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現在一般的な「新」の字と比べると、左下にある「木」の部分の横画が一本多く「未」となっているように見えるが、本来「新」や「親」の左側、偏の部分は「辛」と「木」からなり、「シン」という読みも「辛」の部分による[2]。
安岡孝一はこの字体を旧字としているが[3]、この場合は単に古い字体という意味であって、戦前に使用されていた(戦後の新字体に対する)旧字体、いわゆる康熙字典体ではない。18世紀に編纂された康熙字典の親字は現在一般的な「新」と同じものである。この本字(/𣂺)は、千数百年前の時代の字体である[2]。
常用漢字ではなく、人名用漢字に含まれることもなかったため、1948年(昭和23年)以降は子供の名付けには使用できない[3]。しかし2004年(平成16年)に法務省が戸籍電算化のために定めた戸籍統一文字の55,255字には収録された[3]。Unicodeには2001年に「𣂺」(U+230BA)として収録されている。
朝日新聞の題字は、唐の欧陽詢(557年 - 641年)の『宗聖観記』の筆跡から集めたものだが、その中に「新」の字がなかったため、「親」と「柝」から合成している[2]。元となった「親」が横画の一本多い古い字体であったため「新」もこの字体になった。
朝日新聞の他にも日本の新聞の題字にはこの字体が多用されていた。1954年(昭和29年)の時点では、日本新聞協会加盟社で題字に「新聞」とある60社のうち27社 (45%) が横棒の一本多い「」(𣂺)を使用していた[4]。この件では1952年から54年にかけて各紙に読者からの投書がたびたび寄せられており、林達夫も「文學界」1953年9月号に「新聞について」という記事を寄せ、当用漢字・新字体・現代仮名遣いを率先して採用し普及させた新聞が「一般の常識からは遠い」文字を使っていると批判した[5]。これに対し日本新聞協会の内部では、全国各紙で題字を通常の「新」に統一するよう新聞協会用語懇談会で提案されたが、題字はデザインであるという反対意見もあり見送られた[6]。
しかし、横棒の一本多い「」(𣂺)を題字に掲げる新聞はその後次第に減っていった。
『日本新聞年鑑 2022』および『日本マスコミ総覧 2017年-2018年版』によると、題字にこの字体「」(𣂺)を使用している新聞は以下の42紙。
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