Loading AI tools
方言の種類 ウィキペディアから
上伊那地域の方言は、中北部と南部での差が大きく、一つのまとまった方言圏を形成していない。本記事では、「上伊那地域で話されている方言」について扱う。本文中の「上伊那方言」もそのような意味である。
上伊那地域の方言は上伊那としてのまとまりはあまりなく、中北部と南部での差が大きい。中・北部が伊那・高遠方言圏に属しているのに対し南部は飯田・下伊那方言圏に属していると言うこともできるが、最も大きな違いは下伊那地域から上伊那地域南部にかけての西日本方言的特徴の色濃さであり、岐阜・愛知方言など東海方面からの影響も少なからず見られる。その点、木曽地域などと並行する。一方で、上伊那中部以北ではそれらの特徴が急速に薄れ、松本市や諏訪市など信州中部の方言体系に近くなる(特に諏訪地域とはかなり近いという)。このようなことから、中北部は中信(信州中部)方言に、南部は南信(信州南部)方言に分類され[1][2][3][4]、その境界線としては宮田村と駒ヶ根市の間を流れる太田切川から分杭峠の南北での相違が大きいとする研究が多い[5][6][3]。
また伊那方言と飯田方言では、敬語体系や敬語表現の違いも大きいという[5][3]。
以下では方言的特徴によって統一的な面を求める「方言圏」的な考え方と、境界線を求めようとする「方言区画」の考え方(しかしここでは方言の分布を基準としている以上方言圏の考えも含まれる)に分け、上伊那地域の方言の地域差について詳しく解説する。
守屋新助は、飯田方言を伊那方言と比較した場合、遠く離れた名古屋や京都でも距離の割に比較的よく使われているものが太田切川(駒ヶ根市赤穂と宮田村の間を流れる)を超えたあたりから激減している点について注目しており、飯田方言と伊那方言では根本的に性格を異にしているのではないかと主張した[7]。
飯田で使われているが伊那で使われていない方言 [7]
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
伊那
西春近
宮田
赤穂
飯島
七久保
片桐
上片桐
大島
山吹
市田
座光寺
上郷
飯田
名古屋(参考)
京都(参考)
|
また畑美義も、関西、東海方面から入ってきた方言が上伊那南部の赤穂あたりまでは比較的よく分布しているが、以北には及んでいないものが多いと主張。太田切川から分杭峠に至る線以南を西日本方言圏とし、以北を東日本方言圏とする見解を発表した[8]。また福沢武一も、上伊那地域南部には西日本方言的特徴が多く及んでいるとし同様の見解を発表したことがある[9]。このような見解は学界に影響を与えるほどではなかったが、東条操、市川健夫、向山雅重らから評価の声もあった。詳しくは「東西方言の対立と上伊那地域の方言」を参照されたい。また、駒ヶ根市東伊那・中沢といったような微細地域の所属の吟味については「方言区画」で述べる。
以下では、東西方言の指標と関係するもので中信方言と南信方言で差異が認められるものについて分布を示した。
松本市 | 諏訪市 | 辰野町小野 | 伊那市 | 宮田村 | 駒ヶ根市赤穂 | 中川村 | 飯田市街地 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
方言の印象 (馬瀬良雄による評価) |
不明 | 飯田方言ほどゆったりしていない | ゆったりしている | ||||||
語感 (福沢武一による評価) |
不明 | 明快剛直 | どちらとも言えない | 温和優雅 | |||||
連母音 | ai | ee | æɘに寄ったai | ||||||
oi | ee | oi | |||||||
ui | ii | ui | |||||||
au | au | aa | oo | au | |||||
ou | ou | oo | ou | ||||||
打ち消し | …ネー | …ネー、ン | …ン | ||||||
婉曲打消表現 | …センは使わない | …センを使う | |||||||
