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音声合成・デスクトップミュージック (DTM) 用のボーカル音源のキャラクター ウィキペディアから
初音ミク(はつねミク、Hatsune Miku)は、クリプトン・フューチャー・メディアが発売しているバーチャルシンガーソフトウェア及びそのキャラクター[1]。「電子の歌姫」[2][3]の二つ名でも知られる。「ボカロ」という文化・ジャンルを築き[4][5]、「初音ミク現象」によってネット発の文化・音楽シーンを大きく変化させた[6]。日本史の教材で「現代のIT技術が生み出した新たな文化の象徴的存在」と評価されている[7]。
開発元 | クリプトン |
---|---|
初版 | 2007年 |
最新版 |
初音ミクNT Ver.2
/ 2025年 |
使用エンジン | M9 |
種別 | 音声合成 |
ライセンス | PCL、CC BY-NC |
公式サイト |
piapro.net 初音ミク公式ブログ 製品一覧 - CFM公式 |
クリプトン社のバーチャルシンガー[8]。「ピアプロキャラクターズ」に属する[1]。
最初の製品はキャラクター・ボーカル・シリーズ第1弾として発売され[2]、発売直後から想定以上の爆発的ヒットを記録[9]。音声合成の枠を超えた様々な分野のクリエイター[10]が創作シーンに参加し、「初音ミク現象」[11][12][13]とも呼ばれる一大ムーブメントを起こした[14]。この現象は「時代の転機」とも言われるほどカルチャーや価値観に変化をもたらした[6](→#初音ミク現象・影響)。
キャラクターの人気も高く、バーチャルシンガーとして国際的に活動し、海外でも広く知れ渡っている[14][7](→#海外展開・世界での活動)。
舞台芸術、デジタルコンテンツ、模型、モータースポーツ、アパレル、雑貨、書籍、広告ほか多種多様な公式のメディアミックスが行われ、2021年にはミク史上初となるオリジナルアニメ/漫画のシリーズも制作中[15]であることが海外メディアの取材で報じられている(→初音ミクのメディア展開)。
ミクはクリエイターの多彩な創作物(UGC)から形作られる「消費者生成メディア(CGM)」によって成立しており[16]、権利元のクリプトンが発行したライセンスに沿う形での無償の二次創作活動も容認されている[注 1](→ピアプロキャラクターズ#キャラクターの利用)。
クリプトンはミクの商業展開を「創作の場」となる様に調整し[17]、キャラクターを用いた創作活動を促進している[18]。
ミクが歌う、あるいはミクを題材とした曲は、2012年時点で10万曲以上にのぼる[19]。
ソフトは“VOCALOID”と“初音ミク NT”の2ラインで展開されている。
企画開発はクリプトン社の佐々木渉(wat)[20][21]。佐々木はクリプトン社の音声合成開発プロジェクトの企画責任者で、「初音ミクの生みの親」とも呼ばれる[22][23]。
ミクの登場でボーカロイド文化が誕生し[4]、音楽シーンには「ボカロ」という1ジャンルが築かれた[5]。
2007年当時、「ニコニコ動画」では「アイドルマスター」のMAD動画の人気に影響を受けて「バーチャルアイドルの擬似プロデュース」の需要が高まっており、バーチャルアイドルとして企画されたミクはユーザーが待ち望んでいた存在だった[35]。クリエイターがボカロPと名乗るのもアイマスMAD文化の様式を引き継いでおり[35]、同社製品のMEIKOを使用した動画「初音ミクが来ないのでスネています」の投稿者がユーザーコメントで「ワンカップP」と名付けられ、そこからボカロ楽曲制作者のP名呼称が広まった[36][37][注 3]。
ミクを用いた創作活動では、ユーザーの投稿作品を元にして別のユーザーが新たな作品を作るという相互的な引用が盛んに行われた[38]。ミク関連の創作はイラストやアニメなど瞬く間に一人歩きを始め[39]、クリエイターとの共創により巨大なムーブメントを形成[40]。多彩なジャンルの公式メディアミックスにも拡大していった。この現象は「創作の連鎖(Peer Production=ピアプロ)」[41][6]または「N次創作」とも呼ばれ[37]、ミクが創作を結びつけるハブとして機能し[11]、あらゆるコンテンツが互いに元ネタになって派生し合った[37]。
商業シーンでは、模型業界で「初音ミクフィギュアブーム」が起こり[10]、初音ミクの公式ライブコンサートでミクの実在感を高める技術・演出が採用され[13]、SUPER GT300で「初音ミク GTプロジェクト」の痛車が参戦してシリーズチャンピオンに輝き[42]、書籍媒体でボカロ楽曲を題材とした商業作品が誕生[5]。さらにGoogleといった世界的企業のCM、オペラ、オーケストラ、著名アーティストとのコラボ、歌舞伎、チャリティー活動、文化財保護プロジェクトなどミクの快進撃は続き[43]、多種多様な作品・文化がネットとリアルに拡散されていった[44]。ミクは音楽や絵画、ファッション、テクノロジー、伝統芸能、国際交流などの異なる分野をいとも簡単に融合・交配(コラボ)させた[44]。
