その価格は1934年の発売直後ドイツ本国で75マルクであった。同時代の上級35 mmフィルムカメラは、1935年のライカIIIa(エルマー50 mm F3.5付き)が307マルク、1938年のコンタックスII型(テッサー50 mm F3.5付き)が360マルクであった[4]。また日本では1935年時点で定価195円[3]であった。1937年時点でも日本でのレチナは定価195円-240円であったが、ライカはレンズのグレードにより580円から950円、コンタックスはその上をゆく970円-1,600円という超高額品で共に「家が建つほど高い」と言われていた。
#117(1934年7月発売[1]) - 最初の製品で、「オリジナルレチナ」とも呼ばれる[1]。巻き上げノブとファインダーの間に巻き止め解除用ノブがあるのが特徴で、撮影後このノブを1/4回転させることで巻き止め機構が解除される[1]。巻き戻し切り替えレバーは扁平で、巻き上げノブの上にある[7]。フィルムカウンターがファインダーと巻き戻しノブとの間にある。メーカー資料によればシャッターは最高速1/300秒のコンパー、レンズはシュナイダー・クロイツナッハ製クセナー50 mm F3.5のみとされているが、実際には最高速1/500秒のコンパーラピッド、コダック製アナスチグマートエクター50 mm F3.5が装着された個体も存在する[7]。仕上げは黒塗り、ニッケルメッキのみ[7]。
#119(1936年4月発売[7]) - 巻き上げノブとファインダーの間の軍艦部が高くなり、フィルムカウンターがそちらに移動し、巻き戻しノブとファインダーの間の軍艦部は低く平坦になった[7]。巻き上げノブ、巻き戻しノブが小径かつ背高になって扱いやすくなった[7]。レンズがクセナー50 mm F3.5またはコダック製エクター50 mm F3.5[7]。仕上げは黒塗り、ニッケルメッキのみ[7]。
#126(1936年3月発売[7]) - アクセサリーシューが装着された[7]。アクセサリーシューを持たない個体も存在するが、取り付け位置にネジ頭が2本あることで識別できる[7]。外観に初めてクローム仕上げが採用されたが、黒塗りの個体も存在する[7]。レンズはクセナー50 mm F3.5またはエクター50 mm F3.5に加え、カール・ツァイス製テッサー50 mm F3.5, アルコー50 mm F3.5, ローデンストック製イザール50 mm F3.5, アンジェニュー製のアンジェニュー50 mm F3.5が供給された[7]。シャッターはコンパーラピッド[7]。
#141(1937年10月発売[7]) - メーカー資料によればレンズはシュナイダー・クロイツナッハ製クセナー50 mm F3.5またはエクター50 mm F3.5とされているが、テッサー50 mm F3.5が装着された個体も存在する[7]。シャッターはコンパーまたはコンパーラピッド[7]。仕上げはクロームメッキのみ[7]。
#143(1938年1月発売[7]) - #141の黒塗り仕上げ版[7]。クセナー50 mm F3.5, コンパーの組み合わせのみでアクセサリーシューなし[7]。
#148(1939年3月発売[7]) - 二重露出防止装置が装備され、それに伴い巻き止め解除レバーがなくなった[7]。巻き上げノブとファインダーの間の軍艦部が約2 mm高くなり、巻き上げノブが#126と同じ薄さになっている[7]。レンズはクセナー50 mm F3.5またはエクター50 mm F3.5, シャッターはコンパーまたはコンパーラピッド[8]。
#149(1939年3月発売[8]) - #148とほぼ同様で、ボディー周縁のアルミニウム磨き出し部分が黒色塗装されている[8]。レンズはクセナー50 mm F3.5, シャッターはコンパーのみ[8]。
#010(1946年5月発売[8]) - 第二次世界大戦後#148を再生産したもの[8]。レンズはクセナー50 mm F3.5, エクター50 mm F3.5, イザール50 mm F3.5など極めて多種雑多で、正確なところが分かっていない[8]。部品は戦前に生産されたストックを使ったり、資源がない中で新造したりしており低品質の個体も散見される[8]。
#015(1951年1月発売) - レチナI型シリーズでは初めてネックストラップ金具がついた。レンズはシュナイダー・クロイツナッハ製クセナー50 mm F2.8, クセナー50 mm F3.5, エクター50 mm F3.5, ローデンストック製ヘリゴン50 mm F3.5, シャッターは当初X接点つきコンパーラピッド、7月からMX接点を持つシンクロコンパーを装備した[8]。
レチナIB(1958年発売[6]) - #019にブライトフレームファインダーを組み込んだもの。レンズはシュナイダー・クロイツナッハ製クセナー50 mm F2.8のみ。
レチナIIシリーズ
連動距離計が組み込まれている。レチナII、レチナIIaは異なる複数世代で同じ名称が利用されている。
レチナII/レチナIIa
#122(1936年10月発売) - 巻き上げは90度折れ曲がった特殊な形のレバー式で、1ストロークでは1コマ巻き上がらず小刻み巻き上げが必要である。レンズはシュナイダー・クロイツナッハ製クセナー50 mm F2.8, クセノン50 mm F2, エクター50 mm F3.5. シャッタ−はコンパーラピッドだが二重露出防止装置が装備されたためT露出はできない。試作的な要素が強いのか製造台数は極めて少なくレチナコレクターにとって最も入手に苦労するタイプ。名称は「レチナII」。
#142(1937年発売) - 巻き上げが通常のノブ巻き上げとなった。レンズはメーカー資料ではシュナイダー・クロイツナッハ製クセナー50 mm F2.8, クセノン50 mm F2, エクター50 mm F3.5だが、実際にはクセノン50 mm F2.5, エクター47 mm F2もあるようだという。
#150(1939年5月発売) - 連動距離計がファインダーと一体となって名称が「レチナIIa」となった。ドイツの開戦と戦時体制移行により1941年に生産停止が命じられ、製造台数は5107台と少ない。レンズはシュナイダー・クロイツナッハ製クセナー50 mm F2.8, クセノン50 mm F2, エクター50 mm F3.5.
