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世界エイズ・結核・マラリア対策基金(せかいエイズ・けっかく・マラリアたいさくききん、英: The Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria)又は単にグローバルファンド(英: The Global Fund)は、「国連持続可能な開発目標(SDGs)」の一つでもある世界三大感染症 HIV/エイズ 、結核、マラリアの流行を終わらせるために、さらなる資金を動員し、活用し、投資することを目的として設立された、国際的な資金調達およびパートナーシップのための組織である[1]。スイスのジュネーブに事務局を置き[2]、2002年1月に活動を開始した。マイクロソフト創設者ビル・ゲイツが創立したビル&メリンダ・ゲイツ財団は、初期に投資した最初の民間財団の1つ[3]。Appleやギャップなどが参画するProduct Redの収益はグローバルファンドのエイズ対策に寄付されている。
設立 | 2002年1月28日 | (最初の理事会開催日)
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目的 | 世界三大感染症であるエイズ・結核・マラリア対策を支援する |
所在地 | |
重要人物 | Peter Sands, (Executive Director, March 2018 – present) |
ウェブサイト | https://www.theglobalfund.org/ |
グローバルファンドは、エイズ・結核・マラリアの予防、治療、ケアプログラムの世界最大の資金提供者で[4]、2019年6月までに416億米ドル以上を拠出した[5]。2018年には、マラリア予防に1億3100万の殺虫剤処理ネットの配布、530万人に抗結核治療を提供、エイズの抗レトロウイルス療法(ARV)で1890万人を支援[6]。2020年9月発行の活動報告書によると、設立以来3800万人を救っている[7]。
グローバルファンドは、実施機関というよりは資金調達メカニズムで、実際のプログラムは保健省やNGOなどの国内パートナーによって実施されるのが特徴。事務所はジュネーブのみでそこのスタッフが各国での実施を支援している。各国ではグローバルファンドが定める要件に基づく国別調整メカニズム(Country Coordinating Mechanism, CCM)に政府、NGO、宗教組織、民間セクター、および三疾患の当事者の代表者が集まり、監督している。このシステムにより、グローバルファンドの事務局は他の国際的な官僚機構よりも小さくなっている。
20世紀の終わりに、世界で最も致命的な感染症と闘うための協調的な取り組みを改善するという国際的な政治的意志が実現し始めた。さまざまな多国間フォーラムを通じて、これらの疾患と闘うための新しい国際金融手段の創設に関するコンセンサスが生まれた。これに関連して、世界保健機関(WHO)は、1999年12月に「貧困に由来する病気に対する大規模な闘い」を呼びかけた。当初は、「マラリア、結核、安全でない妊娠、エイズ、下痢性疾患、急性呼吸器感染症、はしか」への取り組みが提案されていた[8]。このリストは着実に絞り込まれ、グローバルファンドが今日闘っている3つの感染症、HIV/エイズ、結核、マラリアのみが含まれるようになった[9][10][11]。
日本は、1994年に「人口・エイズに関する地球的規模問題イニシアティブ(GII)」を発表し、この分野で7年間で50億ドルの貢献をして、世界の感染症対策において主導的役割を果たす国の一つとなった。さらに、2000年にホスト国となったG8九州・沖縄サミットでも感染症の重要性を取り上げ、これがジェノバサミットを経てグローバルファンドの設立に至ったとされている。また、同サミットではGIIの後継となる「沖縄感染症対策イニシアティブ(IDI)」を発表、取組みをさらに強化した[12]。
2001年4月、ナイジェリアのアブジャで開催されたアフリカ首脳会談で当時の国連事務総長コフィー・アナン氏が世界の指導者として初めて、この新しい資金調達メカニズムについての明示的な公の呼びかけを行い、「HIV/エイズやその他の感染症と闘うグローバルファンドの創設」を提案した[13]。2001年のフィラデルフィア・リバティ・メダルの受賞者に指名されたばかりのアナンは、グローバルファンドの「ウォーチェスト」として、この受賞賞金の10万米ドルを寄付すると発表した[14]。2001年6月、国連総会は、HIV/エイズと闘うためのグローバルな基金創設を承認した[15]。
G8は、2001年7月にイタリアのジェノバサミットでグローバルファンドの創設の呼びかけを正式に承認したが、コフィー・アナンが必要だと主張した年間70億ドルから100億ドルを大幅に下回っていた[16]。G8の最終コミュニケによれば、「昨年の九州・沖縄サミットでは、感染症との闘いにおいて飛躍的な進歩を遂げ、病気と貧困の間の悪循環を断ち切ることを約束した。そのコミットメントを満たし、国連総会の呼びかけに対応するために、私たちは国連事務総長とともに、HIV/エイズ、マラリア、結核と闘うための新しいグローバルファンドを立ち上げた。当基金は年内に運用を開始する予定である。私たちは13億ドルをコミットした。グローバルファンドは官民パートナーシップとして、他の国、民間企業、財団、学術機関に、出資、物品寄付、専門知識による貢献などを呼びかける。」としている[17]。