順接条件 | …ネーケリャー等も使う | …ニャー類しか使わない | |||||||
居る | イル | イル、オル(少) | イル、オル | オル | |||||
…ている | …テル | …トル | |||||||
命令形 | …ロ | …ロ、…ヨ、…ョー | …ヨ、…ョー | ||||||
ヨー来た (限定的な形容詞ウ音便) |
ほとんど言わない | 言う | |||||||
トーから来た (限定的な形容詞ウ音便) |
言わない | 言う | |||||||
サ行イ音便 | × | ◯ |
なお、過去否定「ナンダ」や母音の無性化が起こりにくいことなどは中南信でほぼ共通する西日本方言的特徴である(東北信まで行くとこれらの特徴も漸次姿を消す)し、断定「ダ」や、ワ行五段活用動詞の促音便、形容詞ウ音便が一部の例外を除いてほぼないことなどは、ほぼ長野県全域に満遍ない東日本方言的特徴である。アクセントも広く中輪東京式が行われており、関西的なところはない[5]。
次に愛知県方面から入ってきているものには以下のようなものがあるが、概ね駒ヶ根市のあたりまでで分布が薄れるものが多い。これらの多くは木曽地域南部などにも並行して入ってきている。なお理由「デ」「モンデ」なども名古屋方面からのものであるが、中南信のほぼ全域で行われており地域差はないため省いた[5]。
なお意志や推量には長野・山梨・静岡方言の最大の特徴とされる「ズ」「ズラ」「ラ」類を用いるのが普通であり、名古屋のように「ウ」「ダロー」を使うことは基底方言としてはない。そのため南信方言を明確に「岐阜・愛知方言」に所属させようとする区画案は今のところない[5][6]。
もう一つ、長野・山梨・静岡方言から南関東あたりまでの大きな特徴として、「見ルダ」「白イダ」のように動詞や形容詞に「ノ」を介さずに「ダ」をつける用法があるが、中信方言には盛んであるものの、飯田市を中心とする方言では少ない(ただし愛知県の一部などで再び行われるなどそれほど単純な分布ではない)。金田一春彦によれば、この地域の「見ルダ」は東京などの「見ルノダ」等とは少し用法が違うのではないかといい、「見ルダロー」対「見ルノダロー」にしっくり対応する言い方がこの方言にはないのではないかと推測している。これに関しては金田一の述べるように、「行クダ」等をよく使う地域と「行クズラ」のように動詞や形容詞に「ノ」を介さずに「ズラ」がつく地域はほぼ並行しており、「行クンズラ」のように「ノ(ン)」を介す地域では、「行クンズラ」と「行クラ」は確実性の違いによって使い分けられていると見られているが、「行クズラ」を併用する地域になると確実性による区別は次第に曖昧になり、さらに「行クズラ」のみの地域になると「行クラ」と意味による区別はなくなるという。そしてもう少し北へ行くと「行クズラ」一本で事足りるようになり「行クラ」は消える。このような地域では東京でいう「行クノダロー」に対応する言い方が存在しないと見られている[5][6][3]。
以下、比較的小地域の放射としては、飯田市を中心とする地域は「複雑敬語方言」と言われており、敬語表現がかなり細かく分化・発達しているという。飯田市を中心とした敬語表現的特徴には、愛知県から取り込まれた「オ…ル」「オ…テ」「ナモシ類」以外にも、丁寧な断定「…ナ」、…様を意味する「…マ」(オジーマ、オバーマのように使う)、丁寧な呼びかけ「ホイ、ホエ」、「…アリマス」などがあり、そのすべてが上伊那南部まで入ってきている。使用頻度も問題にはなるが大雑把に見て駒ヶ根市あたりから南で使われており、このあたりの方言の特徴となっている。「…ダニ」「…ナンショ」のように、伊那谷のほぼ全域に広がっているものもある(諏訪や松本まで行くとない。ダニは東信や愛知県三河等にもあるが、福沢武一によれば本場は伊那谷であると言われる)[5][6][3]。
一方で、松本市を中心とする地域に特徴的な「…マショ」「…ダジ」「…ダンネ」「…ズロ」「…セ」、四音節動詞第二類Bの中1高型アクセントなどは、辰野町小野などの北端地域にわずかに入ってきている程度でほとんどの地域では使われない[5][6]。また諏訪地域で用いられる「ナナ…ト」の類も上伊那地域には入ってきていない[5]。
