2014年の御嶽山噴火
2014年に日本の長野県と岐阜県の県境で発生した御嶽山の火山噴火災害 ウィキペディアから
2014年に日本の長野県と岐阜県の県境で発生した御嶽山の火山噴火災害 ウィキペディアから
2014年の御嶽山(おんたけさん)噴火は、2014年(平成26年)9月27日11時52分(日本時間)[3][4][注 1]に発生した長野県と岐阜県の県境に位置する御嶽山(標高3,067メートル)の火山噴火災害である[3]。噴火警戒レベル1(平常[注 2])の段階で噴火したことなどの様々な要因(後述)により火口付近に居合わせた登山者ら58名が死亡、行方不明5人、日本における戦後最悪の火山災害でもあった[2][5]。
山頂の南西、地獄谷付近の地下にあった熱水溜まりが何らかの原因で過熱(あるいは減圧)したことにより急膨張した結果、突沸し噴出に至った[6]。山頂付近で噴火に遭遇し生還した登山者によれば、「最初の噴出は岩がぶつかるような音で始まり、爆発音はなかった」との証言がある[7]。防災科学技術研究所V-net観測点(田の原上:ONTA・田の原:ONTN)の空振計では、6ヘルツ以下の空振を観測している[6]。
新たな火口は、1979年噴火の火口列の南西250~300m付近の位置に平行に複数個が形成され[8]、最初の噴火では火砕流も発生し、火口南西側の地獄谷を約3キロ程度流下、火口北西側の尺ナンゾ谷にも流れ下ったことが観測された[9][10][11]。
また、降下した火山灰を構成する粒子は大部分が変質岩片で構成され、マグマ由来の成分は検出されていないため、今回の噴火は水蒸気爆発と分析されている。日本国内において噴火災害で死者を出したのは、1991年6月3日の雲仙・普賢岳の大火砕流以来となり[12]、死者数も雲仙・普賢岳の43人を超え、戦後最悪の58人となった[2][5]。東京大学地震研究所助教授で火山学者の金子隆之は、噴石の初速を360メートル毎秒(時速1,296キロメートル、約マッハ1.05)、山頂付近での速度を300メートル毎秒(時速1,080キロメートル、約マッハ0.88)と推定している[13]。
今回の噴火規模は過去に日本で死傷者を出した他の火山噴火規模と比較すると決して大規模なものではなく、火山灰噴出量も2014年現在[13]も噴火を続けている小笠原諸島・西之島の100分の1、1991年の雲仙普賢岳の400分の1でしかない[13]。
噴火の約2週間前から火山性地震が増加していたが、発生していた地震のタイプは2007年と異なり火山性微動は観測されていなかった[15]。しかし、噴火の約11分前と噴火直後の約30分間に北東に11キロ離れた高感度地震観測網の開田高感度地震観測施設(N.KADH)では火山性微動が観測されていた[16]ほか、7分前には傾斜計で山体が盛り上がる変位も観測されていた[10]。
常設の地震計を設置している名古屋大学の観測チームによれば、噴火の前兆として阿蘇山などで観測される特徴的な長周期震動[17]は観測されなかった[18]。
一方、登山ガイドからは「硫化水素が普段より強かった」、山小屋従業員からは「噴気の勢いが強かった」などの証言が報道されている[19]。しかし、別の調査では以前から風向きにより火山ガス臭を感じることがあり、噴火前の状況からは異常を感じなかったとする証言もある[14]。
滝越カメラの記録映像解析により、噴火直後の11時52分に上部斜面と西斜面の2か所でほぼ同時に発生し、地獄谷方向に約2キロと兵衛谷方向に約1.5キロの流下が確認された。谷筋を流下した速度は秒速8 - 20メートル程度で、ある程度の温度はあったと考えられているが、通過箇所の樹木の損傷、火災、炭化が認められないことから樹木を焦がすほどの温度ではなく、火砕流の初期温度は二次噴煙の上昇速度と到達高度などから100℃程度と推定されている[20]。なお、登山道のない側の山腹で噴火し流下したため、火砕流による犠牲者は発生していない。
