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タクロリムス (tacrolimus) は、23員環マクロライド・マクロラクタム構造を持つ免疫抑制剤の一種で、臓器移植または骨髄移植を行った患者の拒絶反応を抑制する薬剤である。またアトピー性皮膚炎に対する塗布剤、関節リウマチ治療薬としても用いられる。いずれもハイリスク薬である。類似の薬剤としてはシクロスポリン等が知られる。
IUPAC命名法による物質名 | |
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臨床データ | |
胎児危険度分類 |
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法的規制 |
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薬物動態データ | |
生物学的利用能 | 20%, 高脂肪食では低下する |
血漿タンパク結合 | 75-99% |
代謝 | 肝代謝 (CYP3A4) |
半減期 | 11.3 時間(3.5-40.6 時間の範囲) |
排泄 | ほとんどが糞中 |
データベースID | |
CAS番号 | 104987-11-3 |
ATCコード | L04AD02 (WHO) D11AX14 (WHO) |
PubChem | CID: 445643 |
DrugBank | APRD00276 |
ChemSpider | 4976056 |
KEGG | D08556 |
化学的データ | |
化学式 | C44H69NO12 |
分子量 | 804.018 g/mol |
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1984年、藤沢薬品工業(現アステラス製薬)の研究により筑波山の土壌細菌(放線菌の一種、Streptomyces tsukubaensis)より分離された[1]。
1993年5月に肝臓移植時の拒絶反応抑制剤として認可され、後に腎臓、肺、骨髄などの移植に用いられた。さらにアトピー性皮膚炎、重症筋無力症、関節リウマチ、ループス腎炎へも適応が拡大された。
タクロリムスは細胞内でまずFKBP (FK506 binding protein) と複合体を形成し、これがさらにカルシニューリンに結合する[2]。そしてそのNFATに対する脱リン酸化反応を阻害することにより、IL-2に代表される種々のサイトカインの発現を抑制する。これにより、細胞傷害性T細胞の分化増殖を抑制、細胞性免疫・体液性免疫の両方を抑制する[3]。
このメカニズムはハーバード大学のスチュアート・シュライバーによって解明された。シュライバーはタクロリムスをツールとして様々な生命現象の解明を行っており、これらの研究はケミカルバイオロジーという一分野を切り開く先駆けとなったことで知られる[3]。
製品により日本で認可された適応症は異なる。
タクロリムス (tacrolimus) の名は、筑波で発見されたマクロライド系免疫抑制剤 (Tsukuba macrolide immunosuppressant) というところから命名されている[1]。開発コードナンバーはFK506であり、論文などではこちらの名称が使用される例も見られる[2]。
臓器移植用医薬品としての商品名はプログラフ(商標登録日本第5315917号)で、1993年に藤沢薬品から発売された。2008年に1日1回投与でプログラフの1日分(1錠を2回)の効果をもたらす、経口徐放性製剤タイプのグラセプター(海外ではアドバグラフもしくはプログラフXL)が発売されている。
アトピー性皮膚炎用外用剤としては、1999年にプロトピック軟膏として発売されている。山之内製薬との合併により、2005年以降はアステラス製薬の製品となったが、プロトピックは医療用皮膚薬のスペシャリティーファーマであるマルホにプロモーション提携した後に、日本の販売権利をマルホに売却。日本国外での販売権も2016年にデンマークの製薬会社、レオファーマに売却されている[4]。
タクロリムスはアルツハイマー病に対して効果があるかもしれないことを示唆する研究も存在する[5]。2015年現在、タクロリムスがアルツハイマー病を予防できたという証拠は見い出せていないものの、疫学的に見ると、タクロリムスを常用している者と、そうではない者とを比較した時、タクロリムスを常用している者のアルツハイマー病発症率が低いとの報告がある[6]。
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