クリプトン社の代表取締役・伊藤博之は、主催イベント「初音ミク マジカルミライ 2013」のムック本冒頭でこう述べている[45]。
ユーザーの中に初音ミクという共通認識があり、いろんな方が切磋琢磨して何かを作る。
初音ミクの絵、初音ミクで歌った声、といった共通のアイコンとしてシェアされていき、作品を好きになる人たち、自分も作品を作ってみたいと思う人たちを生んでいく。
これこそが初音ミクの象徴的な部分であり、僕らが大切にしたいと思っている価値です。
ミクの登場はDTM・同人音楽のシーンにおいて歌い手の確保というボーカル曲に挑む際のハードルを取り除くと共に、ミクが歌っていることにブランド価値が見出されたことで新規曲でも人気を得やすくなり、それらの制作流通を容易にするという状況をもたらした[46]。それにより、ニコニコ動画を始めとする動画共有サービスのブームとも共鳴する形でDTM全般へのブームにまで波及していく[47]。そして後述の「メルトショック」を経てボカロというジャンルを確立させるに至った。
このボカロ音楽が世間一般に知られるきっかけの一つとして、2008年にビクターから発売された史上初の完全なメジャーボカロアルバムであるlivetune feat. 初音ミク「Re:package」の存在が挙げられる[5]。2009年にはソニーミュージックをはじめとする大手が人気ボカロPをフィーチャーしたアルバムをリリース。2010年にはEXIT TUNESの「Vocalogenesis feat.初音ミク」がオリコン1位を記録するなど、日本の音楽シーンに浸透していく[5]。
2023年時点で、ミクは一種の「音楽革命」をもたらしたと回顧されている[48]。これは上記の現象や公式のメディアミックス作品の大ヒットに加え、ミクが源流となったボカロシーンにおいて後に日本の音楽シーンで活躍するアーティストが発掘されたことが大きな拠り所となっている[49][48]。
2007年にニコニコ動画に投稿された楽曲「メルト」は、その後のボカロシーンの流れを決定付けた大きな意味を持つ曲とされる[50]。
それまでミク自身を題材にしたキャラクターソング的な曲が大半を占めていた中[51]、メルトはクリエイターの個性や世界観を反映した歌詞をミクにシンガーとして表現させた曲だった[50]。このメルトのヒットに影響を受けてよりバラエティ豊かな曲が投稿されるようになり[51]、ミクにとってもシンガーとして広く受け入れられて役割を大きく広げさせるきっかけとなった[50]。この事を初音ミクの人気曲になぞらえて「恋するVOCALOID」から「恋する女の子」へと成長していった、とも形容されている[52]。
この現象は裏方である楽曲制作チームの存在に光を当てるきっかけにもなった[50]。それまではコアな音楽ファン以外は裏方を基準にして聴く曲を選ぶことはあり得ないとも言われるほど楽曲制作陣が軽視されていたが、ボカロシーンでは若いリスナーでも制作陣の情報に気を配っていた[50]。この現象を日本の音楽文化における転換点と評する者も多かった[注 4][50]。
ニコニコ動画では人間がメルトをカバーし、原曲を含む同曲がマイリストランキングの上位を独占するという事態を引き起こした[53]。この一連の現象[51]は「メルトショック」と呼ばれ[53]、米津玄師(ハチ)がミクのイベントである「初音ミク マジカルミライ 2017」のテーマ曲として提供した「砂の惑星」にもこれを意識したとも取れる歌詞が登場する[54]。
メルトは『みくみくにしてあげる♪』や『初音ミクに「Ievan Polkka」を歌わせてみた』と共に初音ミク現象・初音ミク歌唱曲の金字塔と称されている[55][56]。
黎明期の初音ミクブームを支えたのは「声の操作によって虚構の人格(ミク)を具現化させる志向」だったとも言われる[57]。権利者のクリプトンら企業はこうした初音ミクを具現化する試みを興行イベントへと昇華させている。
2009年に行われた公式3DCGライブコンサート「ミクフェス '09(夏)」では、透過式のディラッドスクリーンに投影された3DCGのミクが「まるでそこにいる」かのように歌って踊り、観客もミクやバンドメンバーに呼応して盛り上がることで、ミクの巻き起こす熱気はリアルに可視化されていった[58]。ミクは現実世界のステージで立体的な映像を駆使したライブを行い、SF作品の一幕で見られる様な出来事を実現させたのである[59]。こうしたミクのコンサートは架空のキャラクターが生きている様に感じられるという[60]。