この火砕流は、4つの経過を経て流下し消滅した[20]。
2014年11月8日、火山噴火予知連絡会御岳山総合観測班地質チームらによる、山頂付近の噴出物の現地状況調査が行われた。調査報告書によれば、山頂付近での噴出物は粘土質火山灰を主成分として最大厚み35センチ、直径20センチから30センチの噴石は火口から北方向に、1.3キロまで到達していた。しかし、噴石の衝突痕跡や堆積物の地質情報は台風などの降雨と捜索活動による攪乱により失われ、採集と調査は凍結により十分に行えなかった。なお、現地調査の結果から、噴出量は前回1979年と同等の50万トン程度(噴火直後予測値の下限)とされた[14]。
現地調査に先立った2015年6月2日には、マルチコプター式無人機による火山性ガス(H2S、SO2、CO2、H2)濃度と温湿度調査が行われ、前回11月の無人機による調査と比較し、高温火山ガスの温度低下と噴出量減少が示唆されるデータが得られていた[21]。
6月10日の火山噴火予知連絡会御嶽山総合観測班地質による現地調査では、前回の2014年11月8日の調査で立ち入っていない田の原から剣ケ峰にかけての、噴出物の分布と堆積状況の調査が行われた。報告によれば、雪解けと風雨による噴出物の浸食が予想されたが、おおむね2014年11月の状況と大きく変わらない状態で堆積物が残っていた。粘土質火山灰を主体とした噴出堆積物は王滝口9合目付近で 1.5センチ、王滝頂上および奥の院で 8センチ、八丁ダルミ周辺で急速に厚さを増し30 - 40センチであった。なお、八丁ダルミから剣ヶ峰間および奥の院周辺は火山岩塊サイズの噴石を多く含み、王滝頂上から奥の院間では長径45センチ程度の噴石があった[22]。また、八丁ダルミ付近での噴石の密度は、1平方メートルに直径10センチ以上の噴石の跡が1個以上あったとする見解が報道されている[23]。
噴火警戒レベル1への引き下げ(「時系列」参照)を受けて、長野・岐阜両県と山麓自治体の職員ら約20人で構成された御嶽山火山防災協議会のチームが8月29、30両日に火口付近を調査した。火山灰が一ノ池周辺の登山道では最大70センチ程度、山頂付近では10 - 20センチ程度積もり、山頂付近の半ば崩壊した山小屋内部にも入り込んでいた[24][25]。
下記は特に明記しない限りすべて日本時間で表記する。
当日午後に首相の安倍晋三が噴火災害に伴う救出活動のため自衛隊の派遣を指示、首相と全閣僚が出席して首相官邸で対策会議を開き、関係機関が一体で救助に取り組む方針を確認した[50]。
9月27日に長野県内の消防からは地元の木曽広域消防本部から約60名と県内13消防本部(木曽広域消防本部を除く県内すべての消防本部)から約100名が出動[46]、愛知県、静岡県、東京都および山梨県4都県の消防本部からは長野県の27日20時30分緊急消防援助隊出動の要請を受け、合計50隊214名体制が出動した[32]。このうち東京都隊の東京消防庁は、ハイパーレスキュー隊や山岳救助隊など合わせて緊急消防援助隊51名を現地に派遣した[51]。
岐阜県警察山岳警備隊の3人は登山客・山小屋従業員・下呂市山岳救助隊とともに山小屋の五の池小屋に残留[32]、翌28日朝、山小屋管理人および負傷者を含む登山客とともに下山した[52]。
飛騨頂上南にある山小屋の五の池小屋は27日の噴火直後から緊急の避難小屋として機能し、付近の子どもも含む登山客を屋内避難させ、翌28日には管理人も含む26人が全員無事に下山した[52][53]。26人の中には重傷者2名が含まれ、鎖骨を骨折した女性1名は先に岐阜県警察ヘリで救助[32]・岐阜県高山市の病院へ搬送され、左腕を骨折した男性1名は他の24名とともに自力で下山した[54]。同じく山頂付近の山小屋「二ノ池本館」も逃げ込んで来た登山者約50人にヘルメットを配布[55]、1時間後に噴火が小康状態になるのを待って9合目の山小屋「石室避難小屋」へ誘導、すでに避難していた100人近くと現場で合流した[56]。