これらに比較すると、伊那・高遠方言圏のみに見出される著しい特徴はあまり多くない。しかし、以下のものは伊那・高遠方言を中心としたものであると考えられる。
また、以下のものも長野県では上伊那中北部から諏訪地域に特徴的なものであるが、山梨県甲州弁とも全く共通の場合が多く、伊那・高遠を中心とした広がりを持つものであるかは必ずしも言えない。
さらに小地域の放射としては駒ヶ根市赤穂を中心とした地域で疑問詞の平板型アクセントを取ろうとする傾向や、終助詞「…ケ?」などが見られる[16]が、範囲は狭く、前者は赤穂を中心に宮田、東伊那、中沢、飯島の一部に分布し(ただし赤穂以外ではかなりゆれが生じていて個人差や単語差が大きい)、後者は概ね駒ヶ根市から松川町あたりまでは使われるようであるが、中川村、松川町などでは駒ヶ根ほどは多用されず、またあまり丁寧ではない場面で使われる傾向にあるという[4][5][17]。
以上ではアクセント、音韻、文法といったような基本的な言語体系に関わる部分について述べてきたが、語彙のような個別的なものの分布について見ると、駒ヶ根市赤穂、辰野町、箕輪町と言ったような小地域を中心とした放射やそれらの地域のみに特徴的な方言、伊那市長谷など東部のみに特徴的な方言もあるという[4][5]。語彙の分布については、「語彙」の項を参照されたい。
上伊那地域の方言は太田切川-分杭峠の南北で大きく2つに分けられるのが現在では定説となっており、馬瀬良雄[3]。守屋新助[7]、畑美義[8] 、福沢武一[9]、浅川清栄[9]、向山雅重[18]、市川健夫[19]、風越亭半生[10]等が主張、支持している。一方で、かつては中田切川-分杭峠を一大言境として考える説・研究もあり、青木千代吉(ただしここでは音韻のみでの研究)、足立惣蔵、南向村誌(執筆者不明)らが主張していた。
方言意識としては古来から太田切川の南北で大きな隔たりを感じている者が多かったとされ[20][5][21]、向山雅重は太田切川を境として変わる方言として以下のものを例に挙げながら方言調査の必要性について指摘した[20][21]。なお、調査方法や調査の時期によっては境界線が多少南北にズレる場合もあり、例えばとーり/にわは馬瀬良雄らによる言語地図ではさらに南の飯島町中部〜南部あたりで対峙しているが、それ以外の項目はどの文献でも概ね一致している。
太田切川以北(宮田) | 太田切川以南(駒ヶ根市赤穂) | |
---|---|---|
正座 | おすわり | おかしま |
お手玉 | おてんこ | おたま |
池 | どぶ | いけ |
小石 | (言葉なし) | いしなご |
土間 | とーり | にわ |
蟹 | がに | かに |
竹の小枝 | (言葉なし) | よどろ |
新しい開拓地 | しんげー | あらとこ |
守屋新助は、飯田で使われているが伊那で使われていない方言について天竜川西岸の地域における使用率を調べると以下の結果であったという。この結果を受け守屋は、太田切川に決定的な境界線が存在すると主張した[7]。
飯田で使われているが伊那で使われていない方言 [7]
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
伊那
西春近
宮田
赤穂
飯島
七久保
片桐
上片桐
大島
山吹
市田
座光寺
上郷
飯田
名古屋(参考)
京都(参考)
|
畑美義『上伊那方言集』では、飯田付近の方言が上伊那にどのように入りこんでいるかを調査すると、その使用率は、中川村89%、飯島町77%、駒ヶ根市赤穂66%、宮田村19%、伊那市5%という割合であり、逆に、伊那附近に使用されていて太田切川以南に少ない語の使用状態を調べてみると、伊那市100%、宮田村88%、駒ヶ根市赤穂21%、飯島町10%であったという[8]。その調査結果について『飯島町誌 下巻 現代 民俗編』では、以下の表のように解釈し紹介している[22]。
伊那方言と飯田方言[22]
