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主に登山に使われる固定具 ウィキペディアから
カラビナ(ドイツ語: Karabiner ← Karabinerhaken)は、固定具の一種。開閉できる部品(ゲート)がついた金属リングである。
本来は、銃をベルトに下げるための器具であり、Karabinerhaken = Karabiner(カービン銃)+ Haken(フック)という語源にそれが残っている[1]。
現在は主に登山に使われる。ロープとハーネス、ハーケンやクライミングチョックなどの支点を素早く確実に繋ぐことができる。ジュラルミン製が主流である[2]。
1616年の Kriegskunst zu Pferd(直訳:馬上武術)には、カラビナのような器具が登場する[3]。ただし、機構の説明は断片的で、詳細は不明である。
1785年の Oeconomischen Encyclopädie(直訳:経済百科事典)には、Karabiner-Haken として、現在のものと基本的には同じ機構(ただしバネはリングの内側)が解説されている[4]。
登山にカラビナが使われる前は、ハーケンで身体を確保するのに「身体に結びつけたザイルを一時解いて、ハーケンの環や穴に通す」という極めて面倒で危険なことをやっていた[2]。補助ロープで作った輪をかけてハーケンとザイルを接続する方法も採られ、この輪を大きめに作って「輪抜け」と称して身体ごと潜り抜けるという、今から考えると間抜けなことを大真面目にやった人もいた[2]。
カラビナの図入り解説が初めて現れるのは1853年のベルリン消防隊の刊行物で、「ベルリン・ベルト・フック」と呼ばれていた[2]。その後、軽量化されたマギウス製「ウルム・ベルト・フック」が使用された[2]。演習中の消防隊員がこの洋梨型の輪をベルトに装着しているのを見たオットー・ヘルツォーク(Otto Herzog)はこれを登山用に使うことを思いつき、実際の登攀に使えるよう改良した[2]。ハンス・デュルファー(Hans Dülfer)も1910年にはこれを使った確保方法を考え出した[2]。ハンス・フィーヒトルも山行には必ず携行したが、現在のように多数でなく2個だけであったという[2]。
しかしハーケンやカラビナを使用することを拒否した者もいて、特にパウル・プロイス(Paul Preuss)は、突然襲いかかって来る危険に際してのみ、その使用が正当化されるとしていたが1913年に墜死した[2]。信条こそ違えど親友だったハンス・デュルファーはその墓の前で子どものように泣いたという[2]。
カラビナが使われるようになるとその便利さと安全性はすぐに了解され、急速に普及、岩登りを大きく発展させた[2]。
ミュンヘンで1913年に開店したスポーツ店シュスターは登山者の要求に極めて好意的に理解を示してカラビナを含む色々な登山用具を提供した[2]。1921年にはニッケル鍍金をし、1935年には不必要なゲート開を防ぐ安全装置付きカラビナを発売している[2]。
実物が手に入らず開閉部の仕組みが分からなかったため、日本での生産はかなり遅れた[2]。ロック・クライミング・クラブの湯村という人物が1923年に初めて試作したが、この時点ではバネが内蔵されているヨーロッパ製と違い、いちいちネジを外す形式だったため手間が掛かり、またネジを落とさないよう細心の注意を必要とした[2]。
登山・救助用の(ジュラルミン製)カラビナには、基本的に3種類ある。
特殊な例だがヴィアフェラータ用の簡易オートロック式安全環を持った開口幅の広いカラビナもある(例: ペツル製カラビナ(商品名: ヴェルティゴ)・強度=縦25 kN、横10 kN、オープン8 kN)。
カラビナの開口部(ゲート)の安全環(ゲートが勝手に開かないようにロックする装置)も、基本的に3種類ある。ペツル製を例に挙げると、
キーホルダー用など、登山に使うことを想定していない、耐久性・強度が弱いカラビナも販売されているので、購入の際には注意する必要がある[注釈 1]。
カラビナの強度は、主にカラビナ本体に刻印されている。単位は静荷重を想定したkNで示され、衝撃荷重ではないことに注意が必要である。また、刻印された強度は破断強度であり、その値で破断するということを示している。
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