朝から警察・消防・自衛隊が合同550人態勢で救助を開始、昼前に山頂付近へ到着[57]。山頂へ、ヘリコプターによる救出も含め27人を救助した[58][注 3]ほか、前日山頂付近岐阜県側の山小屋に取り残されていた子どもも含む登山者たち25人が朝から自力で下山を開始、岐阜県下呂市の登山口に到着した[57]。また、長野県警察本部発表によると山頂付近で多くが火山灰に埋もれた心肺停止状態の31人を発見、山頂付近で有害な火山ガスが確認されたことから28日の捜索を14時に打ち切り[58]、救出活動を中断した[57]。このほか、27日中から山小屋で一晩を過ごした登山者などはすべて下山が完了した[59]。
気象庁では、地震火山部が「御嶽山 火山の状況に関する解説情報 第11号」で、9月27日11時から24時までに発生した火山性地震の合計回数が353回であったことを発表[60][32]。また気象庁機動調査班が陸上自衛隊ヘリに同乗、上空から火山活動の状況を確認したほか、火山性ガスの観測を実施[32]。16時には火山噴火予知連絡会拡大幹事会を開催[32]、噴火を「水蒸気爆発」と判断し[13]、見解を19時ごろに発表した[32]。また、上空からの現地調査時に樹木の焦げた痕跡などを確認できなかったことから流れ下った噴煙の温度は低いとして火砕流とは認識していなかった。19時30分に行った火山噴火予知連絡会での会見時にはこれを翻し、低温火砕流であるとして噴火警報(火口周辺警報)に火砕流を追加[61]、対象市町村を長野県王滝村・木曽町、岐阜県高山市・下呂市の4市町村とした[32]。
12時41分に長野県は災害派遣精神医療チーム(DPAT)の派遣を決定。28日18時30分現在のDMATの派遣状況として、長野県側34チーム(長野県庁3、長野県立木曽病院28、信州大学医学部附属病院3)、岐阜県側2チーム(岐阜県庁1、岐阜大学医学部附属病院1)を報告[32]。
17時00分に長野県庁に内閣府大臣政務官の松本洋平を本部長とする非常災害現地対策本部を設置[32]。
政府は御嶽山噴火に関する非常災害対策本部を設置、災害対策基本法に基づき、関係省庁会議を格上げした[62]。午後には内閣府副大臣の西村康稔を団長とする調査団5名が現地をヘリで上空から視察し、長野県庁で阿部守一長野県知事に面会、全面協力を約束した[62][63]。また多数の犠牲者・行方不明者の存在に対し災害対策基本法を適用、御嶽山噴火非常対策本部を28日17時に設置。噴火に関する各省庁の対応状況の報告および今後の見通しについてを議題とした[64]。
9月30日の救助隊人数は陸上自衛隊・警察・消防合同で後方支援も含めて850人態勢、徒歩とヘリコプターによる空中支援で山頂の救助活動を行う予定だったが、早朝から再開していた救助作業を7時過ぎに中断。気象庁によると29日19時20分から30日1時15分まで火山性微動の大きな振幅が続き[15]、いったんは収まったが6時12分より再び大きくなり、この振幅は27日夜と同程度と断定、長野県災害対策本部は再び噴火が起こるおそれがあるとして救助の中断を決定した[70]。
12時15分に地上での、14時20分にヘリでの捜索活動を中止している[13]。
出動していた長野県・岐阜県両県のDMAT合計27チームは30日14時に活動を終了[32]。
10月1日は自衛隊(陸上自衛隊・航空自衛隊)、消防、警察合わせて1,000人規模の態勢で救出救助・捜索活動を実施[32]。これまで発見された心肺停止の被災者については、陸自ヘリや空自救難隊によりふもとへと搬送された[71]。土砂災害、ライフライン、通信、道路などの状況については各省庁からの報告により被害がないことが確認された[32]。また、1日は岐阜県側でも男性1名が取り残されているとの情報から岐阜県警、下呂市消防本部、高山市消防本部、下呂市山岳救助隊が捜索するも、有力な情報を得られず捜索を断念した[72]。