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
伊那
宮田
赤穂
飯島
飯田
|
畑は、太田切川の南北で方言に違いが認められる理由について、太田切川は昔から政治上の境界で、大体太田切川以南は関西方面の領主、以北は関東方面の領主の領土であった場合が多かったため、言語、風習等も太田切川を境として長い間に次第に変わって来た[8]のだという人為的要因を主張しているが、また一方で、太田切川は流れが急で水量が多く、水難事故が多かったため交通の難所であった[23]、伊那谷随一の「暴れ川」として古来から伊那谷を南北に分断してきた[20]という自然的要因も挙げることができるという。
なお、太田切川から分杭峠にかけて真っ直ぐに線を引いた場合丁度境界線上にあたる駒ヶ根市東部の東伊那及び中沢地区について畑は、東日本(上伊那北部)・西日本(上伊那南部)の混合地帯であたると指摘しつつも(この混合地帯には太田切川以北ではあるが宮田村も含まれている)、その内容について検討すると関西、東海方面から入ってきた方言は赤穂までで食い止められ、東伊那、中沢以北には及んでいないものが多いと主張。東伊那、中沢は東日本(上伊那北部)方言に所属させるべきと主張した[8]。
畑の研究について、福沢武一は、論文『長野県上伊那郡における東西方言の境界線』においてそれらの説を立証すべく、上伊那における方言の分布の調査を行い、境界頻度数について検証した。結果としては以下の表のようになっている。
方言境界頻度数1[9]
50
100
150
200
250
300
中箕輪-伊那間
伊那-宮田間
宮田-赤穂間
赤穂-飯島間
飯島-上片桐間
|
さらにここに、天竜川東岸にある中沢地区を加えると以下の表のようになったという。
方言境界頻度数2[9]
50
100
150
200
250
300
中箕輪-伊那間
伊那-宮田間
宮田-中沢間
中沢-赤穂間
赤穂-飯島間
飯島-上片桐間
|
また福沢は、意図的に上伊那の特徴語のみを抜萃した統計も行い、以下の表のような結果となった。
方言境界頻度数3[9]
10
20
30
40
辰野-中箕輪間
中箕輪-伊那間
伊那-宮田間
宮田-赤穂間
赤穂-飯島間
|
ここに今度は中沢地区、東伊那地区を加えると以下のようになったという。
方言境界頻度数4[9]
5
10
15
20
辰野-中箕輪間
中箕輪-伊那間
伊那-宮田間
宮田-東伊那間
東伊那-中沢間
中沢-赤穂間
赤穂-飯島間
|
福沢はこれらの結果に加えて語感の違いなども総合し(福沢は語感について北部は明快剛直で東日本方言的、南部は温和優雅で西日本方言的な傾向があると主張する[9][4])、改めて太田切川-分杭峠線を支持しつつも、中沢地区は西日本(上伊那南部)方言圏に含め、東伊那地区を中間地帯とすべきと主張した[9]点については畑と見解が分かれた。また福沢の調査では畑や守屋の調査と比較して伊那-宮田間の落差も比較的大きい点が特徴となっており、広くは宮田、東伊那、中沢を接触地帯とすることができるとも主張した(この主張は畑もしている)。
また福沢はのちに『伊那市史 現代編』『上伊那の方言 ずくなし 上巻』で再び北部系方言と南部系方言の境界についての主張を行っているが、そこでは宮田村と駒ヶ根市東伊那・中沢地区を広く中間地帯(さらに伊那市西春近南部もこれに準ずるという)としており、一つの線を持って区画することを避けた[24][4]。その際の福沢による方言地域別語数分布のグラフを読み取ると、概ね以下のような分布となっている[25]。
50
100
150
200
伊那
宮田
中沢
赤穂
飯島
|
福沢の調査では比較的、伊那-宮田間の方言差が大きく、駒ヶ根市中沢地区では南部系方言の方がやや上回っている点が一貫しているといえる[24][4]。