初音ミクはライブの聖地・武道館で初めてバーチャルシンガー(仮想の歌手)としてライブを行ったアーティストである[61](→初音ミク「マジカルミライ」)。当時この一件は“快挙”と報じられた[61]。
また、クリプトン社には世界各国の住民から「コンサートを開催してほしい」という要望が多数送られており、そのような声に応える為に世界ツアー「HATSUNE MIKU EXPO」も開催されている[62]。
オペラ「THE END」では初音ミクが自身の「死」について自問自答する[60]。「初音ミクの死生観」をテーマにした作品は最初期のユーザーの投稿作品にも数多く見られたが、これは架空のキャラクターであるミクを通して“死とは何か”という根源的なテーマについて考えを深め、そこから物語が生まれたものと分析される[60]。書籍『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』において、初音ミクは常に「実在と非実在」の境界線上に置かれ、人の想像力や感性を刺激する存在だったと回顧されている[60]。
ミクの人気はフィギュアシーンに初音ミクフィギュアブームを起こした[10]。
初の立体商品であるグッドスマイルカンパニー(グッスマ)の「ねんどろいど 初音ミク」は、絶妙にデフォルメされた可愛らしさが評判[63]となって2010年度[64]までに出荷数が12万個(数十万体もの受注数[10]とも)にのぼる記録的な大ヒットとなった[63]。全ラインナップ中でもミクのねんどろいど製品が最多とされ[65]、2023年には“100体目のねんどろいど初音ミク”の商品化企画が始動している[66]。
ミクのフィギュアはスケール物でもメガヒットを記録し、「初音ミクフィギュアブーム」を確固たるものとした[10]。このほか雪ミクや桜ミク、レーシングミク、モジュール、セカイのミクたち、歌唱曲用デザインなどの多彩なバリエーションも支持を集め、国内・海外の数十ものメーカーがミクの様々な模型(フィギュア、プラモデル、ドール)を発売するに至っている。
特に、ねんどろいどは初音ミクと共に成長したと言っても過言ではなく[67]、両IPは相互的な影響関係にあった[65]。ねんどろいどの造形(顔)は初音ミクの製品で完成し、以後に発売された同シリーズ製品の造形(顔)のベースになっている[68]。
G20ニューデリー・サミットの関連企画では、東京国立博物館の重要文化財保護プロジェクトとのコラボ商品の一つ「ねんどろいど 初音ミク 冬木小袖Ver.」が日本文化を表す作品の一つとして展示されている[69][70]。
ピアプロキャラクターズのポータルサイト「piapro.net」では下記の公式プロフィールが公開されている[1]。
初音ミクの設定・容姿は公式においても企画毎に異なる。誕生日をソフトウェアリリース日に設定するケースもあり、クリプトン社が主催する「初音ミク Happy 16th Birthday -Dear Creators-」では、2023年8月31日を16歳の誕生日として扱っている[71]。
設定についてはキャラクターを色付けしすぎないことも考慮され、企画段階で考えられていた「歌が失われた近未来の世界で、歌う技術を持ったアンドロイド『初音ミク』が発見され、人々が歌うことの素晴らしさを知っていく」というストーリー的な背景設定の採用は見送られ、最低限のプロフィールだけとなっている[72]。
デモソングについては「初音ミクの音楽コンテンツ」を参照。
パッケージ | ライブラリ | 得意ジャンル | 得意な曲のテンポ | 得意な音域 | |
---|---|---|---|---|---|
『初音ミク』 | アイドルポップス、ダンス系ポップス | 70-150BPM | A3-E5 | ||
『初音ミク・アペンド』 | 「Sweet」 | フレンチポップ、バラード、エレクトロニカ等 | 55-155BPM | F3-D5 | |
「Dark」 | バラード、ジャズ、フォーク、アンビエント等 | 60-145BPM | D3-B4 | ||
「Soft」 | ソフトロック、バラード、フォーク、アンビエント等 | 70-150BPM | A3-E5 | ||
「Light」 | ポップス、ロック、ダンス、テクノポップ等 | 85-175BPM | A3-D5 | ||
「Vivid」 | ポップス、テクノポップ、トラッド等 | 95-180BPM | G3-D5 | ||
「Solid」 | ポップス、ロック、ダンス、エレクトロ等 | 65-160BPM | D3-C5 | ||
『初音ミク V3 バンドル』 | 『初音ミク V3 ENGLISH』 | 「ENGLISH」 | ハウス、テクノ、クロスオーバー等 | 100-130BPM | B2-B3 |
『初音ミクV3』 | 「ORIGINAL」 | アイドルポップス、ダンス系ポップス | 70-150BPM | A2-E4 | |
