MiG-3(ミグ3 / ロシア語:МиГ-3 ミーク・トリー)は、ソ連のミコヤン・グレヴィッチ設計局が開発し、ソヴィエト連邦赤色空軍で運用された戦闘機。後に戦術偵察機に任務が変更された。
MiG-3 / МиГ-3
第172戦闘航空連隊に引き渡されるMiG-3
(1942年2月23日撮影)[2]
MiG-1を原型として、高々度用の過給器を付けた液冷エンジンAM-35Aを搭載する、高々度戦闘用の高速戦闘機である。
最大速度640km、実用上昇限度は12000m。
MiG-1からの改修点として、エンジンの変更に伴い補助燃料タンクを増設していること、キャノピー形状を変更して操縦席からの後方視界を向上させたこと、主翼の上反角を増やして機体安定性を向上させたこと、などがあげられる。
3,000機(3,300機という説もある)が生産されたが、上記エンジンの生産中止に伴い、生産を終了した。
- MiG-3(初期型)
- 最初の生産モデル。高出力液冷エンジンAM-35Aエンジンを搭載する。1940年12月20日に初飛行(生産1号機)[3]。
- MiG-3(後期型)
- 防弾鋼板の増厚、不活性化システムの実装による防御力の強化や、空戦性能の改善を目的とした前縁スラットの実装などが行われた。1941年7月10日以降生産開始。
- MiG-3 AM-38
- 低高度における性能改善を目的として試験されたAM-38エンジン搭載型。1941年7月31日初飛行。
- I-210(MiG-9)
- 空冷エンジンであるM-82を搭載した試作機。前線における評価が行われたが、性能が見込みより低く採用されなかった。この名称は戦後のジェット機であるMiG-9で再利用された。
- I-211(MiG-9Ye)
- I-210のカウルを再設計し、エンジンをM-82Fに換装したもの。性能は大幅に改善されたが、既存の生産ラインを置き換えるほどでは無いとし、こちらも不採用に終わった。
- I-230(MiG-3U)
- 空力洗練として冷却器周りなど各部の再設計を行った改良型。機首にはShVAK 20mm機関砲を2門を備えており、MiG-3より大きく強化されている。防空部隊に送られ試験が行われたが、AM-35エンジンの生産終了により量産に入ることは無かった。
- I-231
- I-230にAM-39Aエンジン (離昇1,800hp) を搭載した強化型。1943年に試験が行われているが、AM-39A自体が試作に終わった為量産されなかった。
出典: MiG: Fifty Years of Secret Aircraft Design[4]
諸元
- 乗員: 1名
- 全長: 8.25 m (27 ft 1 in)
- 全高: 3.30 m (10 ft 9 7/8 in)
- 翼幅: 10.20 m(33 ft 5 in)
- 翼面積: 17.44 m2 (188 ft2)
- 翼型: クラーク YH
- 空虚重量: 2699 kg (5965 lb)
- 運用時重量: 3355 kg (7415 lb)
- 動力: ミクーリン AM-35A 液冷V12気筒 レシプロ、993 kW (1350 hp) × 1
性能
- 最大速度: 640 km/h (398 mph, 346 kt) 高度 7800 m
- 航続距離: 820 km (510 mi, 443海里)
- 実用上昇限度: 12,000 m (39,400 ft)
- 上昇率: 8000 m まで12分 (26,250 ft まで12分)
- 翼面荷重: 155 kg/m2 (39.3 lb/ft2)
- 馬力荷重(プロペラ): 0.30 kW/kg (0.40 hp/kg, 0.18 hp/lb)
武装
- 一部の機体は、上記に加えて 12.7 mm UBK 機関銃 × 2を翼下に備えるものもある。
- 固定武装のバリエーションには、12.7 mm UBS機関銃 × 2、または 20mm ShVAK 機関砲 × 2の個体も存在する。
Khazanov and Medved (2012), p92
Khazanov and Medved (2012), p92
世界の傑作機 No.149 第二次大戦ミグ戦闘機 (2013), p14
Belyakov, R.A. and Marmain, J. (1994). MiG: Fifty Years of Aircraft Design. Shewsbury, UK: Airlife. pp. p.31
世界の傑作機 No.149 第二次大戦ミグ戦闘機 (2013), p59