気象庁地震火山部火山監視・情報センターは10月1日19時ごろ以降の火山性微動は検知できない程度の大きさになったことを報告している[73]。
10月2日はヘリサットを搭載した東京消防庁航空隊の消防ヘリコプターによる捜索救助および情報収集を実施[32]。11時35分に雨のため捜索中止[13]。死亡が確認された47人全員の身元が判明した。
平成26年台風第18号の影響で10月6・7日の捜索は2日連続で中止[74]、1週間後の10月13・14日も平成26年台風第19号の影響で捜索は中断した[75]。
10月15日には捜索が再開されたが天候不良のため午前11時に捜索中止、この10月15日には山頂で約1センチの初冠雪が確認された[76]。
10月16日14時28分[13]、長野県災害対策本部および岐阜県火山災害警戒本部は「山頂付近での積雪などにより二次災害の危険が強まった」として、同日で捜索を打ち切った(捜索再開は2015年春以降の見通し)[77]。19時30分、阿部守一長野県知事は長野県庁の記者会見で「やれることはすべてやり尽くした」とのコメントを発表[13]。
9月28日から10月3日までの救助・捜索にあたった人数の推移は次の通りであった。
警察 | 自衛隊 | 消防 | |
9月28日[32] | 約240 [32] | 約270[78] | 約470[79] |
9月29日[32] | 約380 [32] | 約380[80] | 約420[79] |
9月30日[32] | 約480[32] | 約380[81] | 約390[79] |
10月1日[32] | 約700[32] | 約390[82] | 約410[79] |
10月2日[32] | 約700 [32] | 約330[83] | 約370[79] |
10月3日[32] | 約700[32] | 約330 | 約390[79] |
2015年6月の合同調査隊による事前調査の捜索計画では、6月中旬に長野県警や火山学者などで編成する調査隊が山頂付近の火山灰の状況などを確認し、7月にまず先遣隊が現場を調査、7月中旬には長野県警と県内消防の捜索隊による捜索が再開されるとしている[85]。
長野県で9月27日、白菜畑18ヘクタールに降灰が確認されたのをはじめとして、被害調査を開始した[110]。同日、長野県庁農業技術課による火山灰対策に関する技術対策文書が公開。降灰による農作物への被害は相当長い期間続くおそれがあるとして対策を指導した[111]。
御嶽山に近い長野県木曽町観光協会では2014年10月4日・5日に開催を予定していた開田高原そば祭り、木曽駒高原きのこまつりの2イベントを噴火に伴う影響を原因として28日に中止を発表した[112][113]。
同じく御嶽山の麓にある開田高原では、噴火の影響で観光客が激減した[114]。降灰は1ミリあった程度だが、開田高原が閉鎖されたかどうかの問い合わせが相次ぎ、風評被害を心配し急遽公式HPを更新した[114]。王滝村の旅館でも10月の予約客200人以上がキャンセルされた[114]。
スキー場のうち、チャオ御岳スノーリゾート(岐阜県高山市高根町)ではスキー場に被害は及んでおらず、2014年11月29日にオープンした[115]。おんたけ2240(長野県王滝村)については、ゲレンデのほぼ半分が入山規制区域となったため2014年12月5日の営業開始を断念することを決めたが[116]、2015年1月19日に気象庁が御嶽山立入禁止区域を火口4キロからおおむね3キロに変更したことを受け、同年2月26日から営業を開始した[117]。
王滝村では住民の約7割が観光業に携わっており、影響の広がりが懸念されている[118]。
噴火警戒レベルが引き下げられて入山規制範囲が狭められるとともに、登山可能な範囲が広がった[119]。これに伴い、営業を休止した山小屋の一部(行場山荘、女人堂、五の池小屋)が2015年に営業を再開した[120]。黒沢口登山道9合目上にある山小屋「覚明堂」は廃業することになった[120]。
