カルモフール

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カルモフール

カルモフール(Carmofur)またはHCFU(1-hexylcarbamoyl-5-fluorouracil)は、嘗て販売されていた抗悪性腫瘍薬として使用されるピリミジンアナログである。フルオロウラシル(5-FU)の誘導体であり、経口投与可能な脂溶性5-FUプロドラッグである[1]。日本では2009年3月に販売が終了した[2]:13

概要 IUPAC命名法による物質名, 臨床データ ...
カルモフール
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IUPAC命名法による物質名
臨床データ
Drugs.com 国別販売名(英語)
International Drug Names
データベースID
CAS番号
61422-45-5 
ATCコード L01BC04 (WHO)
PubChem CID: 2577
DrugBank DB09010 
ChemSpider 2479 
UNII HA82M3RAB2 
KEGG D01784
ChEBI CHEBI:31360
ChEMBL CHEMBL460499 
別名 1-hexylcarbamoyl-5-fluorouracil, HCFU, N-hexylcarbamoyl-5-fluorouracil, Yamaful, NCGC00095165-01, Hexylcarbamoyl fluorouracil, 61422-45-5, UNII-HA82M3RAB2, CCRIS 2759, C11H16FN3O3, Uracil, 5-fluoro-1-hexylcarbamoyl-, BRN 0888898, HA82M3RAB2, 1(2H)-Pyrimidinecarboxamide, 5-fluoro-N-hexyl-3,4,
化学的データ
化学式
C11H16FN3O3
分子量257.27 g·mol−1
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効能・効果

  • 消化器癌(胃癌、結腸・直腸癌)[3]
  • 乳癌[3]

製品販売は1981年に開始され、中国、日本、フィンランドにおいて、治癒切除された大腸癌患者に対する術後補助化学療法として長年使用されていた[4]。試験やメタアナリシスにより、この種の患者の生存期間を延長することが確認されている[5]

SARS-CoV-23C様プロテアーゼを阻害することが示されており、COVID-19に対する新しい抗ウイルス剤開発の有望なリード化合物である[6]

副作用

5-FU同様に白質脳症英語版(脳卒中類似の症状を伴う進行性白質障害)を誘発することが知られている[7][8][9][10]。白質脳症の発生率は0.026%とされる[11][12]。骨髄抑制は比較的弱いが、重篤な腸炎[注 1]にも注意が必要である。また、頻回な尿意と熱感が特徴である[3]

小肝細胞癌を対象とした臨床試験では、患者の56%に許容できない副作用が出たため早々に中止された。さらに、この治療法はステージ1、2の癌患者に対して生存率の優位性を示さなかった[13]。米国FDAにおいてカルモフールの認可手続が行われなかったのはこれが原因である可能性がある[1]

作用機序

5-FUと異なりジヒドロピリミジン脱水素酵素に分解されない。腸から吸収され、細胞内に入ると加水分解酵素により5-FUに変換される。

従来は5-FUのみが薬理作用を発揮すると考えられていたが[14]、カルモフール自体も非常に強力な酸性セラミド分解酵素英語版(AC)阻害薬である[14]。セラミドは、癌細胞の生存、成長、死滅に影響を与える[14]。AC活性の阻害は、抗悪性腫瘍剤および放射線の影響に対して腫瘍細胞を感作する[注 2][14]脳腫瘍に対してカルモフールはテモゾロミドよりも遥かに有効であり、成人および小児の膠芽腫を死滅させることができる低分子薬剤として報告されている[15][16]

化学合成

Ozakiらは、5-FUをホスゲンヘキシルアミンで処理することで合成したと報告している[17]

脚注

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