バックミンスターフラーレン

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バックミンスターフラーレン

バックミンスターフラーレン(Buckminsterfullerene)は、分子式C60の球状分子である。1985年9月4日に、ライス大学ハロルド・クロトー、ジェームズ・ヒース (en)、ショーン・オブライエン、ロバート・カールリチャード・スモーリーによって初めて調製された[4]。クロトー、カール、スモーリーは、バックミンスターフラーレンおよび関連分子(フラーレン類)の発見の業績により1996年のノーベル化学賞を受賞した。この分子の名称は、分子の構造と類似しているジオデシック・ドームを考案したリチャード・バックミンスター・フラーに敬意を表したものである。バックミンスターフラーレンは最初に発見されたフラーレン分子であり、また天然において最も一般的なフラーレン分子である(中に少量見いだされる)[5][6][7]。C60フラーレン、バッキーボール (Buckyball) とも呼ばれる。

概要 バックミンスターフラーレン, 識別情報 ...
バックミンスターフラーレン
識別情報
CAS登録番号 99685-96-8 
PubChem 123591
ChemSpider 110185 
日化辞番号 J338.730E
特性
化学式 C60
モル質量 720.64 g mol−1
密度 1.729 g/cm3(5 K、 理論値)[1]
融点

1180 °C[1]

への溶解度 不溶
構造
結晶構造 面心立方格子(室温)[2]
単純立方格子(< 249 K)[3]
空間群 Pa3(T6
h
)
格子定数 (a, b, c) a = 14.041 Å,b = 14.041 Å,c = 14.041 Å
格子定数 (α, β, γ) α = 90.00°, β = 90.00°, γ = 90.00°
出典
結晶構造[3]
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
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バックミンスターフラーレン分子は、粒子と波動の二重性が実験的に観測された最大の粒子である[8]

構造

バックミンスターフラーレンの構造は、20の六角形と12の五角形からなる切頂二十面体であり、それぞれの多角形の頂点は炭素原子、多角形の辺は炭素-炭素結合である。C60分子のファンデルワールス直径は約1.01 nmである。C60分子の核間距離(炭素骨格の直径)は約0.71 nmである。C60分子には2種類の結合距離がある。6:6環結合(2つの六角形の間)は二重結合と考えることができ、6:5結合(六角形と五角形の間)よりも短い。平均結合距離は1.2 Åである。C60構造中の炭素原子は、それぞれ3つの炭素原子と共有結合している。炭素原子は6個の電子を有していることから、電子構造はu2,4である。安定化するためには、炭素原子は最外殻に8個の電子が必要であり、3つの炭素原子との共有結合では、最外殻の電子は7個にしかならない。このことは、全炭素原子上の結合に関与していない電子が、分子全体にわたって非局在化していることを意味している。電子は電荷を持っているため、この自由電子運動はバックミンスターフラーレンが非常によい導電体となることを意味している。このことにより、バックミンスターフラーレンは、その大きさのため、ナノテクノロジーにおいて非常に有用となっている。

バックミンスターフラーレンのベンゼン溶液
バックミンスターフラーレンの基底状態電子密度の等密度面(密度汎関数法による計算)

脚注

外部リンク

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