「SWEET」 | フレンチポップ、バラード、エレクトロニカ等 | 55-155BPM | F2-D4 | ||
「DARK」 | バラード、ジャズ、フォーク、アンビエント等 | 60-145BPM | D2-B3 | ||
「SOFT」 | ソフトロック、バラード、フォーク、アンビエント等 | 70-150BPM | A2-E4 | ||
「SOLID」 | ポップス、ロック、ダンス、エレクトロ等 | 65-160BPM | D2-C4 | ||
『初音ミク V4X バンドル』 | 『初音ミク V4 ENGLISH』 | 「ENGLISH」 | ポップス、バラード、ジャズ等 | 80-135BPM | B2-C#4 |
『初音ミクV4X』 | 「ORIGINAL」 | アイドルポップス、ダンス系ポップス | 60-160BPM | A2-E4 | |
「SWEET」 | フレンチポップ、バラード、エレクトロニカ等 | 55-155BPM | F2-D4 | ||
「DARK」 | バラード、ジャズ、フォーク、アンビエント等 | 60-160BPM | D2-B3 | ||
「SOFT」 | ソフトロック、バラード、フォーク、アンビエント等 | 60-160BPM | A2-E4 | ||
「SOLID」 | ポップス、ロック、ダンス、エレクトロ等 | 65-160BPM | D2-C4 | ||
『初音ミク V4 CHINESE』 | 「CHINESE」 | ポップス、バラード、ジャズ等 | 80-135BPM | B2-C#4 | |
『初音ミク NT』 | 「Original DB+」 | ミクらしい可愛げのある歌声 | 表記なし | A2-E4 | |
「Whisper DB+」 | 耳元で囁くような吐息声 | ||||
「Dark DB+」 | ダウナーで哀愁漂う歌声 |
クリプトン社は交友があったイギリス・Zero-G社にVOCALOID技術を紹介し、2004年1月(日本では3月発売)に史上初のVOCALOIDであるZero-G社の「LEON・LOLA」が誕生したが、十分な売り上げとは言えなかった[77]。
2004年11月、クリプトン社よりVOCALOIDエンジンをベースにした女性バーチャルシンガー製品「MEIKO」がリリースされ、ヒットはしたもののその後にリリースされた同社の男性バーチャルシンガー製品「KAITO」は予想を下回る売れ行きだった[77]。2006年頃にはVOCALOIDそのものが低迷しており、YAMAHA側は開発規模を縮小し、チームに残された技術者が肩身の狭い思いをしたという[77]。
そこでクリプトン社は「最後に面白いことでもやろう」と、“合成音声を仮想の少女に歌わせる”ことを提案する[77]。これが初音ミク、鏡音リン・レン、巡音ルカたちクリプトン社のキャラクター・ボーカル・シリーズへと繋がった[78]。この企画の前に「MEIKO2」が提案されていたが、当時の動画サイト上のアイドル文化の盛り上がりやSF文脈で好まれる「歌うアンドロイド」のイメージを鑑みて、可愛らしい姿と声を推した初音ミクの企画へと更新された[20]。
初音ミクの開発はクリプトン社の佐々木渉(wat)を中心に行われ、2006年4月27日にクリプトン社の公式ブログにて開発プロジェクトの始動を告知した[78]。佐々木はこの時、チャーミングでポップでキュートな存在になる事を確信した旨をブログで述べている[78]。
クリプトンはミクを制作するにあたり、数百人の声優の声を聴いた上で“V2エンジンに適している”、“ロリータボイス”、“声色を作って露骨な演技をしていない”ことを選定基準に藤田を選出した[78]。また、キャラクターのイメージの影響を懸念し有名声優の選定は避けられた[79]。
ミクは女声の歌声合成システムに歌手の身体を与えることでより声にリアリティを増すという観点から、ソフト自体をバーチャルアイドル(バーチャルシンガー)に見立て[80]、「未来的なアイドル」をコンセプトとしてキャラクター付けされている[80]。名前自体も未来から来た「初めての音」、機械が歌うのが「未来的」ということに由来する[80]。
ミクのキャラクターデザインはイラストレーターの“KEI”によるもので、頭髪は青緑色、髪型はくるぶしまで届く長さのツインテールで、黒のヘッドセットを装着している。衣装は襟付きノースリーブの上着にネクタイ、ミニスカートにローヒールのサイハイのブーツ、黒を基調として所々に青緑色の電光表示をあしらっている。左上腕部には赤色で「01」とキャラクター名[注 7]をデザインしたタトゥーが入れられており、数字についてはキャラクター・ボーカル・シリーズで最初に発売された製品であることを表す[82]。
