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『ムースピリ』(ムスピリ、ムスピッリーとも、Muspilli)は、古高ドイツ語による叙事詩としてはわずかに2つ残存している作品のうちの1つである。
もう1つの詩が『ヒルデブラントの歌』である。
『ムースピリ』は870年頃に成立したと考えられているが、現存するものは詩の冒頭と結末が欠落している。
テキストの断片のほとんどは、ルートヴィヒ2世の蔵書の写本の余白や空いたページに記録されている。ラインフランク語が混入し、不慣れな筆跡であることから、ルートヴィヒ2世本人が書き込んだものと考えられる[1]。写本は現在、ドイツのバイエルン州立図書館に保管されている(写本番号: Clm. 14098)。
1817年に再発見されたその詩は、ヨハン・アンドレアス・シュメラー[2]によって、テキストで重要な語にちなんで『Muspilli』というタイトルをつけられ、1832年に最初に出版された。
「Muspilli」は、古高ドイツ語の既存の全文献中に1回だけ見られ、古サクソン語「Mūd-/Mūtspelli」に対応する単語であるが[3]、語源も意味もはっきりしていない。しかしこの詩が記述するのは、業火(ekpyrosis)による世界の何らかの劇的な最後だと推測されている。
詩は、ゲルマン民族の初期のキリスト教的精神が表現された一例である。エリヤと反キリスト、最後の審判を主題にしつつ、ゲルマン人の古い信仰の要素を聖書やキリスト教の概念に結合させている。
テキストの焦点は、まず死後の魂の運命に合わせられる。多くの天国と地獄の軍勢が死んだ個々人の魂を巡って戦い、勝利をした方が戦利品としてその魂を奪い去っていく。(1節 - 37節)
主題はもう一つの戦いに移り、最後の審判に先立って起こるエリヤと反キリストとの戦いが描かれる。この2人の戦士は、それぞれが神と悪魔のために戦う。反キリストは倒れるであろうが、エリヤもまた傷つき、血を大地に滴らせるであろうこと、そしてその血によって世界が業火に包まれるであろうこと、即ちmuspilliの到来が予告される。(38節 - 56節)
詩の残る部分は、キリストの復活と最後の審判の日に関連している。(57節 - 103節)
44節 - 54節:
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