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『友情』(ゆうじょう)は、武者小路実篤による初期の小説。1919年10月16日から12月11日に『大阪毎日新聞』に掲載されたのが初出で、1920年4月には以文社より単行本が刊行された。
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本作執筆当時作者は、すでにいくつかの小説および戯曲によって文壇に確固たる地位を得ており、その一方で建設が進んでいた新しき村に移り住み、そこで執筆を行っていた。1920年に単行本が重版されたのに伴って作者は「この小説は実は新しき村の若い人たちが今後、結婚したり失恋したりすると思うので両方を祝したく、また力を与えたく思ってかき出した」と述べている。
新進脚本家の野島は、作家の大宮と尊敬しあい、仕事に磨きをかけている。大宮の方が先に評価を得ていたが、大宮はいつも野島を尊敬し、勇気づけてくれる。
ある日、野島は友人の仲田の妹・杉子に恋をする。かたい友情で結ばれた大宮に包み隠さず打ち明けると、やはり大宮は親身になってくれた。野島が杉子会いたさに仲田の家へ大宮と連れだって行くと、杉子はいつでも自分たちに無邪気な笑顔を向けてくる。野島は、杉子に大切にされている感覚を覚えた。しかし、大宮は杉子にはいつも冷淡だった。
突然、大宮が「ヨーロッパに旅立つ」と野島に告げる。野島は友人と別れる寂しさと杉子を一人占めできる安心感とに悩む。それ以来、杉子とはあまり遊ばなくなる。
野島は大宮が西洋へ旅立って約1年後、思い切って杉子へプロポーズをしたが、断られた。さらに1年程後、杉子は突如ヨーロッパへ旅立ち、その後、大宮から野島へ一通のへんな手紙が届く。そこには「自分の書いた小説を見てくれればわかる」とあった。その小説は、杉子が大宮へ抱き続けていた恋心と、大宮の思いを明かす内容だった。それを読んだ野島は、大宮に贈られ大事にしていたベートーヴェンのデスマスクを叩き割り、大宮に決別と「仕事の上で決闘しよう」と返事を書く。「神よ、救ってくれ。」
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