横メルカトル図法では通常のメルカトル図法で歪みの大きくなる高緯度地方を比較的正確に表せるが、逆に基準経度から東西に離れた地点での歪みが大きくなる。そこで南緯80度から北緯84度までの間を西経180度から東向きに6度ずつ1から60のゾーンに分割して、各ゾーンの範囲をそれぞれの中央経度を基準子午線とした横メルカトル図法で投影し、60枚の地図を使って両極を除く全地球を描く(正確には地球が扁球により近いことを考慮したガウス・クリューゲル図法を用い、両極部分はユニバーサル極心平射図法を用いる)。
ただし、基準子午線上の縮尺を 1 とした場合、他の部分の局所的縮尺が 1 よりも大きくなり(赤道上で基準経度から3度離れると1.00137)、全体として見ても縮尺が 1 よりも大きくなる(赤道上の基準経度-3度から+3度まで、6度の長さは1.00046倍になる)。これを調整するため、中央子午線上での縮尺係数を0.9996にして、投影範囲全体の平面距離について、その相対誤差の絶対値を4/10,000以内に収める。
このように分割して地球全体を描けば、それぞれのゾーンの地図は基準子午線から3度以内に収まっており、比較的小さな歪みで済むので、中縮尺でも実用上大きな問題は起きない。
実際には適当な縮尺にして四角い地図に切り分けるが、同じゾーン内でつなぎ合わせれば一枚の平面地図として扱うことができる。ゾーンが異なる場合は平面としてつなぎ合わせることができず、地球の丸みを復元することになる。
なお、「ユニバーサル横メルカトル図法」と呼ぶ場合、6度ごとの基準子午線の取り方と 0.9996 の係数で標準化されたものを指す。
座標換算の簡略式
以下に掲げる座標換算式はドイツの数学者・測地学者であるヨハン・ハインリヒ・ルイ・クリューゲル(ドイツ語版)により初めて導出され1912年に発表されたもの[1]が元となっており、展開式の初めの数項しか用いていない簡潔さでありながらも中央子午線から約3,000キロメートルの範囲内でミリメートル程度の精度を有している[2]。日本語による導出の詳細な解説も与えられている[3]。
地球楕円体の長半径を 、扁平率を とし、中央子午線の経度を とするとき、地理緯度 、経度 の点からUTM座標並びに縮尺係数 及び子午線収差(ドイツ語版)角 を計算する。便宜上北半球においては南北座標に km を、南半球においては km をオフセット値として加える。併せて東西座標には km をオフセット値として加え、 とする。以下では、距離の単位は km とする。
換算式の表式に先立ち、幾つかの初期値を計算しておく:
経緯度 (φ, λ) から UTM 座標 (E, N) への換算
まず、中間変数を以下のとおり定める:
その上で、換算式は以下のとおりとなる:
UTM 座標 (E, N, Zone, Hemi) から経緯度 (φ, λ) への換算
北半球に対しては Hemi=+1, 南半球に対しては Hemi=-1 とおく。
まず、中間変数を以下のとおり定める:
その上で、換算式は以下のとおりとなる: