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国際援助などの債務により債務国、国際機関の政策や外交等が債権国側から有形無形の拘束を受ける状態 ウィキペディアから
借金漬け外交(しゃっきんづけがいこう)は、国際援助などの債務により債務国、国際機関の政策や外交等が債権国側から有形無形の拘束を受ける状態をいう。債務の罠、債務トラップなどとも訳されることがある。友好国間で見られ、債務の代償として合法的に重要な権利を取得する。
この表現は、インドの地政学者ブラーマ・チェラニーによって中国の一帯一路構想と関連づけて用いられたのが最初である[1]。
債務国側では放漫な財政運営や政策投資など(日本でいう)モラル・ハザードが、債権国側では過剰な債務を通じて債務国を実質的な支配下に置くといった問題が惹起されうる。
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2019年6月、福岡市で開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議では、新興国への投資が議題の一つとなり、貸し手と借り手の双方に持続可能性を重視するよう促す「質の高いインフラ投資に関するG20原則」が採択された[2]。
中華人民共和国は、21世紀に入ると走出去の一環として国際間の有償資金援助を増やし[3]、世界最大のアメリカ国債・日本国債[4]の保有国になるなど一時は日本に次ぐ世界第2位の債権国にもなったが[5]、先進国基準のガバナンスやコンプライアンスに反する融資を受け入れた多くの発展途上国では財政規律を無視したインフラ整備等を行ったため、巨額の負債に苦慮することとなった。中国は一帯一路構想を進めていく中で、インフラ投資を通じて途上国を政治的影響力下に置く「借金漬け外交」との批判も起き[6][7]、これを受けて中国は中国・アフリカ協力フォーラムなどで債務免除を行う姿勢を打ち出しているものの対象は最貧国に限定されている[8]。
エチオピアは、アフリカ連合本部のようなランドマークにはじまり、エチオピア初の環状道路や高速道路[9]といった全土の道路の7割[10]、初の風力・水力発電所[11]、初の工業団地[12]、アディスアベバ・ライトレール、グランド・ルネサンス・ダム[13]、新国立競技場アディスアベバ・ナショナル・スタジアム、ジブチ・エチオピア鉄道、アフリカ最大のスマートフォンメーカーとなった伝音科技の携帯電話工場[14]、全土の通信網の整備[15]などといった様々なインフラ投資を中国から受けて経済成長率で世界1位も記録し[16]、大統領(ムラトゥ・テショメ)には中国留学歴[17]もあるなど「アフリカの中国」[18]とも呼ばれており、一帯一路のモデル国家に位置付けられてる国であるが、債務額は国内総生産の59%にも及んでおり、その大半は中国からの融資とみられている[19]。
トルクメニスタンは、永世中立国を掲げる独裁者のサパルムラト・ニヤゾフ大統領が2006年にロシアへの経済的依存を減らすためにウズベキスタン、カザフスタンを経由して中国に至る中央アジア・中国パイプラインの建設で合意し、後継者のグルバングル・ベルディムハメドフ大統領も翌2007年中国国営石油公社(CNPC)とバクチャールィク(Bagtyarlyk)鉱区での生産分与協定(PSA)を締結して天然ガス売買契約に調印し、ガス輸入国としても2011年には中国がロシアを上回る経済における対中偏重が始まり、2017年時点で輸出の約83.2%(65億7,512.6万ドル)を中国が占めた[20]。中国へのガスパイプライン建設で約40億ドルの債務を抱えて経済危機にもなっているために「債務の罠」にあたるとロシアのニェザヴィーシマヤ・ガゼータから評されている[21]。
ベネズエラは、世界最大の原油埋蔵量を保有し、反米的なウゴ・チャベス独裁政権下では中国とベネズエラの関係は石油を媒介として相互補完関係だったものの[22]、チャベスの死と後継者のニコラス・マドゥロの失政と石油価格の暴落によってベネズエラの経済は崩壊し、ベネズエラ最大の債権国である中国は200億ドルの損失を出したことから「債務の罠」が諸刃の剣であることを示す例とウォール・ストリート・ジャーナルは評している[23]。
