弾性線維
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弾性線維(だんせいせんい、英: elastic fiber)、弾力線維(だんりょくせんい)またはエラスチン線維(エラスチンせんい)は、タンパク質(主にエラスチン)の束から構成される、細胞外マトリックスの必須の構成要素である。線維芽細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、気道上皮(英語版)細胞などさまざまな細胞種から産生される[1]。弾性線維は何倍にも伸長することができ、また弛緩した場合にはエネルギーを喪失することなく元の長さに戻ることができる。弾性線維にはエラウニン(英語版)、オキシタラン線維も含まれる場合がある。
弾性線維はエラストジェネシス(elastogenesis)と呼ばれる過程によって形成される[2][3]。この過程はきわめて複雑であり、ファイブリン4(英語版)、ファイブリン5(英語版)、LTBP4、MFAP4(英語版)など、いくつかの重要なタンパク質が関与する[4][5][6][7]。弾性線維の可溶性単量体型前駆体であるトロポエラスチンは、エラスチン生成細胞によって産生されて細胞表面へ送られる。細胞から分泌された後、トロポエラスチンは直径約200 nmの粒子へと自己重合する。この過程はコアセルベーションと呼ばれ、トロポエラスチンの疎水性ドメイン間の相互作用を伴うエントロピー駆動過程であり、グリコサミノグリカン、ヘパラン硫酸やその他の分子によって媒介される[8][9][10]。こうした粒子はさらに融合して直径1–2 μmの球状となり、細胞表面から移動しながら成長を続け、フィブリリンからなるミクロフィブリルの足場に沈着する[1]。
ミクロフィブリル上に沈着したトロポエラスチンは、リジルオキシダーゼ(LOX)ファミリーやLOX様銅依存性アミンオキシダーゼファミリーのメンバーによって広範にわたって架橋反応が行われることで不溶化し、無定形エラスチン(amorphous elastin)となる。無定形エラスチンはきわめて弾力性の高い不溶性ポリマーであり、ヒトの一生を通じて代謝的に安定である[1]。これら2つのファミリーの酵素はトロポエラスチンに含まれる多くのリジン残基と反応し、酸化的脱アミノ化(英語版)によって反応性アルデヒドやアリジンを形成する[11]。
こうした反応性アルデヒドやアリジンは他のリジンやアリジン残基と反応し、デスモシンやイソデスモシン(英語版)、その他多くの他官能性架橋を形成し、周囲のトロポエラスチン分子を連結して広く架橋されたエラスチンマトリックスを作り出す。この過程によって多種多様な分子内・分子間架橋が形成され[12]、エラスチンの耐久性や持続性に寄与している。架橋型エラスチンの維持は、LOXL1(英語版)などいくつかのタンパク質によって担われている[13]。
成熟型弾性線維は無定形エラスチンのコアからなり、グリコサミノグリカン、ヘパラン硫酸[14]、そしてミクロフィブリル結合性糖タンパク質、フィブリリン、ファイブリン(英語版)、エラスチン受容体(英語版)といったタンパク質に囲まれている。