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注射剤(ちゅうしゃざい、Injections)とは、注射針を用いて皮内、皮下の組織または血管内などに直接投与する液状または用時溶解して液状にして用いる医薬品の製剤である。
物理的性状により以下のように分類される
通例注射剤には、有効成分、溶媒の他に以下のような添加剤が加えられている。着色料の使用は認められていない。
一般的なアンプル入りの水溶性注射剤の製造工程について記す。
バイアル入りの場合は、『熔封』が『打栓』になる。固形注射剤は、一般的に充填の後に凍結乾燥の工程が入る。プラスチック容器入りの生理食塩水などでは、充填と同時に容器形成を行う場合もある。滅菌は加圧加熱滅菌が一般的である。熱により成分が変成してしまい加熱滅菌できないものは、充填前に濾過滅菌を行う。
注射剤の容器は、薬剤に対し安定でかつ無菌性を確保できるものが求められる。ガラス製のアンプルやバイアルが一般的だったが、近年はプラスチック容器が増えてきている。
注射剤はまず無菌であることが求められる。このため製造工程中で滅菌してあるが、原料が細菌汚染されていた場合、菌が死滅しても菌の産生した毒素が残っている場合があり、そういったものも注射剤としては使えない。この毒素は、発熱性物質(pyrogen)と呼ばれるものの一種で、発熱性物質にはこのほかに容器などに由来するものもある。また、不溶性異物がないこと、浸透圧やpHが血清とほぼ等しいこと、組織障害性がないことなどが求められる。
注射剤、特に輸液は複数の薬剤を混合して使用することが多い。この注射剤を混合調整することを一般に混注という。
輸液の場合は、リンゲル液などの基本となる製剤に、利尿剤、抗生物質、栄養剤などが加えられる。従来は病棟で看護師が調整することが多かったが、保険適用になったことから調剤室で薬剤師が行うことが増えてきている。特に抗がん剤は、被曝の危険性を考慮して安全キャビネットと呼ばれる装置内で混合することが望ましい。
注射剤を混合する時には、沈殿を生じたり有効成分が分解されてしまうなどの配合変化を生じることがある。
注射剤を患者に投与できるのは原則医師および看護師に限られる。ただし、近年インスリンなどのように毎日投与が必要なものについては、患者が自己注射する注射剤がある。これは、ディスポーザブルの注射器の出現により可能になった。
当初は、普通の注射器を使いバイアルから1回ごとに薬液を取り使用していたが、現在では薬液の入ったカートリッジを装填し、針を交換することで連続して使用できるペン型注射器が普及している。ペン型注射器には、本体が再利用できるものとディスポーザブルのものがある。自己注射用の注射剤としてはインスリン製剤のほかにヒト成長ホルモン剤やヒト血液凝固因子製剤などがある。
消化器官を通らないため効果の発現が早く、投与量も少なくてすむ。消化管から吸収されにくいものや消化や代謝を受けることで効果が無くなるものも投与することができる。また、患者に意識が無くても投与が可能である。
欠点としては、投与するのに器具が必要なこと、一部を除き患者自ら使えないこと、痛みや注射部位の硬化などの苦痛を与えること、副作用が発現しやすいこと、感染があることである。
ヒトの血液由来の製剤には、感染症を起こす微生物が混入していることがある。特に生活に困窮している者の売血を原料とした場合に、病原微生物の混入の可能性が高くなる。タンパク質やペプチドの製剤は加熱すると、変質してしまうため滅菌することも困難である。これらのことから薬害エイズ事件など注射剤由来のウイルス感染症が発生している。そのため献血者の選択や、原料血の検査、低温加熱によるウイルスの不活化などが行われているが、感染のリスクを完全に払拭できるものではない。
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