スリランカの例では、大統領の3選禁止を撤廃するなど独裁的で親族を要職につかせて汚職が蔓延したとされるマヒンダ・ラージャパクサ政権は中国との関係を強めてインフラ投資を進めたが、中国の支援の下で進められたハンバントタ港建設時の費用約13億ドルの債務が返済できなくなり、2017年に後任のマイトリーパーラ・シリセーナ政権下で中国の国営企業が救済という形で99年間借り受ける契約を結んで実質的に中国が所有する港湾となっている[24]。2017年、インド政府は同様に中国による建設から赤字続きで「世界で最も空いている国際空港」[25]と酷評されていたマッタラ・ラージャパクサ国際空港に出資して40年間借り受けることが報道された。インド側に空港を利用するメリットや喫緊に利用する計画がないため、空港から自動車で30分ほどの距離にあるハンバントタ港への牽制とされる[26]。
2020年から始まった世界的な新型コロナウイルスの感染拡大はスリランカ経済を直撃。スリランカ政府は年間45億ドルの対外債務返済することが困難となった。スリランカ政府は外貨の流出を防ぐため、スリランカ料理に不可欠なターメリックにまで厳しい輸入規制を実施した[27]。これに対して大規模な抗議デモが相次ぎ、2022年7月には政権が崩壊。第9代大統領へと就任したラニル・ウィクラマシンハは国家としての破産を宣言、国際通貨基金 (IMF) に支援を要請した。これを受け、9月1日、IMFはスリランカに対し国内の経済改革のほか、対外債務の整理を条件に29億ドルの金融支援を行うことで暫定合意に達したと発表した[28]。2023年5月には、債務再編に向けた会合が開かれた。[29]
マレーシアは、政府に批判的なジャーナリストらの逮捕など強権的で腐敗していたとされるナジブ・ラザク政権は中国との関係を強めてインフラ投資を進めたが、2018年5月にマハティール・ビン・モハマドが首相に返り咲いた時点で1兆リンギ(約27兆2千億円)の巨額債務があった。このため、中国主導で進められてきた公共事業等の見直しが始められた[30]。2019年1月には、総工費810億リンギ(約2兆1500億円)に達する東海岸鉄道計画を正式に中止させ[31]、同年4月に中国は財政再建を行うマレーシアと215億リンギ(約5800億円)まで建設費用を削減することで合意した[32]。
モルディブでは、2013年にアブドゥラ・ヤミーンが大統領の職につくと反体制派を弾圧する強権的な政策をとり、歴代政権が採ってきた親インド外交から距離を置いて中華人民共和国に接近。多額の資金供与を引き出して港湾、人工島、島嶼の連絡橋(シナマーレ橋)の建設などインフラ整備を充実させた。野党指導者で元大統領であるモハメド・ナシードは、2020年には中国への借金返済額が7億5000万ドル(約825億円)に達し、国家歳入の半分にもなると指摘している[33]。
2018年、大統領選挙に勝利したイブラヒム・モハメド・ソリ大統領がインドを訪問。インド側から14億ドルの融資枠と通貨スワップの提供を引き出し、親インド寄りの姿勢を鮮明にした[34]。
バヌアツに対する中国の投資額は、2011年-2018年にかけて12億6000万ドル(約1400億円)に上っており、バヌアツの首相官邸や巨大な会議場、スポーツ施設の建設、港湾の改修が進められた。改修された港湾には、中国海軍の艦艇がたびたび立ち寄っている[35]。
パキスタンは、中国の古くからの友好国であり、グワーダル港やカラコルム・ハイウェイなど一帯一路の要衝が開発されたが、2015年に公的資金が投入されなければ継続不可能な莫大な借金をきたして国際通貨基金(IMF)やサウジアラビアなどにも財政支援を要請することとなった[36]。
タジキスタンは、エモマリ・ラフモン大統領の長期独裁政権のもとで2006年にほぼゼロだった対中債務は2016年に11.6億ドルに達して二国間債務の9割を占めるまでになり[37]、中国人民解放軍の駐留も報じられており[38]、世界開発センターは一帯一路関連の68カ国の中で最も「債務の罠」のリスクがある8カ国の1つに挙げている[37]。
ジブチは、イスマイル・オマル・ゲレ大統領が独裁体制を敷く典型的な中継貿易国家で日本の自衛隊や中国人民解放軍にとって初の海外基地も存在するが、2016年時点で対外債務の82%は中国であり[39]、アメリカのジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官は「債務の罠」の象徴的な国の一つとしてジブチを挙げている[40]。
IMFは借金で新興国に対し大きなダメージを与えていると批判されている[41]。
世界的な慈善団体のオックスフォムはCOVID-19 パンデミックIMFの緊急融資によって貧しい国に緊縮財政を強要していると報告した[42]。
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