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『レモン月夜の宇宙船』(レモンつきよのうちゅうせん)は、野田昌宏による短編SF小説。『S-Fマガジン』1968年9月臨時増刊号に掲載された。野田の初の小説作品であり、長編スペースオペラ『銀河乞食軍団』シリーズと並んで彼の代表作とされている。
アポロ計画が進行し、人類の月面着陸が現実に近づいてきていた頃。ある夜、SFマニアの“僕”の家に、大学時代の後輩である〈佐渡守〉から「あわせたい人がいる」という電話がかかって来た。彼の話によると、山中で車がパンクした際に偶然大豪邸に迷い込み、その家の持ち主である老SFマニアの膨大なコレクションを見せられたという。その際に〈佐渡守〉が老人に“僕”のことを話したところ、“僕”に屋敷に来てもらいたがったと言うのだ。
翌日、半信半疑でその老人、加寿羅勘三郎の屋敷に足を運んだ“僕”と〈佐渡守〉は、加寿羅老人のコレクションを披露される。彼の話に現れる経歴や交友関係を聞くうちに、「この老人はただ者ではない」という思いを強めていく“僕”。そして一通り話を終えた加寿羅老人は、“僕”にある話を切り出した。「私はいよいよ今晩、月世界へ出発しようと思います」と。
加寿羅老人が個人で作り上げた単段式の有人月ロケット。加寿羅老人はこのロケットによって、アメリカのアポロ計画やソ連のソユーズL3計画を出し抜き、人類初の月面着陸を行うことを目論んでいる。加寿羅老人曰く「サイエンス・ロォマンス(SFに対する初期の呼称)の伝統に従って作ったロケット」であり、建物に似せて作られている。その形状はアインシュタイン塔に似ており、色は銀一色。乗員は6名だが、多少の余裕はある模様。
推進エンジンには、加寿羅老人がドルンベルガーから直接教わったというV2の技術が使用されている。この技術に関する資料は終戦前にSSによって焼却処分されており、フォン・ブラウンですらその内容は知らないという。これによるものかは不明だが、発射の際には通常のロケットの様に徐々に加速していくのではなく、物凄い速度で一気に加速上昇を行っていた。
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