Loading AI tools
ウィキペディアから
侵略犯罪(しんりゃくはんざい、英: Crime of Aggression)は、国際刑事裁判所規程に定められる国際刑事裁判所の管轄犯罪の一つである。2010年6月11日、カンパラで開かれたローマ規程再検討会議において、その定義及び管轄権行使の手続きに関する改正決議(RC/Res.6)が参加国111カ国のコンセンサスにより採択された。但し、管轄権の行使には諸条件があり、規定により30の締約国が改正条項の批准または受諾を行った1年後に行使が可能となり、またその運用についても、締約国の多数により2017年1月1日以降に行われる決定に従うこととなっている。略称はCAG。
国際刑事裁判所規程(以下、規程)における定義は、次の通りである。
規程の適用上、侵略行為の認定(決定)は、国際刑事裁判所又は国際連合安全保障理事会の決定により行うことができるが、国際刑事裁判所は、裁判所以外の機関による「侵略行為」の決定に影響されない。(第15条の2)
規程の適用上、国際刑事裁判所は次の方法で「侵略犯罪」に関する管轄権を行使できる。(第15条の2及び3)
侵略犯罪についての管轄権の行使(国の自発的付託)
侵略犯罪についての管轄権の行使(安全保障理事会の付託)
ローマ規程の適用上、規程の改正には30の締約国による個々の改正条項への批准が必要となる。侵略犯罪については、再検討会議において以下の発効要件が合意された。(第15条の2及び3共通)
44カ国 - 2023年3月8日現在[1]
その他の締約国は、次のとおり。(アルファベット順)
No. | 締約国 | 批准又は加入 | 発効 |
---|---|---|---|
1. | アンドラ | 2013-09-26 | 2014-09-26 |
2. | アルゼンチン | 2017-04-28 | 2018-04-28 |
3. | オーストリア | 2014-07-17 | 2015-07-17 |
4. | ベルギー | 2013-11-26 | 2014-11-26 |
5. | ボリビア多民族国 | 2020-12-10 | 2021-12-10 |
6. | ボツワナ | 2013-06-04 | 2014-06-04 |
7. | チリ | 2016-09-23 | 2017-09-23 |
8. | コスタリカ | 2015-02-05 | 2016-02-05 |
9. | クロアチア | 2013-12-20 | 2014-12-20 |
10. | キプロス | 2013-09-25 | 2014-09-25 |
11. | チェコ | 2015-03-12 | 2016-03-12 |
12. | エクアドル | 2019-09-25 | 2020-09-25 |
13. | エルサルバドル | 2016-03-03 | 2017-03-03 |
14. | エストニア | 2013-03-27 | 2014-03-27 |
15. | フィンランド | 2015-12-30 | 2016-12-30 |
16. | ジョージア | 2014-12-05 | 2015-12-05 |
17. | ドイツ | 2013-06-03 | 2014-06-03 |
18. | ガイアナ | 2018-09-28 | 2019-09-28 |
19. | アイスランド | 2016-06-17 | 2017-06-17 |
20. | アイルランド | 2018-09-27 | 2019-09-27 |
21. | イタリア | 2022-01-26 | 2023-01-26 |
22. | ラトビア | 2014-09-25 | 2015-09-25 |
23. | リヒテンシュタイン | 2012-05-08 | 2013-05-08 |
24. | リトアニア | 2015-12-07 | 2016-12-07 |
25. | ルクセンブルク | 2013-01-15 | 2014-01-15 |
26. | マルタ | 2015-01-30 | 2016-01-30 |
27. | モンゴル | 2021-01-18 | 2022-01-18 |
28. | オランダ | 2016-09-23 | 2017-09-23 |
29. | 北マケドニア | 2016-03-01 | 2017-03-01 |
30. | パナマ | 2017-12-06 | 2018-12-06 |
31. | パラグアイ | 2019-04-05 | 2020-04-05 |
32. | ペルー | 2022-10-14 | 2023-10-14 |
33. | ポーランド | 2014-09-25 | 2015-09-25 |
34. | ポルトガル | 2017-04-11 | 2018-04-11 |
35. | サモア | 2012-09-25 | 2013-09-25 |
36. | サンマリノ | 2014-11-14 | 2015-11-14 |
37. | スロバキア | 2014-04-28 | 2015-04-28 |
38. | スロベニア | 2013-09-25 | 2014-09-25 |
39. | スペイン | 2014-09-25 | 2015-09-25 |
40. | パレスチナ | 2016-06-26 | 2017-06-26 |
41. | スウェーデン | 2022-01-26 | 2023-01-26 |
42. | スイス | 2015-09-10 | 2016-09-10 |
43. | トリニダード・トバゴ | 2012-11-13 | 2013-11-13 |
44. | ウルグアイ | 2013-09-26 | 2014-09-26 |
管轄権の行使につき13条で規定している。
規程再検討会議の議長国であり「侵略犯罪に関する国際刑事裁判所ローマ規程の改正」の初の締約国となったリヒテンシュタインは、改正の批准に際し次の声明を発表した。
再検討会議において、締約国らは、「できる限り早期に、侵略犯罪に関する裁判所の管轄権を行使すること」への決意を表明した。2016年末までに発効に必要な30の締約国による批准を確保し、裁判所が管轄権を行使するために、我が国は侵略予防に関する地球規模問題研究所(仮訳)(Global Institute for the Prevention of Aggression)と協働して改正条項への批准を積極的に推進する。このプロジェクトには、ワークショップの開催やリソース資料の収集、並びに侵略犯罪に関するカンパラ改正条項の批准及び履行状況を示す専用サイトの将来的構築等が含まれる予定である。 — 国際連合リヒテンシュタイン公国政府代表部[5]
再検討会議にオブザーバーとして初めて公式に参加したのち、2010年6月15日に特別ブリーフィングを実施した米国は、同国が考える会議での成果を発表した。
合衆国は、侵略の定義には欠陥があると考えていたが、会議ではいくつかの重要な保護措置がとられ、定義をより精緻なものとし、最も非道な犯罪が行われた事態についてのみ適用されるべきであるという理解に達することができたことを評価する。また我が国は、安全保障理事会に侵略を認定する役割がある点について、最終的な決議にはその認識が十分に反映されなかったと見なしているが、安全保障理事会の関与なしに、もしくは同意に基づくスクリーニングを行って管轄権を行使するという提案について締約国会議がこれを拒否したことは評価している。我が国は将来、犯罪の定義がより改善されることを望み、またそれに向けて継続的に取り組む所存である。 — ハロルド・ホンジュ・コウ国務省法律顧問[6]
日本政府は2010年の再検討会議において、次の3つの理由から、「規程改正の採択のコンセンサスには参加しないが、それをブロックすることはしない」対応をとった[7]。
政府代表団団長の小松一郎政府代表(駐スイス大使)は、規定改正に関する投票を行うその前後に『投票理由説明』を発表した。
極めて不承ながら、各国代表団が本改正案を現行のまま支持するというのであれば、日本政府はコンセンサスを妨げることはしない。 — 小松一郎政府特別代表[8]
日本政府代表団の団長として、この岐路に置いて申し述べておかなければならないことがある。それは今後の我が国のICCへの協力は、我が国が疑義を唱える改正手続に関する締約国会議の皆様による問題の解決にかかっているということである。 — 小松一郎政府特別代表[9]
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.