グローバルファンドの最初の18名からなる政策決定委員会は、2002年1月に最初の会議を開催し、最初のプロポーザル募集を行った[18][19]。最初の事務局は2002年1月に設立され、Paul Ehmerがチームリーダーを務め、すぐにスウェーデンのAnders Nordstromが組織の暫定事務局長になった。グローバルファンド事務局が活動を開始するまでに、組織は19億米ドルの誓約を受け取っていた。
2002年3月、国際的な公衆衛生専門家の委員会が指名され、同月にプロジェクトプロポーザルの検討を開始した。 2002年4月、グローバルファンドは31か国の3つの感染症と闘うために、最初の助成金(3億7800万米ドル相当)を提供した[20]。
グローバルファンドが2002年に創設されて以来、公的部門の拠出は、全調達額の95パーセントを占めている。残りの5パーセントは民間企業やプロダクトREDのような他の資金調達の取り組みから来ている[21]。世界基金は、2002年から2019年7月までに、60を超えるドナー国が合計512億米ドルの拠出を誓約し、458億米ドルを支払ったと述べている[22]。2001年から2018年における、最大の出資者は米国であり、フランス、英国、ドイツ、日本がそれに続いている[23]。2008年から2010年にかけて国民総所得(GNI)に対して最大の出資を行っているドナー国は、スウェーデン、ノルウェー、フランス、英国、オランダ、スペインであった[要出典]。
グローバルファンドは通常、3年に一度の「増資」と呼ばれる資金調達期間中に資金を調達して使用している。最初の増資は2005年に、2回目は2007年に、3回目は2010年に、4回目は2013年に、5回目は2016年に、6回目は2019年に開催された[24]。
2010年10月の第3回増資会合の前に、資金不足が迫っていることについて警告が発せられた。資金不足になれば、ARVを受けている人びとが治療が受けられなくなり、薬への耐性ができる可能性も高まった。当時のUNAIDS事務局長ミシェル・シディベは、資金不足となるというシナリオを「HIVの悪夢」と呼んだ[25]。グローバルファンドは、3回目の増資(2011年から2013年の支援を対象とした資金調達)には少なくとも200億ドル、「既存のプログラムへの資金提供の継続を可能にする」ためだけに130億ドルが必要であると述べた[26]。最終的に、第3回増資会合では118億米ドルの拠出が誓約され、最大の出資者が米国、フランス、ドイツ、日本がそれに続いた。グローバルファンドは、12億米ドルの資金不足は、「今後3年間で3つの疾患を克服するための努力を遅らせる、困難な決定をせざるを得なくなる」と述べた。
2011年11月、グローバルファンドの理事会は2012年の新しい助成金を全てキャンセルした。既存の助成金をサポートするのに十分な資金しかなかったからだった[27]。しかし、次の2012年5月の理事会では、プログラムへの投資のために2012年から2014年の期間にさらに16億米ドルが利用可能になると発表した[28]。
2013年12月、ワシントンD.C.で第4回増資会合が開催され、2014年から2016年のプログラムに対し、25か国の政府、欧州委員会、民間財団、民間企業、宗教関連団体から120億米ドルの拠出が誓約された[29]。これは、3つの病気との闘いに対してこれまでに約束された額として最大だった[30]。
第5回増資会合は、2016年9月にカナダのモントリオールで、カナダのジャスティン・トルドー首相が主催した。ドナーは、2017年から2019年の期間に129億米ドル(2016年為替レート)を誓約した[31]。
フランスは2019年にリヨンで6回目の増資会合を主催し、2020年から2022年にかけて140億米ドルを調達した[32]。
リチャード・フィーチャムは、2002年4月にグローバルファンドの最初の事務局長に任命され[33]、グローバルファンドには開始するのに「十分な」資金があると述べて、早々に活動家からの批判に直面した[34]。フィーチャムは2002年7月から2007年3月まで事務局長を務めた。
その後、ミッシェル・カザツキン博士がグローバルファンドの設計者であるデビッド・ナバロを押さえて事務局長に選ばれた。ナバロは「3人の候補者の中で最強と見なされていた。情報筋によると、選考委員会は3人の候補者の資格を評価し、「ナバロ1位、カザツキン2位、(アレックス)コティーニョ3位」とランク付けしていた。[35]。
2011年9月、エイズヘルスケア財団は「改革を本格的に始める」ために、「無駄、詐欺、汚職」に関する前例のない報告を受けて、カザツキンの辞任を求めた[36]。2011年11月、グローバルファンド理事会がゼネラルマネージャーを任命することを決定したことを受け、2012年1月にカザツキンは辞任を宣言した[37]。