デザインはクリプトン社側のオーダーにより、デジタルアイドルという要素と、黒・緑・グレー(シンセサイザーDX7)のイメージを踏襲している[27]。後者はデジタルシンセサイザーの普及に貢献したDX7にちなみ、“初音ミクも一時代を築いて欲しい”との願いを込めてモチーフとしてデザインに取り入れたという[83][注 8]。
初期案に「ポニーテール案」が存在する[27]。後に初期案の細部を変更した「初音ミク if」(原画:KEI)が公式アート展「初音ミク・クロニクル」用に描き起こされ、バリエーション展開が行われた[84]。
初音ミクのメディア展開において当初は公式イラストが少なくバリエーションにも限りが出ていた事から、クリプトン社が新たに絵師に描き下ろしを依頼し、それらを展開する流れになった[85]。雪ミクとレーシングミクも黎明期のこうした流れの中で誕生し、当時既にクリプトン社との親交が深かったグッドスマイルカンパニーのCEO・安藝貴範が発案したという[86]。
『V2』以後の製品パッケージイラストではそれぞれ異なる作家が起用されている。これはミクがその流行の中で様々な絵師によって描かれてきた事に由来し、佐々木(wat)は別の絵師に独自のスタイルで色をつけてもらって公式ページで外伝的に見せていくことを模索していた[87]。
クリプトン公式メディア展開では初音ミクをベースとした商業発のバリエーションが多数登場する。この内、クリプトンが商標を登録しているのは冬季仕様の「雪ミク」、春季仕様の「桜ミク」、SUPER GT仕様の「レーシングミク」、ねんどろいどミクの着ぐるみ1号として製作された「ミクダヨー[注 9]」である。
ゲーム作品から誕生した「モジュール/コスチューム」や「セカイのミクたち」、他社のIPとのコラボから誕生した「フェイ・イェンHD」や「発音ミク」、「18タイプの初音ミク(と相棒ポケモン)」のようなバリエーションも存在する。
CGM型サイトにおける非公式の創作シーンでは、パッケージキャラクターをモチーフとして自由に名前や容姿、性格などを設定し新しいキャラクターを創作するという遊びが行われている。
動画『VOCALOID2 初音ミクに「Ievan Polkka」を歌わせてみた』から生まれた2.5頭身のデフォルメキャラクター「はちゅねミク」や、初音ミクを巡る騒動から生まれた「亞北ネル」、ミクを使いこなせないユーザーの心象を擬人化した「弱音ハク」などはファンの支持を得て、クリプトンとデザインを行った作者との合意の上で商用利用も行われた。
クリプトン社の公式メディアミックス。一覧、シリーズの記事を記載する。
この他、企業の製品・コンテンツのCMにも起用。2011年5月に公開されたトヨタ・カローラのCMは海外で人気を集め、同年12月に公開された「Google Chrome」のCMは初音ミクの知名度をお茶の間レベルで大きく引き上げる[36][99]等、以後の隆盛や海外展開の上でも欠かせない企画となった。
海外ではグッズやコンサート、広告などで大きな成果をあげており[106]、知名度および海外向けECサイトにおける売上は和製IPの中でも優れているとされる[107]。2011年の「Google Chrome」グローバルキャンペーンのCM曲「Tell Your World」がミクの人気・知名度を押し上げ、世界へと羽ばたかせる要因になった[108]。
公式アカウントのフォロワー数はweiboが370万人、Youtubeが315万人、bilibiliが310万人、Facebookの英語版が240万人にのぼる(2024年8月時点・ソーシャル媒体)。
2014年から世界ツアー「HATSUNE MIKU EXPO」がスタートし、2024年5月時点で世界39都市にて計100公演が行われている[109]。
中国での二つ名は公主殿下[110]。人口に差があるとはいえ売上は中国の一強とされ、同国で流通する日本のIPの中でミクは常に上位とされている[107]。クリプトン社は中国のエージェンシー「上海新創華文化発展有限公司(SCLA)」とパートナーシップを結んでおり[111]、同国におけるミクの正規品にはSCLAのロゴ・認定マークが付加される。
中国でのミクの人気は「bilibili」の母体となる動画サイトの創設にも繋がっている(元々はMikufansというミクのファン活動を発端とした動画サイトだった[112])。初の中国開催ライブイベントとして「初音ミク 香港&台湾ファーストコンサート ミクパ」が開催され[113]、2015年より「MIKU EXPO」の開催国の一つとなった[114]。2017年以降は「未来有你(MIKU with YOU)」が継続的に開催されている。また、初音未来公式投稿サイト「POPPRO」も開設された。
2020年に中国アリババグループ傘下のECモールサイト「タオバオ」のライブコマースツールにミクが参加した際、最大視聴者数は“300万人”にも達し、同サイトのサーバーを一時ダウンさせた[115]。こうした出来事は初音ミクのキャラクター人気の高さを裏付けている[116]。
