樹木の魂」と「鯨の魂」に最後の挨拶を送る。「すべてよし!」
大岡昇平は野間文芸賞の選評としてこう述べている。「「『洪水はわが魂に及び 』を推します。題材に一貫性があり、溢れ出る想像力によって統制された世界を現出しています。文体に延びがあり、小説を読む楽しさを感じました。一作ごとに現代的なテーマを選び、全力投球する作者の姿勢に敬意を感じました。『万延元年のフットボール 』以来六年振りで、新しい価値を創造したので、授賞にふさわしいと思います」蛇足をつけ加えれば、「祈り」がこの度の作品に現われた新しい要素であり、「ジン」というアラビヤンナイト的な名前を持った小児の聖性が、作品全体になんともいえない神秘の光をみなぎらせているのに魅惑された。」[3]
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