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スルピリン[6](Sulpyrine,Metamizole,Dipyrone (USAN) )は、鎮痛薬、鎮痙薬、解熱薬であり、抗炎症薬でもある。一般的な投与方法は、経口または注射である[4][5]。日本では皮下注射または筋肉内注射で用いられる。アンピロンスルホン酸系の医薬品である。いわゆるピリン系薬剤の一つである[7]。
IUPAC命名法による物質名 | |
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臨床データ | |
販売名 | Novalgin,[1] others[2] |
Drugs.com |
国別販売名(英語) International Drug Names |
胎児危険度分類 | |
法的規制 |
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薬物動態データ | |
生物学的利用能 | 100% (active metabolites)[5] |
血漿タンパク結合 | 48–58% (active metabolites)[5] |
代謝 | Liver[5] |
半減期 | 14 minutes (parent compound; parenteral);[4] metabolites: 2–4 hours[5] |
排泄 | Urine (96%, IV; 85%, oral), faeces (4%, IV).[4] |
データベースID | |
CAS番号 |
50567-35-6 68-89-3 (sodium salt) |
ATCコード | N02BB02 (WHO) |
PubChem | CID: 3111 |
DrugBank | DB04817 |
ChemSpider | 3000 |
UNII | 934T64RMNJ |
ChEBI | CHEBI:62088 |
ChEMBL | CHEMBL461522 |
別名 | Dipyrone (BAN UK, USAN US) |
化学的データ | |
化学式 | C13H17N3O4S |
分子量 | 311.36 g·mol−1 |
| |
無顆粒球症などの有害事象が発生する可能性があるため、一部の国では禁止されているが、薬局で購入できる国もある[8][9]。あるメーカーの調査では、治療開始後1週間以内の無顆粒球症のリスクは、ジクロフェナクの100万分の5.92に対して、僅か100万分の1.1とされている[10]。
1922年に特許が取得され[11]、ドイツで初めて医療用に使用された。長年に亘り、多くの国で市販されていたが、重篤な副作用のために撤退した[12]。日本での商品名はメチロンとして、長年処方され続けたが、2020年3月に薬価収載終了となった[13]。後発医薬品は使用可能である[14]。日本では処方箋が必要な注射薬として医療機関で用いられる。
ショックなどの重篤な副作用が発現することがある[15]。
スルピリンは下記の患者には禁忌である[15]。
妊娠中の使用は避けるべきであるが、動物実験では先天性障害のリスクは最小限であることが確認されている。高齢者、肝臓や腎臓や心臓に障害のある患者、血液の異常のある患者、気管支喘息のある患者などへの使用は推奨されないが、やむを得ず投与する場合は、通常、低用量とすべきである。また、母乳中に排泄されるため、授乳中の使用は避ける必要がある[4]。
重大な副作用として記載されているものは、下記の通りである[15]。
スルピリンは、血液毒性の可能性があるが、他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)に比べて、腎臓、心血管、胃腸への毒性は少ない[5]。NSAIDと同様に、特に喘息患者において、気管支痙攣やアナフィラキシーを引き起こす可能性がある[9]。また、スルホンアミド系薬剤と化学的に関連していることから、ポルフィリン症の急性発作を引き起こす可能性がある[3][5][9]。無顆粒球症の相対的なリスクは、国によって大きく異なるようで、このリスクに関する意見は大きく分かれている[3][16]。スルピリンの感受性には、遺伝的因子が重要な役割を果たしている可能性がある[17]。ある集団は、他の集団よりもスルピリンによる無顆粒球症に罹患しやすいことが示唆されている。一例として、スルピリン関連の無顆粒球症は、スペイン人で少なく、英国人でより頻繁に見られる[18]。
2016年のシステマティックレビューによると、スルピリンは上部消化管出血のリスクを1.4~2.7倍(相対リスク)と有意に増加させた[19]。
下記の相互作用が知られている[4]。
経口抗凝固薬、リチウム、カプトプリル、トリアムテレン、降圧薬もスルピリンと相互作用する可能性があり、他のピラゾロン系薬剤はこれらの物質と悪影響を及ぼすことが知られている。
詳しい作用機序は不明だが、脳や脊髄でのプロスタグランジンの合成阻害が関与しているのではないかと言われている[9]。最近になって、スルピリンがプロドラッグであるという別の機序の可能性が提示された。他の研究者による検証はまだ行われていないが、この説では、スルピリン自体が分解されて、実際の活性物質である別の化学物質になり、そのカンナビノイド様物質とアラキドン酸の結合物が効果を発揮するとされる[20]。にもかかわらず、動物を使った研究では、カンナビノイドのCB1受容体はスルピリンによる鎮痛には関与していないことが判明している[21]。プロスタグランジン、特にプロスタグランジンE2による発熱を抑制すると思われるが[22]、スルピリンはその代謝物、特にN-メチル-4-アミノアンチピリン(MAA)と4-アミノアンチピリン(AA)によって治療効果を発揮していると考えられる[4]。
代謝物 | 略語 | 生理活性の有無 | 薬物動態特性 |
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N-methyl-4-aminoantipyrine |
MAA | 有 | バイオアベイラビリティ≒90%。血漿タンパク結合:58%。初回(経口)投与量の3±1%が尿中に排泄される。 |
4-aminoantipyrine |
AA | 有 | バイオアベイラビリティ≒22.5%。血漿タンパク結合:48%。初回(経口)投与量の6±3%が尿中に排泄される。 |
N-formyl-4-aminoantipyrine |
FAA | 無 | 血漿タンパク結合:18%。初回経口投与量の23±4%が尿中に排泄される。 |
N-acetyl-4-aminoantipyrine |
AAA | 無 | 血漿タンパク結合:14%。初回経口投与量の26±8%が尿中に排泄される。 |
ルートヴィヒ・クノールは、エミール・フィッシャーの弟子であり、フェニルヒドラジンの発見を含むプリン体と糖の研究でノーベル賞を受賞した[1][23]。1880年代、クノールはフェニルヒドラジンからキニーネ誘導体を作ろうとしたが、ピラゾール誘導体が生じ、これをメチル化してアンチピリンが合成された。この薬は「現代の解熱鎮痛剤の "母"」と呼ばれている。1893年には、アンチピリンの3倍の活性を持つアミノピリンが合成された[1][24]:26–27。
さらにその後、1913年に誘導体であるメルブリン(アンチピリンアミノメタンスルホン酸ナトリウム CID 19145 - PubChem)が合成された[25]。スルピリンはネオメルブリンとも呼ばれるメルブリンのN-メチル誘導体であり、アミノピリンのより可溶性のプロドラッグでもある[1][24]:26–27。スルピリンは1922年にドイツで初めて販売された[1]。
スルピリンは、いくつかの国では禁止されているが、他の国では処方箋で入手でき(強い警告を伴う場合もあれば、伴わない場合もある)、さらに他の国では一般薬として市販されている[12][26][27]。例えば、スウェーデン(1974年)、米国(1977年)、インド(2013年、2014年に解禁)では承認が取り消されている[28][29]。
2018年、スペインで数人の英国人が死亡したことを受けてスペインの調査機関が調査した処、死亡の要因として考えられるのは、メタミゾールの副作用で無顆粒球症を引き起こす可能性があることであった[30]。
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