台湾では「ミクパ」や「MIKU EXPO」の開催に加え、プロ野球チーム「楽天モンキーズ(楽天桃猿)」や高雄捷運公司とのコラボなども行われている(→初音ミクのメディア展開)。
韓国では特筆して大きな展開はしてなかったが、公式メディアミックス作品「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」の影響によって日本のイベントに来るファンが増加したという[107]。
北米諸国での売り上げはグッズやフィギュアが牽引している[107]。
アメリカでは2011年5月よりトヨタ・カローラの広告に起用され[117]、同年7月には初の日本国外単独ライブ「MIKUNOPOLIS in Los Angeles」も開催されている[113]。北米は2014年より「MIKU EXPO」の開催地の一つとなっており、2016年には北米3カ国10都市を巡る初の北米ツアー「MIKU EXPO 2016 North America」も開催[113]。
2020年にはアメリカ最大級の野外音楽フェスティバル「コーチェラ・フェスティバル」の出演メンバーとなる(1回目・新型コロナで開催中止)[118]。2024年には再びコーチェラの出演メンバーとなる[119]。さらに北米17都市を巡る「MIKU EXPO 2024 North America」も開催[69]。
シンガポールでは、アニメ・フェスティバル・アジア2009(AFA2009)に参戦し、海外初公演を飾った[36]。その後、AFA2011にて東南アジアにおける最初[113]のミクの単独コンサート「初音ミク・ライブパーティー 2011 ミクパ♪-39's lives IN SINGAPORE-」が開催されている[26]。
インドネシアでは、2014年にジャカルタにおいて世界ツアー「MIKU EXPO」のファーストコンサートが開催された[114]。これは当時クリプトンが海外諸国に向けて“初音ミクに来てほしい都市”のアンケートを取ったところ、10万票を超える投票の中で最多得票がインドネシア(ジャカルタ)だった為である[62]。
マレーシアでは、2017年に「HATSUNE MIKU EXPO 2017 in MALAYSIA」が開催されている[120]。2020年にはアジア太平洋地域の音楽の祭典「ABU TV ソング・フェスティバル」に出演[69]。
初音ミクを起用した2012年のオペラ「THE END」ではフランスのハイブランド「ルイ・ヴィトン」がミクの衣装デザインを担当した[5][36]。THE ENDは2013年11月にパリのシャトレ座、2015年6月にオランダフェスティバル(招聘上演)、2016年8月にドイツとデンマークで上演[121][122]。パリ公演ではチケットが即完売し、フランス大手紙「リベラシオン」が特集を組み、メトロ駅構内に大々的にポスターが張り出されるなどサブカルチャーの枠を超える勢いで話題となった[123]。
2018年に初のヨーロッパツアー「HATSUNE MIKU EXPO 2018 EUROPE」が開催され、パリ、ケルン、ロンドンの3都市を巡業した(パリ公演は「ジャポニスム2018」の一環として実施)[69]。2020年には「HATSUNE MIKU EXPO 2020 EUROPE」をロンドン、パリ、ベルリン、アムステルダム、バルセロナの5都市で開催[69]。2024年には開催国にベルギ-を加え欧州6都市を巡る「MIKU EXPO 2024 Europe」を開催予定[124]。
2024年に南半球で初となる「HATSUNE MIKU EXPO 2024 New Zealand & Australia」をオークランド、ブリスベン、シドニー、メルボルン、バース(ニュージーランド1都市+オーストラリア4都市)で開催予定[125]。
初音ミクは発売後キャラクターとしても人気が出たことからキャラクターをモチーフにしたイラストやアニメーションの作成といった、ファンによる二次創作が行われた[11]。そうした状況に応える形で「ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)」とそれに基いた「キャラクター利用のガイドライン」が定められ、二次創作作品の頒布のため「ピアプロリンク」という仕組みも提供されている[11]。
また、日本以外の利用者への対応のため、2012年12月に公式キャラクターイラストのクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのCC BY-NC 3.0(表示 - 非営利 3.0)でのライセンスも行われた[11]。
2007年
2008年
2009年
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2023年
2024年
発売前には「萌え」を前面に押し出したイメージ戦略に対し、買いにくいといったような否定的な反応も寄せられた。また、大手DTM雑誌からも製品の紹介を断られていたという[153]。
しかし、初音ミクの発売直後からミクを用いて作成された楽曲やキャラクターイメージを用いた動画がニコニコ動画などの動画投稿サイトに次々と投稿され、ここから人気に火がつき、DTMソフトウェアとしては異例のヒット商品となる[9]。DTMソフトウェアのジャンルでは年間1000本売れれば大ヒットとされていたが[77]、発売後2週間だけで3500-4000本の売れ行きを見せ[9]、体験版を収録した「DTMマガジン」2007年11月号は3日で完売し、入手困難になった[26][27][154]。
発売から約1年後の2008年9月までに累計で約4万2000本の売り上げを記録[155]。こうした売り上げには実際の音楽製作に使用しない「キャラクターのファン」による購入も多く含まれている[155]。
2007年8月31日に初音ミクが発売されると、ミクを用いた動画が動画投稿サイトに次々と投稿された。9月4日にニコニコ動画に投稿されたロイツマ・ガールをアレンジした動画『初音ミクに「Ievan Polkka」を歌わせてみた』はミクの歌声によるIevan Polkkaとデフォルメされた初音ミク(はちゅねミク)が長ネギを振る映像をあわせたもので、ミクの流行およびネギのイメージが定着するきっかけとなった[37][56]。
黎明期の初音ミクのムーブメントは自然発火的に広まったもので、仕掛け人はいなかった[39]。「創作の連鎖」が巻き起こったのも、ニコニコ動画にコンテンツ及びその元ネタを共有し合う空気が醸成されていた事が要因であり[39]、動画が人気となってそれを見た視聴者が初音ミクを購入し、新たな動画を投稿するという好循環により人気は膨らんでいった[80]。
投稿されるミク歌唱曲の傾向は当初こそカバー曲が多くを占めていたが、徐々にユーザーが作詞作曲を行ったオリジナル曲の割合が増えてゆく[56]。オリジナル曲の傾向も変遷を見せており、当初は9月20日に投稿されニコニコ動画で一時は最も再生回数の多い動画にもなった「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」のような「初音ミクのキャラクターソング的な楽曲」が多かったが、12月7日にニコニコ動画へ投稿されたラブソング「メルト」の大ヒットの影響もあり、シンガーとしてミクを扱った普遍性のある楽曲が増えていった[128](→#メルトショック)。
ブームの広がりと共に現ピアプロキャラクターズのMEIKOとKAITOにも注目が集まるようになった[90]。この他、短期間で様々な音声合成ソフト・サービスがリリースされたことも当時ミクが及ぼした影響を感じ取れる[156]。
当時、ニコニコ動画で曲を発表していたユーザーはアマチュアが主だったが、プロが発表しているケースもあった[157]。また2008年以降はdorikoを皮切りに、初音ミク歌唱曲を発表して人気となった楽曲クリエイターがミク歌唱曲でメジャーデビューを果たすケースが見られるようになり[56]、2010年5月にはコンピレーション・アルバム『EXIT TUNES PRESENTS Vocalogenesis feat.初音ミク』、2011年1月にはアルバム『EXIT TUNES PRESENTS Vocalonexus feat.初音ミク』がそれぞれオリコン週間アルバムチャートで1位を獲得した[26]。「初音ミク -Project DIVA-」などのゲームソフトや、2009年以降開催されている初音ミクのライブイベントでも動画サイトで発表された楽曲が使用されている[158]。
ニコニコ動画では楽曲以外にもミクに関連した様々な動画が投稿されており、ミクを用いた別のユーザーが投稿した動画を利用して新たな動画を作るといったことが盛んに行われ、ミクで作成された楽曲にPVを付ける、あるいはその楽曲を歌う・演奏するなど様々な広がりを見せている[38]。また、有志の手により週ごとにニコニコ動画上で人気の楽曲を紹介するランキング動画も投稿されている[26][129]。
こうした創作活動の盛り上がりを受け、クリプトンは2007年12月3日にキャラクターの利用に関するガイドラインを公開すると共に、二次利用可能なコンテンツの投稿サイト「ピアプロ」を開設し、クリエイターの創作活動を後押しする体制作りを進めた[26]。初音ミクのメディア展開はこの延長上にあり、多種多様な業界の創作者を起用している。
