Loading AI tools
ウィキペディアから
『儚い羊たちの祝宴』(はかないひつじたちのしゅくえん)は、2008年に新潮社から刊行された米澤穂信の短編推理小説。
儚い羊たちの祝宴 | ||
---|---|---|
著者 | 米澤穂信 | |
発行日 | 2008年11月28日 | |
発行元 | 新潮社 | |
ジャンル | ミステリ | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 四六判上製本 | |
ページ数 |
253(単行本) 329(文庫版) | |
コード |
ISBN 978-4103014720(単行本) ISBN 978-4101287829(文庫) | |
|
2007年から2008年に『小説新潮』に掲載された4編と書き下ろしの1編を収録、いずれも「最後の一撃(フィニッシング・ストローク)」に拘った内容となっている。2008年に刊行後、2011年6月に文庫版が発売された。上流階級の関係者が主人公であること以外、各編はそれぞれ独立したストーリーを展開するが、一部の登場人物が「バベルの会」と呼ばれる読書サークルの関係者であるという共通項があり、書き下ろし作「儚い羊たちの晩餐」にて「バベルの会」に纏わる話が描かれる。
元々著者はユーモアタッチの作風を想定して執筆していたが、ブラックユーモアとして笑えるものにならなかったため、滑稽味を通奏低音とし奇妙な味や背徳感を前面に出していくという方向性で描かれた。他にも「そんな理由で殺すなよ」とツッコまれるような奇妙な動機のシリーズで揃え、オチは読めるが皆それを言うのを待っているという落語的なものを念頭に置いていたという[1]。
初出:『小説新潮』2007年6月号
事件の経緯は上紅丹(かみくたん)地方を牛耳る大名家である丹山家の使用人・村里夕日の手記で綴られる。使用人として孤児院から丹山家に引き取られた夕日は、丹山家の娘・吹子の下につき、共に年月を過ごしていた。だが、吹子が大学に進学して「バベルの会」に籍を置き、会の読書会を二日前に控えた7月30日頃、丹山家の不肖の息子・宗太が屋敷を襲撃する事件が発生。夕日と吹子によって宗太は左手を斬りおとされ行方をくらまし、その後宗太は対外的に死亡したとして処理される。しかし翌年、翌々年の7月30日に丹山家の関係者が殺されていく。
初出:『小説新潮』2008年1月号。泡坂妻夫著『煙の殺意』収録の「椛山訪雪図」のオマージュ[1]。
千人原地方に居を構え、紡績から製薬会社への変遷の中で財を成した六綱家前当主・虎一郎の愛人だった亡き母の遺言に従い、六綱家の屋敷に身を寄せた内名あまり。現当主の光次から屋敷の別館、通称北の館に小間使いとして住むように言いつけられたあまりは、別館に住む長男・早太郎の世話及び監視を命じられる。しばらくしてあまりは早太郎からビネガーや画鋲、糸鋸、卵など目的の見えない買い物を頼まれる。早太郎からのお使いをこなしていくあまりは、その過程で北の館が六綱家の「歪み」を隠してきたという謂れ、そんな場所に早太郎が隔離された理由を知っていく。やがて、季節が進むにつれ体調を崩し次第に弱っていく早太郎。そして最後の瞬間、早太郎があまりに頼んだ買い物の真意が明らかとなる。
初出:『小説新潮』2008年2月号
東京・目黒の貿易商、辰野家に仕える屋島守子は辰野家主人の妻の療養のため八垣内に建てられた別荘・飛鶏館の管理を任されていた。飛鶏館に魅了された屋島は努めて管理維持に精を出すが、辰野の妻が病死し用途が無くなった飛鶏館には一人も客は寄っていなかった。ある時、熊の警戒に山を見廻った屋島は崖下に落ちた登山者・越智を救出し、介抱する。意識を取り戻した越智は山岳部の仲間が探しに来てくれると語っていたが、後日、飛鶏館に遭難救助隊が訪れ、飛鶏館を拠点に越智の捜索が行われることに。
初出:『Story Seller』2008年spring(『小説新潮』2008年5月号別冊)
高台寺に屋敷をそびえ立たせる小栗家の長女・純香は、小栗家の絶対権力者である祖母から玉野五十鈴という従者を与えられる。最初は戸惑うものの主従関係ながらも純香と五十鈴は心を許しあい、教養と見識そしてしたたかさを教えてくれる五十鈴の存在は純香にとってかけがえのないものとなった。そして、祖母を言い包め五十鈴と共に大学に進学し、「バベルの会」に入会した純香だったが、伯父が強盗殺人を犯したことにより純香と五十鈴の順風満帆な生活は音を立てて崩れ去っていく。
初出:書き下ろし
一人の女学生が荒れ果てたサンルームで一冊の日記を手に取る。そこには日記の手記者である元「バベルの会」会員・大寺鞠絵による「バベルの会」消滅とそれに至る鞠絵の物語が綴られていた。
父が娘のサークル活動を軽んじて用意しなかった会費の未払いにより鞠絵は「バベルの会」から除名される。会の中に丹山家や六綱家の娘らがいると聞いて態度を一変させた父から、家同士のコネクションの構築のために倍の会費を用意された鞠絵だが、それでも会に戻れることはなかった。ある時、厨娘と呼ばれる料理人・夏が大寺家に雇われることに。しかし夏は料理の腕は一流だったが、材料費が極端に高額だという難点があった。そんなある時、鞠絵は大寺家に隠された秘密を知ってしまう。その後、「バベルの会」を除名された理由を知り、自分には会にいる資格があることを実感する夢想に囚われた鞠絵は、夏に調理してほしい材料として「アミルスタン羊」を所望する。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.