#011(1946年4月発売) - #150とほとんど同機構だが軍艦部がワンピース構造となり、ボディーレリーズの傍らにケーブルレリーズ用の穴が設置され、ネックストラップ金具が廃止されるなど細かい違いがある。また名称が「レチナII」に戻された。戦後すぐの混乱期で使用レンズは雑多を極め、クセノン50 mm F2, ヘリゴン50 mm F2はコートなしとありが存在し、エクター47 mm F2も存在する。
#014(1949年6月発売) - レンズが大幅に整理され、クセノン50 mm F2, ヘリゴン50 mm F2のみとなった。シャッターはX接点付きコンパーラピッド。
#016(1951年1月発売) - フィルムがいわゆる「レチナ式」レバー巻き上げとなった。ネックストラップ金具がついた。名称が「レチナIIa」になった。レンズは前期型クセノン50 mm F2のみ、7月以降生産された後期型はヘリゴン50 mm F2つきが追加された。シャッターは前期型X接点付きコンパーラピッド、後期型MX接点付きシンクロコンパー。
レチナIIc(1954年発売[9]) - 蛇腹は隠され、近代的な丸みを帯びたボディーデザインとなった。底蓋にあるレバーによりフィルムを巻き上げる。前玉交換によるレンズ交換が可能だが同一メーカーの交換レンズを用意する必要がある[9]。レンズは4群6枚レチナクセノンC50 mm F2.8またはヘリゴンC50 mm F2.8. #020.
レチナIIC(1958年発売[6]) - ファインダーがブライトフレーム式になり窓が大型化したため「大窓」と俗称される。レンズはシュナイダー・クロイツナッハ製クセノン50 mm F2またはローデンストック製ヘリゴン50 mm F2固定。前玉交換により35 mm F5.6, 80 mm F4としても使用可能だが交換レンズに距離計は連動せず、読み替える必要があり実用性は低い。#029.
ファインダーに内蔵された連動距離計に加え、セレン光電池式露出計を装備している。当初より近代的な丸みを帯びたボディーデザインである。底蓋にあるレバーによりフィルムを巻き上げる。レンズはシュナイダー・クロイツナッハ製4群6枚クセノン50 mm F2のほかローデンストック製ヘリゴン50 mm F2がある[9]。
レチナIIIC - ファインダーがブライトフレーム式になり窓が大型化したため「大窓」と俗称される[6]。交換レンズ用の枠も入り、パララックスは自動補正される[6]。前玉交換により35 mm F5.6, 80 mm F4としても使用可能だが交換レンズに距離計は連動せず、読み替える必要があり実用性は低い。セレン光電池は当初より#021/1に採用された高感度型1レンジ。
レチナレフレックス(Retina Reflex, 1957年発売) - レンズはレチナクセノンC50 mm F2またはレチナヘリゴンC50 mm F2. レチナIIc/レチナIIC/レチナIIIc/レチナIIICと交換レンズの互換性があり、前玉交換式でレチナクセノンC50 mm F2はレチナカルタークセノンC35 mm F4, レチナクセノンC35 mm F5.6,ロンガークセノンC80 mm F4としても使用可能、同様にレチナヘリゴンC50 mm F2はレチナヘリゴンC35 mm F4, レチナヘリゴンC5 mm F5.6, ヘリゴンC80 mm F4としても使用可能[12]、#025.