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メルセデス・ベンツ・500E(Mercedes Benz 500E )は、1991年から1995年にかけてメルセデス・ベンツが製造・販売したミディアムクラスのセダン型乗用車。W124(Eクラス)のスポーティバージョンにあたる。
いわゆる前期型を500E、後期型をE500とメーカーの呼称に習って呼ぶが、前後期を問わず全モデルを指して500Eと呼ばれることも多い。
アメリカでR129型の500SLが発売され人気を博すと、500SLの4ドア版の要望が出たことから、ミディアムクラスの車種に500SLのエンジンを搭載することになった。その開発を当時経営不振だったポルシェに依頼したことから、ポルシェとの関係が非常に深いモデルとされている。チューニングはポルシェのバイザッハ研究所が担当した。パフォーマンスは最高ながら非常な高コストになってしまったため、ダイムラー側では市販するか否かかなり悩んだが、結局少しだけパーツをコストダウンした[1]。テストコースでのハンドリングの煮詰めは当時ザウバーに在籍していたジャン=ルイ・シュレッサーが担当した。
製造工程の一部も、貨車でメルセデスのジンデルフィンゲン工場と往復させてポルシェのツッフェンハウゼン工場が担当していた。実際にはジンデルフィンゲンで製造されたボディパーツをツッフェンハウゼンに輸送して組み立てが行われ、完成したシャシーをジンデルフィンゲンに戻して塗装し、ツッフェンハウゼンに再度輸送してエンジン等の取り付けを行う、というように、両工場間を行ったり来たりしていた[2]。
1990年のモンディアル・ド・ロトモビルで発表され、1991年に発売された。モデルイヤーは1992年から1995年。日本への正規輸入は1994年で終了した。
ドイツを代表する自動車メーカーのブランド性の高さから日本では「ポルシェが造ったベンツ」とコラボレーション的に呼ばれ、高い評価を得ている。北米市場での販売不振のために経営が悪化したポルシェが、遊休ラインで生産の一部をメルセデスから請け負っており、一部では「ポルシェを救ったモデル」とも呼ばれる[2]。ただし、経営改善戦略として発表された水冷ミッドシップオープンカーのボクスターのヒットにより業績が回復して以降は、メルセデス・ベンツとポルシェの間では同様の開発や製造委託は行われていない。
500Eの総生産台数は10,479台と多くないが、上記のように日本での人気は高い。日本へは1,184台が正規輸入され、さらにそれ以上に並行輸入された車が存在し、生産数の約3分の1が日本という状況になっている。一方でアメリカでの販売台数は1,528台に留まり、ドイツ本国でもそれほど人気は出なかった。
DOHC32バルブ4,973cc、最高出力330PS/5,700rpm、最大トルク50kgm/3,900rpmの自然吸気V型8気筒のM119型エンジンを搭載した。後期モデルは排気ガス規制を受けて325PS、49kgmに低下している。
既存のボディにV8のM119エンジンを搭載すべくフロアトンネル及びバルクヘッド部分の拡大を行うとともに、すでに500SL(R129)他に搭載されていた部品を流用した。例えば、前後のサスペンションアームやサブフレーム、トランスミッション、ステアリングギアボックス、ドライブトレインの多くが500SLから、またリアのセルフレベリングサスペンションは、Tモデル(ワゴン)から流用されている。後部座席はディファレンシャルのサイズの都合で中央の座席を撤去したため2名乗車となり、乗車定員は4名である[2]。
同様に、ブレーキもSLから流用した直径300mmのベンチレーテッドディスクと、190E2.5-16より流用したブレンボ製4ポットアルミキャリパーを前輪に採用し、 後輪には同275mmに2ポットスチールキャリパーを備えた。(後期モデルは制動性能を高めるために600SLに用いられていた直径320mm、300mmのディスクブレーキを装備し、キャリパーも全て鋳鉄製となった。なお、前輪ブレーキキャリパーの製造元は、高速での制動時に振動が発生するとの理由でブレンボ製からATE製に変更された)また、全車にABSやASRを標準装備し、安全面での装備をより充実させている。
ミディアムクラスにSクラスのV8エンジンを搭載したモンスターセダンは、その地味な外観と卓越した性能から「羊の皮を被った狼」とプレスリリース資料で呼ばれた。0-100km/hは6.5秒、0-400mは14.8秒である。
最高速度は6,250rpmでレブリミットを迎えるため約250km/hであるが、リミッターを外しても260km/h程度である。
ATはメルセデス・ベンツ社内製の機械式4速(722.3)が搭載され、通常時は2速発進となる。
特徴的な外観は、16インチ8Jの5穴専用ホイールの装着と前後トレッドを拡大しフェンダーもワイド化したことや、専用の前後バンパー、フォグライト等によって表象され、他のモデルと区別される。
その生立ちや性能、希少性から現在でも世界中で高い人気を有している。ダイムラーでは500Eを「クラシック」に分類している。
AMGはメルセデス・ベンツから直接ホワイトボディ等の供給を受けていたため、メルセデス・ベンツのエンブレムを装着した純然たる500Eの新車が存在する一方で、他のチューナーは直接の車両供給を受けていなかった。そのためドイツ国内のディーラー経由や、ドイツ国内外で一旦登録された車輌、または一定期間使用された車輌のオーバーホールを兼ねて、エンジンやサスペンション、内外装等をオーナーの要望にあわせて変更することも珍しくなく、何をもって「正規モデル」とするかについては議論がある。特に日本では、チューナーブランドのエアロパーツやホイールを装着したアフターマーケット車輌が多く存在しており、またコピー商品も多かったため、これらの議論を複雑化させている。
なお、AMG以外の多くのチューナー製車両は知的財産権上の問題から、メルセデス・ベンツのトレードマークであるスリーポインテッド・スターを取り外し、自社のエンブレムを装着している(ロリンザー等一部例外も存在する)。
メルセデス・ベンツとの協定で「上級モデルの最大排気量(例えばEクラスでは、Sクラスの6,000cc)を超えない」というルールがあったため、500EのAMGは、排気量は最大で6,000ccとされているが、一部のオーダー車輌に少数6,200ccモデルも存在する。
カールソン、ロリンザー、ハグマンからも500E/E500の排気量を独自に約6,000cc、6,200cc、6,500ccに拡大したモデルが販売されていた。これらチューナーモデルは500Eと比べて更に優れた動力性能を有することと、その「ブランド内ブランド」のため現在でも人気が非常に高く、希少価値も相まって高価格で取引されており、500Eと区別するために「6リッター」と呼称されている。
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