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イタリアの哲学者 ウィキペディアから
ジョルジョ・アガンベン(Giorgio Agamben、1942年4月22日 - )は、イタリアの哲学者。初め美学者として活動を始め、近年は政治哲学に集中している。ホモ・サケル、ゾーエ、ビオスなどの概念で知られる。
パリの国際哲学コレージュ、マチェラータ大学、ヴェローナ大学、ヴェネツィア建築大学などで講じた。イタリアの大学からは退官している。
ローマ・サピエンツァ大学卒業。卒業論文はシモーヌ・ヴェイユの政治思想について。
1966年と1968年に、ハイデッガーの南フランス・ル・トール (Le Thor) ゼミナールを受講する(講座はヘラクレイトスとヘーゲルについて)。
1970年代には、言語学、文献学、詩学、中世思想を研究し、自身の関心を洗練させていった。
1974年より1年間、ヴァールブルク研究所研究員。後に『スタンツェ』に纏められる研究を進めた。
作家アルベルト・モラヴィアの妻であったエルザ・モランテと親しい。
パゾリーニの映画『奇跡の丘』(原題は「マタイによる福音書」の意)でピリポ役を演じた。 イタリア語訳ベンヤミン全集を監修。
マルティン・ハイデッガー、ヴァルター・ベンヤミン、ミシェル・フーコー、イタリアのネオマルクス主義の影響下に思想を形成。美学と政治を自在に往還する視点から、「言葉を話す動物」としての人間について思索をおこなっている。インタヴューにおいてアガンベンは自身を「言語とグローバルな規模での社会紛争に関心を持った公共的な思想家」であるとしているように、基本的には言語論(芸術論を含む)と政治哲学の両輪で思索をすすめている。
フーコーの生政治とカール・シュミットの例外状態をもとに、ローマ時代のホモ・サケルを現代の政治と重ね合わせて読み解く『ホモ・サケル』によって注目を浴びた。
アガンベンはアーレントの理論における「ゾーエ」(zoe、剥き出しの生、生物的な生)と「ビオス」(bios、社会的な生、政治的な生、生活形式における諸活動)、そして、ビオス・ポリティコス(偉大な行動と高貴な言葉を生きること)についての思考を批判的に継承している。
また、フーコーが「近代が生政治を生み出した」としたのに対し、アガンベンは政治は始めから生政治であったとする。アガンベンは、ローマ時代の特異な囚人「ホモ・サケル」とは、ビオスを奪われ、ゾーエしか持たない存在であるとし、そのような生を、ベンヤミンを受けて剥き出しの生と呼び、生政治はこの「剥き出しの生」を標的にしていると説いている。
しかし、このようなアガンベンのフーコー読解には批判がある。2006年に出版された日本の雑誌『現代思想』のアガンベン特集号では、寄稿された論文の多くがアガンベンを批判する論旨になっており、人々を驚かせた。
『来るべき共同体』(1990年)でアガンベンはこう書いている。
「…もし人類が、このあるいはあの実体、このあるいはあの運命でしかないとすれば、いかなる倫理的経験も不可能である。このことはしかしながら、人間が単に虚無に委ねられるべきで、それゆえ運命を受け入れるのか受け入れないのか(ニヒリズムと決定論はこの点において一致する)を選ぶのは自由であるというようなことを意味しない。このことが導くことは、人間がなんであり、なんであるべきなのかという事であり、しかしこれは本質でも、厳密な意味でのモノでもなく、単に可能性あるいは潜在性としての実存=エグジスタンスに関する単純な事実なのだ。」
ここでアガンベンは「運命」という概念によって生を必然的に規定しようとする決定論(ニヒリズムも決定論のひとつとされる)を斥け、人間の経験や自由を可能にする条件として「潜在性」をとらえている。
アガンベンは「生命の形は分離できないものであり、プライバシーとも関連する」と語っている[1]。
また、アガンベンは『来るべき共同体』とは、「生」(ビオス)を「剥き出しの生」(ゾーエ)とみなすような、例外状態へと集約されるような君主制(主権:sovereignty)に対抗するものであるとしている。アガンベンはまず米国の刑法について論じている。
アフガン戦争、イラク戦争後の米軍に拘束されたイスラム教徒の外国人捕虜について、基本的人権を認められず、自分が人間であることをすら忘れるような虐待、拷問が行われたことについてアガンベンは論じている。
アガンベンは例外状態を、例外状態においてゾーエ(生物的生)とビオス(社会的生)の区別はそのような権力によってもたらされる、とした。
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