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『時の車輪』(ときのしゃりん、The Wheel of Time)は、ロバート・ジョーダン著の長編ファンタジー小説シリーズである。
14部で完結している。ジョーダン存命中には第11部までが刊行されており、第12部『A Memory of Light』で完結予定だったが、2007年9月16日にジョーダンが逝去した。そのため、第12部はジョーダンの遺した原稿・草稿などを元にブランドン・サンダースンにより執筆されることとなった。
第12部『A Memory of Light』は1巻で刊行が予定されていたが、執筆者と出版社との合意により3巻に分割して出版することとなり、『飛竜雷天』(The Gathering Storm)は2009年10月に、『Towers of Midnight』は2010年11月に、最終巻『A Memory of Light』は2013年1月に出版された。
日本ではハヤカワ文庫FTより刊行されている。翻訳は斉藤伯好、のちに月岡小穂。表紙および挿絵は加藤俊章。1巻の本を文庫で分冊されて出版されている。2021年8月時点で、シリーズ最後の2巻だけが未訳である。
本シリーズはヨーロッパおよびアジアの神話から多くの要素を借りており、とくにヒンドゥー教と仏教から時間の円環性を、道教からは二元論を、そしてキリスト教からは創造神と破壊神の観念をとりいれている。また、レフ・トルストイの『戦争と平和』の影響も見られる。
本作品の特徴は、その長さ、想像上の世界の詳細、丹念に考えられた魔法の体系、そして登場人物の多さである。第8巻から第14巻まではニューヨークタイムズのベストセラーのハードカバー部門一位に輝いている。世界中でシリーズ累計8000万部を売り上げている[1]。
本シリーズの架空の神話においては、かつて〈創造主〉として知られる神性が全界と〈時の車輪〉を作りだした。〈車輪〉には7つの車軸があり、それぞれが一つの時代に対応する。〈男性源〉と〈女性源〉に分かれる〈万物源〉から流れ出る〈絶対力〉のもとで車輪は巡る。〈絶対力〉をふるえる者は〈異能者〉(アエズ・セダーイ)と呼ばれる。
〈創造主〉は、〈闇王〉とも呼ばれる敵シャイ・タンを創造の瞬間に牢に閉じ込めた。だが、〈伝説の時代〉あるいは〈第二紀〉とも呼ばれる時代に、ある〈異能者〉の実験の結果、〈闇王〉の力が部分的に世界に漏れ出した。〈闇王〉は美しく、強力で、野心にあふれた者たちを味方につけ、彼ら闇の勢力は〈闇王〉を牢から解き放とうとした。その引き換えに、〈闇王〉は力と不死を約束した。だが闇の勢力の中にも、〈闇王〉を解き放つことは〈時の車輪〉の崩壊と存在そのものの否定となると恐れるものもいた。
この脅威に対して、〈車輪〉は光の代表として〈竜王〉ルーズ・セリン・テラモンをこの世に生み出した。全界を巻きこむ戦争ののち、〈竜王〉は男性〈異能者〉からなる百人部隊を結成して〈闇王〉を牢獄に封じ込めた。だが〈闇王〉が〈男性源〉を汚したため、〈絶対力〉をふるう男性たちは狂気に襲われ、世界は地震と津波によって破壊された。これを〈全界崩壊〉と呼ぶ。
この狂気の中で〈竜王〉はすべての友と親族を殺し、“親族殺しのテラモン”と呼ばれることになった。〈闇王〉に使える者の長であったイシュマエルによって束の間正気を取り戻し、〈竜王〉は自分が何をしてしまったのかを理解した。悲しみのうちに自らの能力を超えた〈絶対力〉を〈万物源〉から引き出して自殺を図った。
残された男性の〈異能者〉は死ぬか〈万物源〉から切り離された。世界は姿を変え、人々は故郷を離れることを余儀なくされ、文明は崩壊した。今や女性だけが〈万物源〉から〈絶対力〉を引き出すことが可能となった。この女性の〈異能者〉たちは暗黒の時代に人々を導き社会を再建した。絶対力をふるえる男たちは、いずれ狂気に陥るために恐怖の的となり、竜も呪われた存在となった。女性の〈異能者〉の中には、そのような男たちを探し出し、〈絶対源〉から切り離すことを使命とするものが現れた。これは3500年ほど前の出来事である。
その後は文明の興亡を繰り返した。多くの国と文明が興隆し、滅亡した。二つの歴史上の出来事が全ての文明に影響を与えた。最初のものは〈トロローク戦争〉と呼ばれる。闇の勢力が文明を破壊しようとしたが、〈異能者〉に指導された国家間の同盟によって終結した。第二のものは鷹羽王アートゥルにより治められた大陸全体にわたる帝国が崩壊した後の内戦であった。
