ヒューマンビートボックス(Humanbeatbox)は、人間発話器官を使ってビートボックス(ドラムマシン)のように音楽を創りだす音楽表現の形態の一つである。略称はビートボックス、あるいはHumanBeatBoxという英語の頭文字を取ってHBB、また若しくはBeatBoXからBBXと略字で表記する場合もある。[要出典]演奏者はビートボクサーと呼ばれ、通常は本名ではなくステージネームで呼ばれる。[要出典]

定義

Thumb
ビートボックスを披露するビズ・マーキー

一人または複数の人間の発話器官を使って音楽を創りだす新たな音楽表現の形態の一つであり、ニューヨークのストリートカルチャーを発祥としている[1]マイクロフォンアンプなどの拡声装置やサンプラーやループステーションといった多重録音機等の電子機器を用いることがあり、楽器や様々な装置の[注釈 1]だけでなく人間由来の独自の音まで、様々な音を素材としている。

解説

概念形成の現状

世界初のヒューマンビートボックスの専門書『Human Beatbox-Personal Instrument-』(日本版未刊行)の著者Patryk Matelaによれば、「ヒューマンビートボックスは、発声器官のみを使用して、リズムのあるドラムサウンド、メロディーまたは模倣した楽器を創りだす芸術である。これは、単語の子音または母音だけでなく、非言語音も使用する歌唱法の最先端の方法である」[2]とされている。

具体的な表現事例としては、レコードスクラッチ音や、ベース音、リズムマシンミキシングによる音色の加工や変化などを再現したブレイクビーツを一人で作り上げたり、動物の鳴き声、風の音、機械の作動音などの様々な直接的模倣音を使い、何らかのストーリー性を感じさせる演奏をグループでおこなったりする例が多く見られる。また、これらの演奏に歌やセリフなどの言語音がそのまま加えられることもある。一般的には、DJが用いる「ビートボックス」と呼ばれるリズムマシンによる音を人間の声で模倣したことに由来すると言われている[3]ヒューマンビートボックスであるが、日進月歩でその表現技法は発展を遂げており、単なる模倣の文化から、独自の音楽表現の領域として欧米諸国ではその概念が確立されつつある。一方、日本国内では、2014(平成26)年度に、ヒューマンビートボックスの公的研究として『音楽表現の新たな素材としてのヒューマンビートボックスに関する基礎研究』(科学研究費基盤研究(C)2637019)[4]が初採択され、学術的な研究領域として徐々に認知されるようになった[5]。なお、世界的な潮流と日本におけるヒューマンビートボックスの萌芽期に関しては、『日本におけるヒューマンビートボックスの概念形成~世界的な潮流と日本人ビートボクサー“Afra”との関わりから~』[6]で詳述されている。

起源

起源に関しては、ヒューマンビートボックスの概念規定によって諸説が混交としていたが、近年では適切な捉え方[7]が進んでいる。例えば、ヒューマンビートボックスはストリートカルチャーが発祥であるという前提に立つならば、アメリカ合衆国で1930年代に出現した簡易な楽器とボーカルによるドゥーワップが始まりとなり、1985年にDoug E.Freshは自身が1982年に最初にこの音楽表現を始めた[8]と語っており、「La Di Da Di」が最古の録音と捉えることができる[9]。 一方、The Fat Boys(1982~1991,2008~)のメンバーの一人Buffyは、1975年に始めたと主張[10]している。ただし、両者の主張は録音録画に基づくものではなく、あくまでも元祖を主張する二人という捉え方をすべきである。

また、音の模倣ということにだけに着目するならば、「ビートボックスは1970年代半ばに発明されたものではなく、 文明の幕開けから人間は、音を使ってコミュニケーションをとり、危険や宗教的な目的について警告してきた。音楽や歌のような音の芸術が登場するとすぐに、音を模倣する技術はいろいろな形をとっていった。」とする前述書のPatryk Matelaの指摘も的を射ていると言える[11]

日本人初のビートボクサーの誕生と日本国内での概念形成

日本人初のビートボクサーは、Afra(本名:藤岡章)である[12]。Afraは、日本国内で“ボイパ”(ボイス・パーカッション)という言葉しか知られていなかった2000年7月10日に、ニューヨークのセントラルパークで毎年開催される音楽イベント“Summer Stage”に日本人初のビートボクサーとして出演した。その後、Afraは2003年に活動の拠点を日本に移し、FUJI XEROXのテレビCMに出演した[13]。このテレビCMは、ビートボクサーを全く知らない人たちに、ヒューマンビートボックスという音楽表現の存在が認知されるきっかけを与えたとされる[14]

なお、ボイス・パーカッションとヒューマンビートボックスは、どちらも既存の楽器の音を模倣した言語音を使ったり、直接的模倣音を使ったりするため、日本国内ではこれらが混同される場合が少なくない。特に、日本においては、ア・カペラ・グループの演奏を競い合うテレビ番組[15]の中で、「ボイス・パーカッション」という呼称やその表現が先行して広まったこともあり、ボイス・パーカッションとヒューマンビートボックスが定義の上で混用される例も多い。しかし、ヒューマンビートボックスの世界大会である、BEATBOX BATTLE WORLD CHAMPIONSHIPなどの場に於いては、ボイス・パーカッションという呼称は「ハモネプ」で生まれた言葉であったため、理解されないことも多く、日本におけるボイス・パーカッションの概念は、海外ではボーカル・パーカッションあるいは、ヒューマンビートボックスとして理解されている[3]

ボイス・パーカッションとヒューマンビートボックスの相違

河本洋一(2019)は、“ボイパ”は「演奏の中で打楽器のような音を口で発する技術とそれを担う人」[16]という概念であるのに対し、ヒューマンビートボックスは「様々な音を発する技術に加え単独を基本とする演奏スタイル」[17]という概念であるという考え方を示している。ただしボイス・パーカッションとヒューマンビートボックスはMatela(2014)も指摘[18]しているように、成立した歴史的な背景が異なる。

主なビートボクサー

日本のビートボクサー

脚注

関連項目

外部リンク

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