2007年12月、初音ミクのムーブメントでの代表的な楽曲の一つであった「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」が、ニコニコ動画を運営するニワンゴの親会社であるドワンゴからの着うた配信に伴って当時の子会社のドワンゴ・ミュージックパブリッシングにより日本音楽著作権協会(JASRAC)への信託が行われたが、これに対しファンからの大きな反発が発生。上記のようにミク関連では楽曲の幅広い二次利用が行われていたが、管理団体の管理下におかれることで、たとえ作者が利用を認めていても許諾手続きや利用料の支払いが必要となる懸念があった[159][注 11]。同曲はクリプトンの許可を得ずに楽曲のアーティスト名を「初音ミク」として登録されていた[159]。
この問題は両社がブログ上で食い違う主張を応酬する事態へと発展し、最終的に双方の主張に食い違いを残したままそれまでの経緯を水に流す形で和解が行われており[160]、詳細については明らかになっていない。
12月25日、ドワンゴ・ミュージックパブリッシングとクリプトンは一連の騒動に関する共同声明を発表[161]。今後ミク関連のコンテンツを新規に配信する場合には、制作者との契約を事前に締結し、締結が終わるまでは配信しないことを確認したとした[160]。また、権利関係についても、ミクで制作した楽曲データに関する権利(原盤権)はデータ制作者が、楽曲データに使われている楽曲の権利(出版権)は作詞・作曲者が持ち、権利行使代行会社を自らの意思により決定できること、ドワンゴ・ミュージックパブリッシングがミクを使用して有名になった楽曲の管理を著作者に申し入れる際はJASRACだけでなくイーライセンス等他の著作権管理団体への信託、信託を行わないなどの複数の選択肢について著作者に説明し、著作者の意思を確認してどれを選ぶか決めることなどが示された[160]。
着うたの無断配信については、ドワンゴ、ドワンゴ・ミュージックパブリッシング、クリプトン、フロンティアワークス、作詞作曲者の5者が絡み、それぞれに十分な意思疎通ができていなかった事が原因と見られ[162]、著作権処理の仕組みが一般ユーザー間において無償でコンテンツを利用し合うという状況に未対応だったことに問題の原因があったとされる[163]。WEBで育ったコンテンツで収入を得る行為を好ましく思わない一部のユーザも一因しているの見解もある[164]。
クリプトンとドワンゴ・ミュージックパブリッシングの間で比較的迅速に関係修復が図られたこともあり、その後も流行は拡大を続けることとなる[164]。その後、ネットでの流行に配慮した権利処理の仕組みづくりも進められている。
MikuMikuDance(MMD、ミクミクダンス)はキャラクター3Dモデルを操作し、アニメーションを作成することのできるフリーウェア。クリプトンの製品ではなく、個人の作者が初音ミクの3D映像を作る目的で作成したもので、デフォルトのモデルの一つとしてミクの姿の3Dモデルを内蔵しており、扱いの容易さが特徴とされる。クリプトンのガイドラインの改定で、ミクを利用したプログラム作品の公開が解禁されたことを受けて2008年2月24日より公開された。それまでニコニコ動画で発表されるミクの動画は静止画が主流であったが、これにより多くの3D映像が発表されるようになり、MMDの登場でミクは「アイドルとしての肉体を持った」とも言われる[165]。
MMDは投稿作品のみならず一部の公式ライブ(HATSUNE Appearance等[166])や企業のCM、模型商品(フィギュア)といった初音ミクのメディア展開にも採用されている[167][168]。
日本でのブーム当初から日本製コンテンツを好む国外の人々からも関心を集め、日本製アニメが違法にアップロードされた動画などによって海外に広まっているのと同様に作品の翻訳も行われ、徐々に浸透していった[169]。
特に大きな関心を集めるようになったのは公式ライブ「ミクフェス '09(夏)」や「ミクの日感謝祭」の動画が2009年から2010年にかけて違法アップロード[170]されてからである[169][注 12]。クリプトンの運営するレーベル「KarenT」からiTunes Storeを通じて販売されるボカロ関連楽曲では、2010年以降アメリカからの売り上げが急増したという[171]。
シンガポールで開かれた「アニメフェスティバルアジア2009」にて初の海外公演を行った[100]。その後、2011年5月にミクを起用した北米トヨタ・カロータのCMがオンエア、同年7月にロサンゼルスにおける初の海外単独公演「ミクノポリス」を実施、同年12月にミクを起用したGoogle ChromeのCMが公開されるなど、海外にも進出していく[36][99][58]。
現在では世界ツアー「HATSUNE MIKU EXPO」を行うようになり、海外の企業からも様々なミクの商品が発売されるに至っている。
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