ハイファントセラス (学名 :Hyphantoceras )は、ノストセラス科 に属する螺旋状の殻を持つ異常巻きアンモナイト の属 。化石は北西太平洋地域やヨーロッパで産出する。
概要 ハイファントセラス, 地質時代 ...
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羽幌地域における蝦夷層群 羽幌川層の調査では、ハイファントセラスやバキュリテス は浅海域よりも沖合の地層で多産している。このことから、ハイファントセラスは特に浅海棲ではなかったことが示唆される[1] 。
Matsumoto (1966) は暫定的に[2] 、シュルエテレラ とネオクリオセラス との共通祖先について、ハイファントセラスからチューロニアン 期に枝分かれしたものとした[3] 。Matsumoto (1985) でもハイファントセラスからネオクリオセラスが派生したと考察され[4] 、Matsumoto (1986) でも関連性が示唆されている[2] 。
H . ernsti
H . reussianum やH . flexuosum あるいはネオクリオセラス やアニソセラスの種として記載された過去を持つ。螺旋状の幼年殻、比較的大きな角度で成長する螺環などを標徴形質とする。化石はザクセン州 やヴェストファーレン などドイツ で産出する[5] 。
H . flexuosum
Helicoceras 属の種として記載された[5] 。後期チューロニアン から前期コニアシアン 期の種であり[6] 、ドイツ 北部において多産する[5] 。日本の双葉層群 足沢層大久川部層からも産出例があり、北西太平洋にも同種が生息していたことが示唆される[6] 。
H . heteromorphum
コニアシアン 期の種である。準円形の螺環断面を持つ。幼年殻は緩やかに湾曲しながら棒状に伸び、U字型のターンを描いてからアーチ状の湾曲を示す。その後、規則的な螺旋に入る。主肋上に4列の突起を持つ[7] 。北海道で産出する種であるが、殻修飾に基づくとH . orientale と直接繋がる系統ではない[8] 。
H . oshimai
Heteroceras 属の種として記載された。大型であり、螺旋の間隔は狭い[7] 。成長後期段階においては住房の開口部が上向きに逸れる[9] 。H . transitorium と殻修飾が類似しており、近縁な可能性がある[8] 。
H . orientale
Heteroceras 属の種として記載された。後期サントニアン 期の種である。立体螺旋巻きで、殻修飾として多数の細肋と4列の突起を有する。螺旋の咆哮は直線的で規則正しく、螺環の成長率は低い[7] 。
化石は北海道 や樺太 などの北西太平洋地域のみで産出しており、独自に進化した種と推測されている[10] 。2019年にはH . transitorium と層準が重複することなく連続的に産出することが確かめられ、形態的特徴と合わせて当該種との祖先-子孫関係が示唆されている[8] 。
E . reussianum
H . reussianum
チューロニアン の種である。化石はヨーロッパ (ドイツ [11] [12] [13] )で産出する。幼年殻の螺旋は角度が小さく、また成年殻は大きくUターンした後にレトロバーサルフックと呼称される住房を持つ[7] 。
H . transitorium
サントニアン 期の種であるが、H . orientale よりもやや古い時代のものである。螺環の巻き方には種内での差異が大きく、螺旋はH . orientale よりも密であるが、より新しい層準の化石ほど螺旋が緩やかになる。このことから、より緩やかな螺旋を持つH . orientale との祖先-子孫関係が示唆される[14] 。
H . venustum
Heteroceras 属の種として記載された。北海道で産出する種であるが、殻修飾に基づくとH . orientale と直接繋がる系統ではない[8] 。なお、樺太 南部のナイバ地域に分布するBykov層からも産出している[15] 。
H . yabei
マダガスカル 産の種。H . ernsti に類似するが、肋がより粗く、幼年殻の角度がより大きい点で異なる[5] 。
また、Fossilworksによれば以下の3種が居る[16] 。
H . irregulare
H . laqueum
H . plicatum
Frank Wiese (2000). “On some Late Turonian and Early Coniacian (Upper Cretaceous) heteromorph ammonites from Germany”. Acta Geologica Polonica 50 (4): 407-419.