Loading AI tools
廃物を微生物に分解させて作った肥料 ウィキペディアから
堆肥(たいひ)とは、易分解性有機物が微生物によって完全に分解された肥料あるいは土壌改良剤のこと。有機資材(有機肥料)と同義で用いられる場合もあるが、有機資材は易分解性有機物が未分解の有機物残渣も含むのに対し、堆肥は易分解性有機物が完全に分解したものを指す。
英語ではコンポスト (compost) と呼び、本項でも堆肥とコンポストを同義として扱う。なお、生ごみ堆肥化容器の生成物である堆肥(コンポスト)が転じて、生ごみ堆肥化容器をコンポストと呼ぶ場合がある。
堆肥が出来る過程は堆肥化を参照。
堆肥には土壌の化学性、物理性、生物性を改善する効果がある[1]。
以上は相互に関連しており、堆肥によって土壌の通気性や保水性など物理性が改善することで微生物の活動環境がよくなる効果もある[3]。また養分を吸着保持し、作物に有害なアルミナや重金属と結合して植物の根を守る効果もある[2]。
生産面では環境に配慮した安全・安心な農産物を求める消費者ニーズに対応することができる効果もある[1]。植物体の活力が高まるため生産物の食味や色、貯蔵性などがよくなる効果もあるとされる[3]。
堆肥化とは堆肥を作ることであり、その定義は「生物系廃棄物をあるコントロールされた条件下で、取り扱い易く、貯蔵性良くそして環境に害を及ぼすことなく安全に土壌還元可能な状態まで微生物分解すること」である (Goluke, 1977) 。あるコントロールされた条件下とは、堆肥化を行う微生物にとって有意な環境を人為的に作ることを意味している。また、有機物分解が不完全な状態では肥料として様々な問題を持つ。これらの問題が起こらなくなるまで人為的に分解を進めることが堆肥化である。
堆肥化微生物の活動を活発にするためには、次の条件を整えることが必要となる。炭素と 窒素のバランス(C/N比)、含水率、pH、温度及び酸素である。上記の条件が最適ではなかった場合、分解速度が落ちたり、製品の品質低下につながり、作物の窒素飢餓を招く。
化学肥料を使って作られる堆肥で、1960年代に地力を維持させるうえで堆肥の必要性が再認識されたことから、無蓄農家で余る藁と市販の窒素肥料を使用して普通より早く腐熟させた堆肥である。
作り方は積み上げる前日までに十分湿らせた藁375㎏に対し、腐熟を促進させる窒素肥料(特に石灰窒素がよい)1.5㎏(重量比250:1)を交互に加えて積み上げ、保温と乾燥を防ぐため被覆し、2-3週間目に一度積み替えかき混ぜ、約6週間ほどで中熟堆肥となる[4]。
家畜ふん堆肥など堆肥の原料は様々で、肥料成分も多様であり、堆肥の使用目的や要求される条件も異なるため、どの堆肥がよいかは作物や土壌の状況に合わせて総合的に判断する必要がある[5]。堆肥を作る立場では流通・散布時の取り扱いやすさが重視されるため、発酵が進み、水分が少なく、手触りがサラサラとしていて、においが少ないほうがよい堆肥とされる[5]。また、堆肥を使う立場では、堆肥の肥料成分や土壌改良効果、安全性、価格や入手面のコストが重視され、堆肥に期待する効果が肥料成分の供給か土壌改良(土壌の物理性の改良)かによっても異なる[5]。
最も堆肥化が行われているものが、家畜ふんの堆肥化である。使用されるのは主に牛ふん堆肥、豚ふん堆肥、鶏ふん堆肥である。
豚ふん堆肥と鶏ふん堆肥は水分が低く、特にりん酸の肥料成分が多いが難分解性有機物含量は少ない(炭水化物は豚ふん堆肥と鶏ふん堆肥で同程度)[6]。豚ふん堆肥と鶏ふん堆肥は肥料系、牛ふん堆肥は土づくり系の資材とされている[6]。
稲わらは堆肥化しやすいがC/N比が60~70程度となるため、窒素源を加えてC/N比を30~40程度まで低下させて腐熟を進行させる必要がある[6]。
もみがらは稲わらに比べて堆肥化しにくく、C/N比調整の窒素源として家畜ふんを用いて腐熟を進行させる必要がある[6]。
