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ボラティリティ指数の一つ ウィキペディアから
VIX指数(英: VIX Index)またはCBOEボラティリティ指数(英: CBOE Volatility Index)とは、シカゴ・オプション取引所(CBOE)が、S&P 500を対象とするオプション取引の満期30日のインプライド・ボラティリティを元に算出し、1993年より公表しているボラティリティ指数。
VIX指数は今後30日間のS&P 500の予想変動範囲を表現していて、予想変動範囲(%) = である[1]。例えばVIX指数が18の場合は予想変動範囲が5.2%である[1]。ただし現実にはS&P 500が下落する場合はVIXは上昇する傾向があり、VIXとS&P 500のパフォーマンスは負の相関関係にある[1]。その統計的傾向から俗に恐怖指数(きょうふしすう、英: fear index)とも呼ばれる。
2003年よりCBOEはゴールドマンサックスと共同して開発したより精度の高い計算方法でのVIX指数を公表するようになっている。
1993年当初のVIX指数はS&P 100に基づくものであったが、2003年9月22日よりS&P 500に基づく物に変更し、計算方法も修正し、元々のVIX指数をCBOE S&P 100ボラティリティ指数(VXO指数)に改名した[2]。2003年9月22日より前のVIX指数はVXO指数の事を指している場合がある。
理論的にはVIX指数は満期までのS&P 500のボラティリティの平均値の期待値として解釈される。満期を としたVIX指数は以下の式で算出される[3]。
ここで は金利であり、 は満期を とするオプションのインデックス価格に対して望ましいレベルの先渡価格のインデックスである。 はオプションの行使価格の水準を表しており、行使価格の小さい方から昇順で番号付けられていて、 が を下回る最も大きな行使価格の値となるようになっている。 は と の差分の2分の1 である。 は行使価格 、満期 のオプション価格のビットアスクスプレッドの中点となる。ただし、 ならばプットオプション、 ならばコールオプションの価格が用いられている。
第2項は補正としての意味合いが強く、VIX指数の理論的なバックグラウンドを理解する上で重要なのは第1項の総和である。そこで第2項は無視して、第1項について考えてみる。第1項は積分を離散化したもので、あらゆる水準の行使価格でのオプションが市場で取引可能であるとすれば、次の積分形式での表示が可能である。
ここで はそれぞれ満期 、行使価格 のコールオプションとプットオプションの価格を指す。この時、リスク中立確率測度による期待値を で表すと、リスク中立確率測度の定義から
となる。ここで は満期 におけるオプションの原資産の価格である。よって
と表されることが分かる。ここでCarr-Madan の展開公式[4]から次の式変形が可能である。
したがって
となる。現時点を 時点とすると先渡価格の無裁定価格は なので次が得られる。
ここで原資産価格 のリスク中立確率測度下での価格変動がボラティリティが変動する幾何ブラウン運動に従うとする。つまり
であるとする。ただし はリスク中立確率測度下でのブラウン運動で、 は時間によって変動するボラティリティである。この時、伊藤の公式から
となる。これを に代入し、整理すれば
が得られる。第2項は確率積分の期待値なので に妥当な仮定を課せばその値は0である。つまり次の結果が得られる。
よって
となる。したがってVIX指数は満期までの平均ボラティリティにリスク中立確率測度で期待値を取ったものを基準化した指数である。CBOEが発表しているVIX指数はS&P 500を原資産としたオプション価格と先渡価格から計算されるので、VIX指数はS&P 500のボラティリティに対するものとなる。またCBOEが発表しているVIX指数の満期は30日である[3]。
VIX指数を原資産とした金融派生商品であるVIX先物(VX)[5]やVIXオプションも取引されている。VIX指数のボラティリティ指数(ボラティリティのボラティリティ)であるVVIX指数[6]もCBOEは公表している。
日本国内の証券取引所においては、VIX先物指数に連動するETFやETNが上場していたが、2024年現在は全て上場廃止となっている。
VIX先物取引については、楽天証券、GMOクリック証券、IG証券が、CFD取引の銘柄という形で取り扱っている。いずれの証券会社においても、買建て、売建て両方とも可能であるが、市場の変動状況によっては新規の売建てが制限される場合がある。
将来の株価の対数収益率の分散に対する先渡契約をバリアンススワップ (英: variance swap) と言う[7]。またバリアンススワップにおける先渡価格をバリアンススワップレートと言い、S&P 500に対する満期が30日のバリアンススワップレートはその値が理論上はVIXと同じであるため、近似値としてVIXが使用されることがある[8]。
また実現した株価の対数収益率の分散の平均値(実現ボラティリティ)よりVIXの方が高くなることが統計的に確かめられている[9]。このVIXと実現ボラティリティの差をバリアンスリスクプレミアム (英: variance risk premium) と呼ぶ。
VIX指数はインプライド・ボラティリティを用いているが、インプライド・ボラティリティがオプションを利用した複雑な計算をしているにもかかわらず、過去の値動きから単純に標準偏差を計算しただけのヒストリカル・ボラティリティと結果が大差無いという批判がある[10][11][12]。
2017年5月23日に、VIX指数の計算に使われるS&P 500のオプションは取引の少ない物が含まれていて、それを使用することでVIX指数を操作することが可能であるうえ、その対象となっているS&P 500のオプションだけ不自然に取引が多いという論文[13]が発表された。更に、2018年2月12日に実際にVIX指数を不正操作している人がいるという匿名の告発が証券取引委員会になされた[14][15]。
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