その後馬瀬良雄は上伊那地域における綿密な臨地調査を行い、約240地点、280項目もの言語地図の作成および総合的な研究を行った[5]。その際方言区画についての断定的な主張はされていない[5]が、馬瀬は自身の調査結果と守屋、畑、福沢らの研究を総合したうえで、太田切川-分杭峠線をもって中信方言と南信方言の境界とし、駒ヶ根市東伊那、中沢地区については宮田村以北と同じ中信方言に区画する案を発表した[3]。近年では馬瀬による方言区画が最も支持されているという。例えば平山輝男らによる現代日本語方言大辞典でも、馬瀬による方言区画が採用されている。
なお、民俗学、地理学的観点からも太田切川が境界になっているものが多いとされ、地理学者の市川健夫によれば忠犬早太郎説話や三河式の手作り花火、照葉樹林帯の北限も太田切川であるといい、民俗学者の向山雅重によれば太田切川-分杭峠の線の南北で炬燵のサイズが異なるという[26][27]。
近年の研究ではあまり参照されていない説であるが、かつては中田切川を一大言境として考える説・研究もあったため紹介する。青木千代吉は音韻現象における諏訪上伊那方言と南信方言の境界を、連母音[oi][ui]の融合やサ行イ音便の有無などから中田切川-分杭峠線、すなわち飯島町・中川村と駒ヶ根市の間に設定している(これは総合的区画ではなく音韻のみの区画となっている点について注意。なお青木は総合的区画についても発表しているが、境界線については明示していない)[28]。ただ、上に挙げた項目はのち馬瀬らの調査によって多少違った分布を持っていることが明らかになり、現在ではあまり参照されていない。南向村誌では、語彙の分布などを例に挙げながら、諏訪・上伊那系方言と下伊那系方言の境界を中田切川-分杭峠線と主張している[29]。足立惣蔵は自身の調査結果から関西語の影響の及ぶ範囲を伊那谷では飯島町以南とし、中田切川以北と区別している[30]。
区画 | 地域 |
---|---|
中信方言圏 | 辰野町、箕輪町、南箕輪村、伊那市、宮田村、駒ヶ根市東伊那・中沢 |
南信方言圏 | 駒ヶ根市赤穂、飯島町、中川村 |
区画 | 地域 | 備考 |
---|---|---|
東国方言圏 | 辰野町、箕輪町、南箕輪村、伊那市、宮田村 | 宮田村も広くは接触地帯に位置づけられる |
東西方言接触地帯 | 駒ヶ根市東伊那 | |
西国方言圏 | 駒ヶ根市赤穂・中沢、飯島町、中川村 | 駒ヶ根市中沢も広くは接触地帯に位置づけられる |
区画 | 地域 | 備考 |
---|---|---|
上伊那北部方言 | 辰野町、箕輪町、南箕輪村、伊那市 | |
北部・南部接触地帯 | 宮田村、駒ヶ根市東伊那・中沢 | 伊那市西春近南部もこれに準ずる |
上伊那南部方言 | 駒ヶ根市赤穂、飯島町、中川村 |
大区画 | 地域 | 小区画・地域 | 備考・特徴 |
---|---|---|---|
東部方言圏 | 太田切川-分杭峠以北 | ||
辰野町小野・川島 | 東筑摩方言の流入があり、共通点を持っている。 | ||
辰野町辰野・朝日 | 諏訪方言の流入があり、共通点を持っている。 | ||
箕輪町 | |||
南箕輪村 伊那市西箕輪・手良・伊那・美篶 |
|||
伊那市西春近・東春近・富県 宮田村 駒ヶ根市東伊那・中沢 |
宮田村及び駒ヶ根市東伊那・中沢は東西方言の混合地帯にあたる。 | ||
伊那市高遠町 | 諏訪方言の流入があり、共通点を持っている。 | ||
伊那市長谷 | |||
西部方言圏 | 太田切川-分杭峠以南 | ||
駒ヶ根市赤穂 | |||
飯島町 | |||
中川村 |
風越亭半生は、◯◯弁という呼び名についても行政区画ではなく言語自体の相違によって呼び表すべきであるとの立場をとり、馬瀬、福沢、畑らの区画を参考に以下のように定義した[10]。
区画 | 地域 |
---|---|
伊那弁 | 辰野町、箕輪町、南箕輪村、伊那市、宮田村、駒ヶ根市東伊那・中沢 |
飯田弁 | 駒ヶ根市赤穂、飯島町、中川村、(および下伊那地域) |
区画 | 地域 |
---|---|
中信方言圏 | 辰野町、箕輪町、南箕輪村、伊那市、宮田村、駒ヶ根市 |
南信方言圏 | 飯島町、中川村 |
以下4つは厳密な意味での方言区画というよりは、方言的特徴や方言意識によっておおまかに分けようとしたものであると考えられる。
