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国体明徴声明(こくたいめいちょうせいめい、旧字体:國體明󠄁徵聲明󠄁)とは、1935年(昭和10年)の天皇機関説事件の中で、美濃部達吉の天皇機関説を排撃することで政治的主導権を握ろうとした軍部・右翼諸団体が時の岡田内閣に迫って出させた日本の政府声明 。
天皇機関説が天皇を統治機構の一機関としているのに対し、国体明徴声明では天皇が統治権の主体であることを明示し、大日本帝国が天皇の統治する国家であるとした宣言である。
そもそも大正期半ばから昭和初期にかけて天皇機関説は国家公認の憲法学説であり、昭和天皇が天皇機関説を当然のものとして受け入れていたことはよく知られている[要出典]。しかし、軍部の台頭とともに起こった国体明徴運動の中で、天皇機関説は国体に反する学説として排撃を受け始めた。
1935年(昭和10年)2月19日、貴族院本会議の演説において菊池武夫議員が、天皇機関説は国家に対する緩慢なる謀叛であり、美濃部を学匪と非難した。
この演説を引き金に軍部・右翼による機関説排撃が始まり、美濃部が「一身上の弁明」として天皇機関説を平易に解説する釈明演説(2月25日貴族院本会議)を行うも、美濃部の著書は発禁となった(『憲法撮要』『逐条憲法精義』『日本国憲法ノ基本主義』)。
さらに軍部・右翼は国体明徴運動を政治利用、各地の在郷軍人会を中心とする機関説排撃運動が全国的に展開されたため、岡田内閣はその対応策として1935年(昭和10年)8月3日「国体明徴に関する政府声明」を発し、天皇機関説は国体の本義に反するとした(第1次国体明徴声明)。
これを受けて軍部・右翼は運動の中止を指示、猛威を振るった運動は終息するかに見えた。
美濃部も1935年(昭和10年)9月18日、貴族院議員を辞するに至るが、辞職に際して出された美濃部の声明が軍部・右翼の猛反発を招き、紛議が再燃。軍部・右翼は国体明徴の徹底を首相の岡田啓介に迫り、1935年(昭和10年)10月15日、政府は再び「国体明徴に関する政府声明」を発した(第2次国体明徴声明)。
第2次声明では、「機関説は国体の本義に反する」とするに留まっていた第1次声明よりさらに進んで、「機関説は
以上のような一連の天皇機関説排斥運動に関して注意すべき点は、これが学術論争といった類のものではなく、政争の道具にされた点である。
つまり軍部による政治的主導権奪取の手段として利用されたのである。2度にわたる政府声明を以って事態は一応の沈静化を見たが、これにより大日本帝国憲法下における立憲主義の統治理念は公然と否定されることとなった。
恭しく惟みるに、我が國體は天孫降󠄁臨の際下し賜へる御神󠄀敕に依り昭示せらるゝ所󠄁にして、萬世一系の天皇國を統治し給ひ、寶祚の隆󠄁は天地と俱に窮なし。されば憲󠄁法發布の御上諭󠄀に『國家統治ノ大權ハ朕󠄂カ之ヲ祖󠄁宗ニ承ケテ之ヲ子孫ニ傳フル所󠄁ナリ』と宣ひ、憲󠄁法第一條には『大日本帝󠄁國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス』と明󠄁示し給ふ。卽ち大日本帝󠄁國統治の大權は儼として天皇に存すること明󠄁かなり。若し夫れ統治權が天皇に存せずして天皇は之を行使󠄁する爲の機關なりと爲すが如きは、是れ全󠄁く萬邦󠄁無比なる我が國體の本義を愆るものなり。近󠄁時憲󠄁法學說を繞り國體の本義に關聯して兎角󠄀の論議を見るに至れるは寔に遺󠄁憾に堪へず。政府は愈〻國體の明󠄁徵に力を效し、其の精󠄀華を發揚せんことを期󠄁す。乃ち茲に意󠄁の在る所󠄁を述󠄁べて廣く各方面の協力を希望󠄁す。 — 「国体明徴に関する政府声明」1935年8月3日 (第1次国体明徴声明)
曩に政府は國體の本義に關し所󠄁信を披瀝し、以て國民の嚮ふ所󠄁を明󠄁にし、愈〻その精󠄀華を發揚せんことを期󠄁したり。抑〻我國に於󠄁ける統治權の主體が天皇にましますことは我國體の本義にして、帝󠄁國臣民の絕對不動の信念なり。帝󠄁國憲󠄁法の上諭󠄀竝條章の精󠄀神󠄀、亦此處に存するものと拜察す。然るに漫りに外國の事例・學說を援󠄁いて我國體に擬し、統治權の主體は天皇にましまさずして國家なりとし、天皇は國家の機關なりとなすが如き、所󠄁謂天皇機關說は、神󠄀聖󠄁なる我が國體に悖り、其の本義を愆るの甚しきものにして嚴に之を芟除せざるべからず。政敎其他百般の事項總て萬邦󠄁無比なる我國體の本義を基とし、其眞髓を顯揚するを要󠄁す。政府は右の信念に基き、此處に重ねて意󠄁のあるところを闡明󠄁し、以て國體觀念を愈〻明󠄁徵ならしめ、其實績を收むる爲全󠄁幅の力を效さんことを期󠄁す。 — 「国体明徴に関する政府声明」1935年10月15日 (第2次国体明徴声明)
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