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流体力学におけるクッタ・ジュコーフスキーの定理(クッタ・ジュコーフスキーのていり、英: Kutta–Joukowski theorem)とは、物体まわりの循環値と揚力の関係を示す式である。飛行機の翼など形状による揚力と変化球などのマグヌス効果による揚力が統一して説明される[1]。
マルティン・ヴィルヘルム・クッタ (Martin Wilhelm Kutta 1867-1944)が1902年に、ニコライ・ジュコーフスキー (Nikolai Zhukovsky 1847-1921、またはJoukowski) が 1906年に、それぞれ独立に導いた。
平行流中に置かれた翼体を考えるとき、翼体の上流側よどみ点で分かれた流体が下流で合流するまでの間、揚力が上向きの場合に物体の上面側の流れが下面側より速い。非粘性とみなせる場合に断面で見た翼体形状の線の上で循環が見積もられる。
この循環の効果として翼体に作用する揚力を解釈できる。
完全流体の二次元流について、流れにさらされた柱状物体に働く単位長あたりの揚力 L は、流体の密度 ρ、流速 U、物体形状線上で見積もられる循環 Γ の積で表される。
この定理は、二次元流れを対象とする。球のような三次元的形状についても定性的に利用できる。また、マグヌス効果の解析的な解である。
翼の移動速度と揚力の関係式として、次の式が知られている。
一方で本項の定理について、翼周り循環 Γ を翼断面線の長さを 2S’ とし、線上の平均速度 u' で置き換えると次の式が得られる。
翼断面が薄板状に近いときなどは であり となる。
これは翼面表面を周りこむ流動の規模と揚力との量関係を示している。
ここでは2つの導出を記す。 1つめはヒューリスティクス である。 2つ目はベクトル解析と複素解析を用いる厳密な導出である。
コード長 スパン長無限の薄い翼体が、密度 の空気中を移動する。このとき翼体を傾けて2つの翼面の一方の速度が もう一方の面の速度が となったとき、
循環はつぎのように表される。
翼体上下の圧力差 は ベルヌーイ式によりつぎのように導かれる。
単位スパン長あたりの揚力は
となる。
この式の 微分形 を平板の要素に当て嵌めたものが thin-airfoil theory の基礎となる。
先に要点をまとめると、
以上は、特定の条件下について複素解析により証明可能である。
複素解析による証明 |
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対象となる回転円筒の回転軸がZ軸に一致するものとし、任意のXY断面を考えて、ここに働く[2] z軸単位長当たりの力 (以降は単に力と呼ぶ)を とする。粘性無視でき圧力のみ作用する場合に次のように表される。
ここで C はXY面における円筒の境界線、 は 静圧、 は 円筒面上の外向き単位法線、ds は断面上境界線の微小円弧要素長とする。ここで をx軸と微少要素のなす角度とすると、上述の力は成分ごとにつぎのようにあらわされる。 ここで対象のXを実数軸、Yを虚数軸として複素平面に持ち込む。 前述の力は次のように表される。 はX軸すなわち実数軸に対する角度であるから複素平面上の偏角として読み替えられる。 複素ポテンシャルの定義に合わせて を正負反転する。ここでは の複素共役で表す。 面要素長 ds に対応する複素要素は まとめるとつぎの式が得られる。 ここでベルヌーイ則を適用し、圧力を速度式に置き換える。ここでは外力なしが前提である。空気の密度 および圧力 と速度 は次の関係にある。 これにより力 は、 となる。
複素ポテンシャル を導入する。 速度成分との関係は ここでアポストロフィは複素変数 z での微分演算を示す。 ここで速度は境界 C に対し接線方向であるため、 したがって これにより次のブラジウス式と呼ばれる式が導かれる。
( は無限遠方速度と対応することから: .) についてみるとローラン級数の定義より
平方をとると これを前述のブラジウス式に戻す。C上の周回積分により第2項だけ残して他は消える。 これにてクッタ・ジューコフスキー式:
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