区画 | 地域 |
---|---|
北部 | 辰野町 |
中部 | 箕輪町、南箕輪村、伊那市(旧高遠町、旧長谷村除く)、宮田村 |
東部 | 旧高遠町、旧長谷村 |
南部 | 駒ヶ根市、飯島町、中川村 |
区画 | 地域 |
---|---|
北部 | 辰野町、箕輪町、南箕輪村 |
中部 | 伊那市(旧高遠町、旧長谷村除く) |
東部 | 旧高遠町、旧長谷村 |
南部 | 宮田村、駒ヶ根市、飯島町、中川村 |
区画 | 地域 | 特徴 |
---|---|---|
北部 | 辰野町、箕輪町 | ソードー、ダメドーと言ったように「…だよ」の意味で「…ドー」を用いるのが特徴である。 |
中部 | 南箕輪村、伊那市、宮田村 | イカッシ、シラッシ、ヤラッシ、座ラッシ等「…なさい」に「…(ラ)ッシ」を用いるのが特徴。 |
南部 | 駒ヶ根市、飯島町、中川村 | 「いらっしゃい」を「オイナ」、「そうですか」を「ソーケー」、「行ってみませんか」を「イッテミンケ」などと言い、居るを「オル」、勧誘に「…マイ、…マイカ」を用いるのが特徴。また、高年層ではことばの終わりに「…ナム」、「…ナー」をつけるのが特徴である。 |
区画 | 地域 |
---|---|
諏訪・上伊那方言圏 | 辰野町、箕輪町、南箕輪村、伊那市、宮田村、駒ヶ根市 |
下伊那方言圏 | 飯島町、中川村 |
上伊那地域の方言は東西方言の両特徴が混在する方言であり、北部では東日本方言的特徴が濃いが、南部では西日本方言的特徴が増加し、基準の取り方にもよるが概ね両特徴が拮抗するという見方がある。また遷移的な地域でもある[5]。
東西方言の等語線は概ね糸魚川から浜名湖にかけて集まっているものが多いが、太平洋側ではその等語線が大きく分散し、長野県南部や静岡県西部にも西日本方言的なものが多く入り込んでいたり、反対に愛知県や岐阜県にも東日本方言的なものが入り込んでいたりするため、この辺り一体が境界帯となっており、上伊那地域はその境界帯の東端の一部でもある[32] [5]。
では、上伊那地域の方言の分類や系統、また方言の根本的な性質などについてはどのように考えられているか。多くの場合、東日本方言に含まれるとされる場合が多いが、少数派の学説として「太田切川東西方言境界線説」が存在する。
以下では諸家による方言区画論と東西方言境界線の引き方について紹介し、さらに文法、語彙、アクセント・音韻に分けて詳しく述べる。
方言区画にはさまざまなものが提案されているが、ここでは、総合的な区画案について紹介する。
当然ながら、方言のさまざまな要素の境界線や等語線などは必ずしも一致しない場合が多く、それらを総合して境界線を引いていくことは簡単な作業ではない。
東西文法・語彙の等語線の集まる糸魚川-浜名湖線をさらに西に進み岐阜県・愛知県の西境付近まで行くと、今度は東西アクセントの大境界がある(ただし、アクセントは中国地方以西で再び東京式アクセントとなる地域が多い)。柴田武によれば、前者を「個々の俚言現象」、後者を「体系」と言い換えることができるという。両者は元来全く異質なものであり、中部地方の一体性を重視する場合、体系によって全体をひとまとめにし東日本方言に所属させる場合もあるが、方言の分布を重視した学説では、糸魚川-浜名湖線のあたりに東西方言の境界線を構想していく傾向が強く、細かく見た場合上伊那地域も問題となる地域である。その他、学者個人の言語観や方言区画理論によって構想は十人十色の状態となっている[33]。
これは、そもそも方言区画の定義や目的について、すべての学者で見解が一致しているわけではないためである[33]。
以下、諸家による区画案について紹介する。なお、東西方言境界線と関連のない部分はできるだけ省略する。
方言区画論を最初に唱えた東条操は、初期の段階では方言の分布を根拠に、概ね糸魚川-浜名湖に東西方言境界線を想定し、明確に区画することには慎重な姿勢を示しながらも、もし分けるとしたら内陸地域では長野県の北部を東日本方言に、南部を西日本方言に所属させてもよいのではないかという構想を持っていたようである(例としては『日本言語地図』におけるイル/オルの分布に近い)。東条は、南信方言に西日本方言的特徴が多く認められると考えていた。
