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オクラトキシン(ochratoxin)類は、アオカビ属 (Penicillium) やコウジカビ属 (Aspergillus) のカビが産生するカビ毒(マイコトキシン)の一種で、A、B、C、TAなど数種類の関連物質の総称。名前は、産生菌のA. ochraceusに由来している。主な産生菌のA. ochraceus の分布域は、熱帯から温帯の寒冷地までと広い。また、低温でも増殖し、オクラトキシン産生能を有するカビは、ヨーロッパやカナダのような寒冷地でも問題になる。
イソクマリン骨格にフェニルアラニンが結合した構造を有する。酸性溶液中では緑色蛍光、アルカリ溶液中では青色蛍光を発する。腎毒性、催奇形性、生殖毒性、神経毒性、発ガン性、遺伝毒性などが報告されているが、作用機序は未解明である。マイコトキシンのシトリニンと同時に検出されることも多い。主なオクラトキシンには、オクラトキシンA、B、C、TAの4つが知られている。
1965年にScottらの国際的な調査グループによって、南アフリカ産トウモロコシから分離された。産生菌はAspergillus ochraceus であった。
オクラトキシン産生能を有したカビは多く、未解明な部分が多い。
穀類、穀類加工品、トウモロコシ、ジャガイモ、タマネギ、豆類、種実類、チーズ、クリーム、ケーキ。汚染地域は温帯(特に寒冷地)米国、カナダ、ロシア、ヨーロッパ、日本、フィリピンなど
バルカン半島付近の風土病バルカン腎症の原因物質である可能性が指摘されていた[4]が、オクラトキシンAが原因ではなくアリストロキア酸を含むハーブによるものと結論づけられた[5]。
動物実験により、腎毒性、催奇形性、生殖毒性、神経毒性、発がん性、遺伝毒性などが報告され、消化管経由で生体に吸収されたオクラトキシンは高い濃度で腎臓に分布し、血清タンパクのアルブミンに強く結合する。また、体内では、細胞でのDNAおよびRNAの合成を阻害する。ヒトにおける半減期は35日で、代謝によりオクラトキシンαに変化する。
種 | 経口投与 | 腹腔内注射 | 静脈注射 |
---|---|---|---|
マウス | 46 - 58 | 22 - 40 | 26 - 34 |
ラット | 20 - 30 | 13 | 13 |
ラット(新生) | 3.9 | ||
イヌ | 0.2 | ||
ブタ | 1 | ||
ニワトリ | 3.3 |
反芻家畜の場合、第一胃でオクラトキシンAを分解し、フェニルアラニンと毒性の低いオクラトキシンαに変換する能力があり、成熟個体ほどその能力は高い[6]。
多尿、尿糖、蛋白尿などの腎機能障害、血清尿素窒素濃度(BUN)の上昇。病理組織学的には、近位尿細管の変性、間質の線維化、糸球体の変性など。
1969年にトウモロコシでの自然汚染が報告されて以来多くの汚染事例が報告されている。多くの穀類(米,大麦、小麦、ライ麦、トウモロコシ、小豆、大豆)、グリーンコーヒー、煮干、チョコレートなどから検出される。汚染穀類を人の食料とするほか家畜の飼料ともするため、家畜由来の食肉加工品、乳製品からも検出される。
カビが発生しオクラトキシンに汚染された場合、除去は非常に困難である。したがって、オクラトキシンが産生されないよう、農産物が収穫されると速やかに乾燥し、カビが生育しないよう適切に管理する。
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