御嶽山は古くから霊山とされ山岳信仰の対象であり、御嶽神社に縁がある神社が全国各地に存在する。今回の噴火で霊山での犠牲者が発生し信者に心痛が発生したとし、全国から義援金が集められた[121]。
政府は2014年10月17日、今回の噴火災害と同年8月に発生した広島県広島市での土砂災害を受け、中央防災会議に新たに2つのワーキンググループを設けて災害対策の改善を進めることを発表した。その中で火山情報の通知の遅れ、避難シェルターの整備の遅れや避難勧告の発表の遅れなどの対策不備について触れた[122]。
また噴火時に登山届未提出の登山者が多く、行方不明者の把握に手間取り、捜索に支障が出た。これを教訓とし、常時監視対象となっている47火山の地元自治体に対し、登山届の提出義務化の検討を求める方針を決定した[123]。
栃木県では御嶽山噴火を受け、栃木県警が10月9日、那須町の茶臼岳で初の火山噴火を想定した救助訓練を実施した[124]。
静岡県・山梨県にまたがる富士山でも御嶽山の噴火を受け、噴石から逃れるための避難シェルターの整備を検討することを静岡県知事の川勝平太が10月14日の定例記者会見で明らかにした。山梨県知事の横内正明も同案の検討を表明している[125]。
また、富士山のふもとにある山梨県富士吉田市も火山防災専門対策室を新たに設置した[126]。
東京都多摩地域の在日米軍横田基地は9月27日、降灰の影響に備えるように在日米軍に警告した[127]。激しい降灰中には車両の使用を控え、火山灰を車両の空気取入口が吸入しないようにする措置を講じるとともに、清掃作業に従事する際は防護具を着用しなければならないとした[127]。この中で、火山灰は非常に強い研磨性があり、タービンその他のエンジンに損傷を与える可能性があることを指摘、2010年のアイスランドの噴火とそれによって生じた航空機の大混乱を引き合いに出し、横田基地施設関係者および近隣住民は降灰予報が変更され影響を受ける可能性が出てきた場合、暖房器具やエアコンを止める準備をしておくべきであるとした[127]。
日本国外メディアは多くが9月28日(世界標準時)に速報を出しており、英国放送協会(BBC)は「43人が死亡した1991年の雲仙・普賢岳の噴火以降初となる日本での噴火死者発生であり、噴火前になぜ警報が出されなかったのかはっきりしていない」、AP通信は「救助隊が30人以上の意識不明者を山頂付近で確認」、ABCニュースは「7人救助、32人行方不明」[106]、ロイターは「火山噴火により死者1名、30名以上負傷」[128]、CNNは「日本の火山で噴煙により31人が死亡」[129]などと報じた[107]。
9月29日、駐日アメリカ合衆国大使キャロライン・ケネディが噴火の被災者に対し犠牲者の冥福を祈る声明を発表[130]。9月30日には韓国外交部長官(外相)の尹炳世が外務大臣岸田文雄に見舞いのメッセージを送った[131]。
噴火後、インターネット上で「民主党政権が2010年に行った事業仕分けで御嶽山が観測強化の対象から外されたことにより今回の被害が生じた」との情報が流布し、同党や火山監視に関する事業仕分けに携わった経済評論家の勝間和代が批判を受けるという事態が生じた。しかし実際には御嶽山の監視縮小を事業仕分けで議論したことはなく、また事業仕分け後も24時間の監視体制が維持されており、上記の情報は事実と異なっていた[132][133]。
その後、これらは事実無根の捏造情報であると判明した[132]ものの、当時の自民党参議院議員片山さつきはこの事実誤認の情報に絡み自身のTwitterにて同趣旨のツイートを発信し[134]、事実誤認を指摘する民主党と自民党の間で紛糾が発生[135]。最終的に2014年10月2日に片山が民主党側に謝罪し問題のツイートを削除、民主党はこれを受け入れ決着した[136]。