リンゴなど果樹の剪定枝をチッパーで粉砕して窒素源として鶏ふんや石灰窒素を混ぜて堆肥化させたもの[6]。
針葉樹のバークを原料にした堆肥で、腐熟が難しい堆肥原料であるが、保水力や保肥力など物理性の土壌の改良効果が高いため利用されている[6]。樹皮だけを発酵させたものと、樹皮に家畜ふんを加えて発酵させたものがある[1]。
ゴミの減量化などを目的として、企業から排出される生ゴミを堆肥化する施設が建設されている。また、一般家庭でもコンポスターを使用して生ゴミの堆肥化が行われている。窒素・リン酸・カリウムの含有はやや低い[3]。さらに、生ごみと共に紙ストローや新聞紙、ティッシュ、段ボールなどをきめ細かくした紙ごみ(感熱紙、ノーカーボン紙、裏カーボン紙、防水加工のされている紙、粘着テープのついたもの、圧着ハガキ以外の紙ごみ)を、そのまま土に還す、もしくは水で少し湿らせて土に還すことができる[7]。
堆肥は動植物性の有機物を原料とする有機質肥料の一種である[8]。有機質肥料には他に動植物質肥料(魚粕粉末、菜種油粕、骨粉など)や有機副産物肥料(汚泥肥料など)もあるがこれらとは区別される[8]。
下肥(しもごえ)は、ほとんどの場合、未加工の人間の廃物(人糞及び人尿)を肥料として用いることを指す。長年日本では野菜等連作を行う肥料として使用していたが、1935年には、神奈川県川崎市で水道水に肥料(糞尿)起源の赤痢菌が混入、大規模な赤痢感染を引き起こした(川崎市の赤痢)[9]こともあり、病原菌等の拡散源になる可能性など衛生面でも問題視される。
厩肥(きゅうひ)とは家畜などの糞尿や敷藁を原料とした肥料の意味である。
Humanureは農業用かその他の目的で、堆肥化されて再利用される人間の廃物を指す新語である。この語はジョセフ・ジェンキンズによるこの有機土壌改良剤の利用を説く1999年の本「Humanureハンドブック」によって知られるようになった。
Humanureは廃棄物処理施設で処理される古典的な下水とは異なり、(下水は工業やその他の発生源から出る廃棄物も含んでいる)糞尿、紙、及び追加の炭素を含む物質(おがくずなど)で構成される。
Humanureは人間から出た廃物が適切に堆肥化されている限りは、作物に用いても人体には安全である。これは、廃物が好熱性の分解が、有害な病原体を除去するまで十分に加熱する、及び/または、新しい肥料が加わってから微生物学的活動がほとんどの病原体を殺すのに十分な時間が経過していなければならないことを意味する。作物に用いても安全にする目的で、しばしば植物毒素を取り除くために二段階目の中温過程が必要になることがある。
Humanureは、下肥(作物に散布される未加工の人間の廃物)とは別のものである。
堆肥と同じ特殊肥料に分類されているため混同されやすいものに乾燥ふんがある[5]。乾燥ふんは家畜のふん尿を乾燥させたままの肥料で、易分解性有機物が多量に残存しており、堆肥と同じように使用すると作物の発芽や生育に悪影響を及ぼすことがある[5]。また、乾燥ふんは吸湿すると強烈な悪臭を発することがある[5]。
堆肥の製造とは、有機物分解のための適切な生態系を創造するということでもある。堆肥化を効率的に行うためには、分解生物群の活動に適切な環境を維持しなければならない。堆肥の原料は、直接的に有機物を分解する微生物に加え、その分解者を捕食する生物にも住処も提供している。また、彼らの排出物も、分解というプロセスの一部である。
分解を行う生物のうち、もっとも直接的に働くのはバクテリア等の微生物である。その中でも、菌類、糸状菌、原生生物、放線菌(分解される有機物中にしばしば白い繊維状に見えるバクテリア)等が重要である。また、ミミズ、アリ、カタツムリ、ナメクジ、ヤスデ、ワラジムシ、トビムシなども、有機物の消費、分解に寄与する。ムカデや他の捕食者はこれらの分解生物を餌とする。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.