これらの戦争のため、人類は伝説の時代の力と技術を再び手にすることはなく、統一されることもなかった。〈異能者〉の権威も数も減じ、あらゆる〈絶対力〉を敵視する〈光の子〉のような組織も生まれた。
物語の40年ほど前、マルキア王国が闇との戦いに敗れ、〈大荒廃地〉に呑み込まれた。
また20年ほど前には〈アイール戦争〉が勃発した。西方の王からの恥辱に怒った戦士部族のアイール人たちが国境を超え、西方の王国間の同盟と戦ったものである。突如としてアイール人たちはアイール荒地に戻ったが、これはアイール人が敗北したとも、あるいは復讐を果たしたためであるともいわれる。
いずれ〈闇王〉が牢から自由になり、〈竜王〉が再来し、世界を救うために再び世界を崩壊させると言う予言のもとで人々は生きる。
シリーズの前日譚である『新たなる春』では、アイール戦争の間に〈竜王〉が再来するという予言が成就したことを〈異能者〉が発見している。若き日のモイレインを含む〈異能者〉たちが、生まれたばかりのその子を闇の手先より先に見つけようと派遣される。
20年後、アンドール国のほとんど忘れ去られた一角にあるトゥーリバーズでシリーズは始まる。闇の手先がある若者を探していることを密かに知り、〈異能者〉モイレインとその〈護衛士〉ランがエモンズフィールド村に謎の訪問をする。モイレインはランド・アル=ソア、マット・コーソン、ペリン・アイバラのうち誰が〈竜王〉の再来なのかを決めかね、三人全員とその友人のエグウェーン・アル=ヴィアを村から連れ出す。村の異例なほど若い〈賢女〉であるナイニーブ・アル=メアラは後に合流する。男たちは何故モイレインが二人の女性を伴ったのか訝るが、やがて二人が〈異能者〉の素質を持つことを知る。謎にみちた吟遊詩人トム・メリリンもまた旅を共にする。第一部は、旅の一行が闇の手先から逃げて〈異能者〉の都であるタール・ヴァローンへと脱出することを描く。
その後は、中心人物たちが散り散りとなって、闇との戦いのために個々の使命を追求することになる。闇の勢力に対抗して西方の諸国を団結させようとするが、その権力を手放そうとしない支配者たちとの軋轢を生み、またあらゆる予言を信じようとしない〈光の子〉や、鷹羽王アーテゥルの海を渡った子孫であるショーンチャン人の帰還によって妨げられる。〈異能者〉たちも、前の指導者シウアン・サンチェを退位させ、新指導者としてエライダを選んだことにより、分裂する。物語が進むにつれ、新たな登場人物が加わり、〈最後の戦い〉(ターモン・ガイドン)が避けられないことが明らかになる。
〈最後の戦い〉が来ることが予言され恐れられている。これは闇と光の戦いである。もしも闇が勝てば、〈時の車輪〉は壊される。光が勝ったとしても、戦いの結果は〈全界の崩壊〉と並ぶ大惨事を引き起こすと恐れられている。
物語が進むにつれ、ランド・アル=ソアの死が〈最後の戦い〉を避けることになると信じる者たちや、ランドを確保することが戦いを勝つことにつながると信じて、彼を捕えようとする者たちが現れる。〈闇セダーイ〉の中には、ランドが〈最後の戦い〉に姿を現すことが〈闇王〉の勝利につながると考え、ランドの命を守ろうとするものも現れる。
少数の人間は、〈万物源〉から〈絶対力〉を引き出すことが出来る。〈万物源〉は、〈男性源〉と〈女性源〉に分かれ、男性は前者、女性は後者から〈絶対力〉を引きだすことができる。女性の〈異能者〉はサークルを作り〈絶対力〉を強めることが出来る。だが男性の〈異能者〉の介在なしには、その数は13人に限られる。
シリーズの初期においては、3500年前に〈男性源〉が〈闇王〉によって汚されており、これに触れる男性の〈異能者〉はいずれ狂気に冒され死ぬ運命にあった。このために、女性の〈異能者〉たちは彼らを捜し出し追いつめて、〈万物源〉から切り離す“飼いならし”を行うか、あるいは殺すことになる。
2018年10月、Amazonビデオで『ホイール・オブ・タイム』のTVシリーズ化が決定したと発表された[2]。2019年秋には撮影が開始された。2021年11月19日から配信されている[3]。シーズン1配信前からシーズン2の製作が決定しており[4]、シーズン2は2023年9月1日から配信された[5]。さらに、2022年7月には第3シーズンの製作も決定した[6]。
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