センメルヴェイス反射

通説にそぐわない新事実を拒絶する傾向 ウィキペディアから

センメルヴェイス反射(Semmelweis reflex)とは、通説に反する新たな知識に触れた人間がそれを反射的に拒絶する現象を指す。

19世紀中頃、オーストリアのウィーン総合病院産科に勤務していたハンガリー人医師センメルヴェイス・イグナーツは、出産した母親が産褥熱という病気にかかって死亡する原因が、分娩を担当する医師の汚れた手にあるということに気が付いた。細菌の概念がまだ受け入れられていなかった当時、センメルヴェイスは医師の不清潔な手から未知の死体粒子が患者に移動することで産褥熱を引き起こすと考え、その予防法として塩素消毒法を提唱し、産褥熱による死亡を劇的に減少させることに成功した。

センメルヴェイスはこの発見と研究成果を医学界に発表したが当時の多くの医師たちの反感を買うこととなった。主な理由としては不清潔な医療現場が原因で患者が新たに病気に感染するという考え方は当時としてはかなり急進的であったことや、当時医師という職業は人の命を救う崇高で尊い職業であると考えられていたため、その医師自身が原因で患者が病気になる、死亡しているという事実が受け入れられなかったことにある。

当時の医学界の人間たちはセンメルヴェイスの研究成果に具体的なデータがあったにも関わらずそれを受け入れず、むしろセンメルヴェイスは発狂しているのだとして1865年に精神病院に入れてしまった。そのわずか14日後、病院の衛兵から受けた暴力でできた傷が元で敗血症によりセンメルヴェイスは死亡した。

以上の出来事から、それまで信じられていたことや一般常識に反する事実が提唱された際に、それらに触れた人間が反射的に強く拒絶する現象をセンメルヴェイス反射と呼ぶようになった。単純に信じようとしないというだけでなく、その相手に対して強い攻撃性を持つ傾向がある。相手に対して不名誉なレッテルを貼ることで信憑性を落とそうとするなどの詭弁誤謬を多用したり、データや論文などを示したところでそれを見ない、受け入れないという認知バイアスが見られることも特徴的である。

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出典

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