ただ、1979年10月28日に御嶽山が噴火したことを受け、1980年に国立防災科学技術センター(現防災科学技術研究所)の調査報告書でシェルター等の緊急避難用設備が設置する必要があると言及されていた。
2015年9月26日、ふもとの長野県王滝村にて犠牲者の遺族32家族が作る「山びこの会」が追悼式を行った[137]。
また、2016年7月24日には被災者家族会により初の慰霊登山が行われ、10家族25人が長野県木曽町側から入山し8合目山小屋の女人堂で献花台に手を合わせた[138]。
王滝村にある松原スポーツ公園では、噴火3年目となる2017年9月27日に慰霊碑の除幕式と追悼式が行われた[139][140]。
噴火災害から8年後の2022年9月27日に故安倍晋三国葬儀が行われたが、同じ日に行われた御嶽山噴火の追悼式を優先するため阿部守一知事は国葬を欠席した[141]。
噴火自体は他山の例と比較した場合小規模[55]で、1979年にほぼ同じ場所で発生したほぼ同規模の爆発では1人の死傷者も出さなかったにもかかわらず、今回は日本国内では1991年の雲仙普賢岳以来、死者数は戦後最悪となる多数の人的被害を出し[1]、登山客が巻き込まれたものとしては明治以来最悪となった。これは、被害を増大する複数の要因が重なったためであった[142]。
犠牲者5人の遺族は、国家賠償法に基づき国と長野県に対し総額1億5,000万円の損害賠償を求める訴訟を、2017年1月25日に長野地方裁判所松本支部に起こした[161][162]。
原告側は訴状で、気象庁などは噴火警戒レベルを1から2に引き上げる基準のひとつとして「火山性地震の回数が1日50回以上あったこと」を規定していたが、実際には噴火前の2014年9月10日に52回、翌11日に85回の火山性地震を観測したにもかかわらず、噴火警戒レベルを引き上げることを怠ったことで、当日の噴火により山頂一帯にいた登山者が犠牲になった主原因のひとつとなったと指摘している[162]。
また、長野県木曽建設事務所は気象庁との協定に基づいて御嶽山の火山活動の一部を適切に観測する義務を負っていたにもかかわらず、御嶽山の2地点に設けた地震計の故障を知りながら放置し、故障が適切に修理されていれば噴火警戒レベルは上げられたと指摘している[162][163]。
初弁論は2017年3月16日に行われ、原告側は遺族2人が意見陳述した[164][165]。
一方で、国と県は2017年5月19日に提出された準備書面で「1日50回以上は(基準の)目安」「(噴火警戒レベルを引き上げなかったのは)噴火履歴やデータを考慮して総合的に判断した結果」「地震計の故障は放置していたわけではなく定期的な保守点検は実施していた」などとして原告側の訴えに反論し、請求の棄却を求めていく方針を示した[163]。
その後、2017年5月29日には噴火で負傷した負傷者2名も新たに原告団に加わり、1人あたり300万円の賠償を求める方針であることが報じられた[166]。
2022年7月13日、長野地方裁判所松本支部は、遺族ら32人が国と長野県に計3億7600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で原告側の請求を棄却した[167]。
中央防災会議・防災対策実行会議の火山防災対策推進ワーキンググループが2015年(平成27年)3月に取りまとめた「御嶽山噴火を踏まえた今後の火山防災対策の推進について(報告)」と同年7月に一部が改正された活動火山対策特別措置法に基づき、長野県は2016年(平成28年)6月に「長野県火山防災のあり方検討会」を設置した[168]。2017年(平成29年)2月に「長野県火山防災のあり方検討会報告書」が取りまとめられ、ビジターセンターの設置が有効という提言を受けて御嶽山ビジターセンターが設置されることになった[168]。
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