カザツキンの辞任に続き、グローバルファンドは、ソブリン銀行(Sovereign Bank)の前会長兼最高経営責任者であるガブリエル・ジャラミロを新たに創設されたゼネラルマネージャーの職に任命したを発表した。1年前に引退したジャラミロは、その後、国連事務総長のマラリア特使室の特別顧問を務め、グローバルファンドの受託者管理及びメカニズムを監視する、ハイレベルの独立委員会のメンバーだった。ジャラミロは、前年のグローバルファンドに対する批判に応えて、グローバルファンドのスタッフを再編成し、削減した[38]。
マーク・R・ダイブル博士が、2012年11月に事務局長に任命された[39]。医師としてエイズ患者の診療に当たったのち、米国ブッシュ政権のもとでグローバルエイズコーディネーターを務めた人物で、2006年から2009年まで大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)の実施を主導した。オバマ政権への移行まで同職を務め、グローバルファンドに移った。2017年までグローバルファンド事務局長としての任期を務め、現在はジョージタウン大学で教鞭を執る。
2017年にダイブルの後継者を見つけるための指名プロセスは難航した[40]。グローバルファンド理事会は、指名プロセスが再開される間、グローバルファンド事務局のマライケ・ヴェインロクス(Marijke Wijnroks)を事務局長代行に任命した[41]。
グローバルファンド理事会は、2017年に銀行家で英国人のピーター・サンズを事務局長に選出し[42]、2018年からサンズが就任している。
グローバルファンドは、スイスの法律に基づいて独立した非営利財団として設立され、2002年1月に世界保健機関がホスト機関となった[43]。2009年1月、この組織は行政自治組織になり、世界保健機関との行政サービス契約を終了した[44]。
グローバルファンドの当初の目的は、成果に基づいて各国に資金を提供することだったが、2009年のグローバルファンドの5年間の評価では、常設の技術スタッフがいなければ、グローバルファンドはプロジェクトの実際の結果を確認することができないと結論付けた[要出典]。そのため、支出または投入物の購入を業績と見なす傾向があった[要出典]。また、組織が開設された直後に、純粋な資金調達メカニズムがそれ自体では機能しないことが明らかになり、アプリケーションの設計とドラフトの作成、実施のサポートを行うようになった[要出典]。特に、国連開発計画は、多くの国でグローバルファンドが資金提供するプロジェクトを支援する責任を負っている[要出典]。その結果、グローバルファンドは、個別のアプローチとしてではなく、既存のグローバルヘルスアーキテクチャに対する財政的補足をしているというのが、最も正確な説明とされている。
スイスのジュネーブにあるグローバルファンドの事務局は、約700人のスタッフを雇用している[45]。他の国に拠点を置くオフィスもスタッフもおらず、国際機関としては非常に小さい事務局と言える[46]。
2013年、グローバルファンドは各国に資金を分配する新しい方法を採用した[47]。この資金調達モデルでは、支援に適格とされた国に3年間で活用できる資金を割り当てる[48]。3年ごとの「増資」資金調達を通じて政府や他のドナーから誓約された金額を元に支援を行うため、全支援適格国への支援総額もこの誓約された総額によって変わってくる[49]。
支援対象となる各国は「国別調整メカニズム」委員会(CCM)を通じて、資金の活用方法を概説した申請書を提出する[50]。この中でCCMは、それぞれの国で資金を受けてプログラムを実施する主体となる「主要な受領者」(primary recipient)と呼ばれる機関や団体を指名する[51]。この申請書を元に、グローバルファンド内の独立した「テクニカルレビューパネル」が各国への支援金額や内容について審査を行う[52]。申請が承認されると、世界基金は合意された指標と実際の費用に向けた成果に基づいて主要な受領者に資金を提供する[53]。成果と費用については、ほとんどの国で国際的な会計監査会社である「ローカルファンドエージェント」によって定期的に見直されている[54]。
グローバルファンドによるエイズ・結核・マラリア対策を推し進めることを目指す世界各地のNGOが集まり、政策提言に関する活動を行う「Global Fund Advocates Network(通称・GFAN)」が存在する。
また世界各地域に、グローバルファンドから独立した非営利の支援組織が存在し、「フレンズ・グループ」と総称されている。日本では公益財団法人日本国際交流センターがグローバルファンド日本委員会(Friends of the Global Fund, Japan)を組織しており、日本語でのグローバルファンドや関連する情報を発信している。他に米国、欧州、アフリカ、太平洋州などに同様の組織がある。
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