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アミロイド(Amyloids)はある特定の構造を持つ水に溶けない繊維状のタンパク質である(詳細な定義は本文参照)。器官にアミロイドが異常に蓄積すると、アミロイド症などの神経変性疾患の原因になると言われている。
「アミロイド」の名称は、元々は、この物質がヨウ素でんぷん反応と似た反応をすることから、デンプン(ラテン語ではamylum)と関係があるとの誤解により付けられたものである。それからしばらく、科学者たちはこれが脂質なのか炭水化物なのかの議論をしていたが、実はそのどちらでもなく、ある種のタンパク質であった[1]。
学問分野によって定義が異なるので、この語を使う場合にはその意味をよく確認する必要がある。この記事では以後は生物物理学上の定義によるアミロイドについて述べる。
病名 | タンパク質の特徴 |
---|---|
アルツハイマー型認知症 | アミロイドβ[6][7][8] |
2型糖尿病 | IAPP (アミリン)[9][10] |
パーキンソン病 | α-シヌクレイン[7] |
伝達性海綿状脳症 いわゆる「狂牛病」 | プリオン[11] |
ハンチントン病 | ハンチンチン[12][13] |
甲状腺髄様癌 | カルシトニン[14] |
不整脈 | 心房性ナトリウム利尿ペプチド |
動脈硬化症 | Apolipoprotein AI |
関節リウマチ | Serum amyloid A |
大動脈中膜アミロイド | Medin |
プロラクチン産生腫瘍 | Prolactin |
家族性アミロイドポリニューロパチー | トランスサイレチン |
遺伝的非ニューロパチー性アミロイドーシス | リゾチーム |
透析アミロイドーシス | β2-ミクログロブリン |
フィンランド型アミロイドーシス | Gelsolin |
格子状角膜ジストロフィ | Keratoepithelin |
脳アミロイドアンギオパチー | アミロイドβ[15] |
脳アミロイドアンギオパチー (アイスランド型) | Cystatin |
全身性ALアミロイドーシス (systemic AL amyloidosis) | Immunoglobulin light chain AL[14] |
Yeast Prions [Sup35],[16] Rnq1 (parastitic type infection in yeast) [* 1] | |
Sporadic Inclusion Body Myositis | S-IBM |
褐色細胞腫 | |
骨髄炎 | |
多発性骨髄腫 | |
アミロイドを構成するタンパク質の四次構造はクロスβシート構造になっている。さらにクロスβシートが他のタンパク質モノマーなどと共に繊維軸方向と平行なβストランド構造を取っている。多くのアミロイドは蛍光染料染色することが可能なので、それの偏光性や円偏光二色性を見たり、赤外分光法(FT-IR)で測ったり、X線回折でクロスβ繊維を観察するといういわゆる「ゴールドストランドテスト」をすることで同定が可能である。なお、βシートそのものが長く繊維状に伸びているわけではなく、かなり短い間隔で折り畳みが起こっている。アミロイドフィブリルはいくつかの折り畳み構造が組み合わさってできている。
アミロイドと病気の関係はそれほど明確なものではない。アミロイド堆積が組織構造を破壊することがあり、ある種の統合的な過程によって機能が破壊されることが示唆されている。成長したアミロイド繊維のものより、形成途中のアミロイドのほうが細胞死の原因となるということが共通認識となりつつある[8][18]。
アミロイドの堆積がミトコンドリアの機能障害および反応性酸素生成物(ROS)の一因となり、それがアポトーシスを引き起こすシグナルとなりえるとする研究もある[19]。
治療現場では、アミロイド症の判断は平面芳香族化合物、例えばチオフラヴィンT (thioflavin T) やコンゴーレッドで染色し、蛍光を測定するという方法が取られる。コンゴーレッドを使った染色は、現在でもアミロイドーシスの同定の基本方法である。これらの染料がアミロイドのβ鎖に入り込み(インターカレーション)、複屈折を起こすので、偏光顕微鏡で観察することが可能になる。コンゴーレッドを使った場合には青りんご色になることが多い。アミロイド以外の部分、例えば細胞の核が染色されるのを防ぐため、ヘマトキシリンとエオシンを使った染色 (H&E stain) が行われることもある。より新しい技術と免疫組織化学 (immunohistochemistry) の成果により、より明瞭に染色することが可能になっている。
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