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カスプ形式(cusp form)、もしくは尖点形式とは、モジュラー形式のうちカスプでのフーリエ級数展開の定数項が 0 であるものをいう。
カスプ形式はフーリエ級数展開(q-展開(q-expansion)を参照)
の定数係数 a0 が 0 である。このフーリエ展開は、変換
の上半平面のモジュラー群の作用の結果として現れる。
他の群の場合には、複数のカスプを持つ場合があり、それに応じて複数のフーリエ展開を持つこととなる。どのカスプにおいても、q → 0 としたときの極限は上半平面の z の虚部を → ∞ としたときの極限である。商をとるとこの極限はモジュラー曲線のカスプ(cusp)に対応している。カスプ形式の定義は全てのカスプでゼロとなるようなモジュラー形式となる。
カスプ形式の空間の次元は、リーマン・ロッホの定理を通して、原理的には計算できる。例えば、重さ 12 のカスプ形式の空間の次元は 1 であることが計算できる。このことから、有名なラマヌジャン函数 τ(n) を、a1 = 1 であるようなモジュラー群の重さ 12 のカスプ形式のフーリエ係数として定義する事が意味を持つ。さらにヘッケ作用素が定数倍であることもわかる(ラマヌジャンの等式のモーデルによる証明)。重さ 12 のカスプ形式はモジュラ判別式(すなわち楕円曲線のヴァイエルシュトラスの方程式の右辺の 3 乗の判別式)
およびデデキントのエータ函数の 24 乗と定数倍を除いて等しい。フーリエ係数は、
であり、とくに τ(1) = 1 のものがラマヌジャンのタウ函数と呼ばれる。
より一般の保型形式においては、スペクトル論の「離散スペクトル」/「連続スペクトル」とそれに伴う「離散系列の表現」/「誘導表現」という区分において、カスプ形式はアイゼンシュタイン級数を補完する形になっている。すなわち、アイゼンシュタイン級数は、カスプでの与えられた値をとるように「設計」されている。放物部分群(parabolic subgroup)の理論や対応するカスプ表現の理論に基づいた一般論がある。
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