実射影直線
初等幾何学において直線の概念を拡張したもの / ウィキペディア フリーな encyclopedia
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初等幾何学における実射影直線(じつしゃえいちょくせん、英: real projective line)は、通常の直線の概念の拡張で、歴史的には透視図法に基づいて設定された問題を解決するために導入された。例えば平行線は決して交わらないが、透視図では「無限遠」で交叉するように見える。この問題の解決に際して無限遠点が導入され、そうして得られた実射影平面(英語版)において、相異なる二つの射影直線はただ一点のみで交わる。このような無限遠点全体の成す集合は、平面透視図法における「地平線」であり、それ自身がひとつの実射影直線となる。これは任意の点に位置する観測者から発せられた方向を持つ円の、反対にある点を同一視したものである。実射影直線のモデルとして射影補完実数直線(英語版)がある。透視図に地平線を表す直線を描くことで、無限遠に余分な点が地平線へ伸びる平行線の集まりを表現するために追加される。
厳密には、実射影直線は実数体上二次元のベクトル空間内の一次元部分線型空間全体の成す空間として定義される。これにより、2 × 2 の正則行列全体の成す一般線型群が自然に作用する。このとき中心に属する行列の作用は自明となるから、射影一般線型群 PGL(2, R) もまた射影直線に自然に作用する。これらは射影直線上の幾何学的変換群である。射影直線を実数直線位無限遠点を加えたものとして表すとき、射影線型群の元は一次分数変換として作用する。これら実射影直線上の変換は射影変換と呼ばれる。
位相幾何学的には、実射影直線は円周に同相(位相的円周)である。実射影直線は双曲平面の境界を成すが、双曲平面上の任意の等距変換は境界である実射影直線上の幾何学的変換を一意的に誘導し、逆もまた成り立つ。さらに言えば、双曲平面上の任意の調和函数は、等距変換群の作用と両立する仕方で、射影直線上の分布のポワソン積分として与えられる。この位相的円周上には無数の両立可能な射影構造を持ち、そのような構造を持つ空間は(無限次元)普遍タイヒミューラー空間(英語版)と呼ばれる。実射影直線の複素数版は複素射影直線、いわゆるリーマン球面である。