このような影響により長野県の研究者の間では県の南部に東西方言の境界線が走っていることを前提に研究が進められていき、畑美義、福沢武一は調査・研究の結果、太田切川-分杭峠以南の地域を岐阜・愛知方言らとともに西日本方言に区画すべきと主張した。太田切川付近も、東西方言の等語線が比較的よく集まるポイントの一つとなっているためである(ただし、駒ヶ根市東伊那及び中沢地域の所属に関しては見解が分かれている。また福沢はのちにその主張は撤回している[4][8][9])。
これは、従来から東西方言の境界と言われてきた糸魚川-浜名湖線をより微視的に見たものとして県内の学者から注目され、向山雅重[37][18]、市川健夫[19]が支持を表明している。また東条も一定の評価をしているようで、畑美義「上伊那方言集」では冒頭で東条が登場し「東西方言の境界線が太田切川から分杭峠に至る線であると実証するのもこの方言集であろう」と述べている[8]が、自身の区画には取り入れていない。
東条が最終目標とした区画は方言の分裂の順序を推論するというものであり、東条は次第に構造主義的言語観を取り入れ、言語をひとつの閉鎖的組織体と考えるようになる[38]。そこで、必ずしもまとまりを見せない個々の俚言現象の分布や等語線よりも、アクセントといったような言語の体系部分といえるものを基準に大方言区画から次第に小方言へと分割して行く方法を用い、中部地方の区画では長野・山梨(郡内除く)・静岡と岐阜・愛知(さらに新潟県の一部)を合わせた東海東山方言で一区とみた。そして、全体の所属としては特にアクセントを重視して東日本方言におさめている。なお東海東山方言内における南信の位置付けについては、以下のようにやや優柔不断な記述が見られるものの、最終的には東海東山方言で一つの組織と見てそれ以上明確に細分している記述は見られない(ただし解釈は分かれる)[38][39][33]。
なお後年、例えば愛知県の尾張方言が東日本方言に属するならば、それ以上に東日本方言的特徴の濃い島根県の出雲方言が西日本方言に属することと矛盾するのではないかという見解もあったが、柴田武によれば東条の区画はそういうものではなく、「言語体系の違いによって分割した地域」であり、分布論とは異なるという[33]。すなわち、東条の区画においては東西の区画と東西方言の分布に関して必ずしも一致する必要はない。
方言区画論においてこのような立場の学者を構造派もしくは方言区画派などと呼ぶ[38][33]。
都竹通年雄は、区画の根拠となる音韻上、文法上の言語現象を明示し、それらの等語線を重ね合わせる手法を用いて方言を区画し、新潟・長野・静岡と富山・岐阜・愛知の県境を持って東西方言の境界線としている。このような手法による立場を、重ね合わせ派、もしくは方言圏派などと呼ぶ[38][33]。都竹の区画は、東条のものと比べるとより純粋に言語自体の相違を尺度としようとしたものであると言われることもある[32]が、中部地方において太平洋側で大きく分散した東西方言の等語線を県境でまとめるような処理については、大岩正仲が次のように解説する[35]。
幾つかの言語事象の各境界線が皆それなりに段階的に東西を区切ってはいても、集まって一線となることなく謂わゆる束状に地帯をなしているのであって、幾つかの小段階が二階と下とを結ぶ階段のように東西両方言をつないでいるわけである。中間のおどり場のような県境に一線を引いてこれを区画するのであるから、境界線の両側が相似ているのも当然である。
また飯豊毅一も、等語線によって引いた境界線の両側の方言について次のように述べる[33]。
ちょうどスペクトルの黄と緑との境界に印をつけることができないようにそれが困難であることもあろう。それは一つ一つの等語線にそのような傾向の見えるものもあろうし、一つ一つの等語線ははっきりしていても多くの等語線を一括して見たときにそのような傾向の見えることもあろう。そのような場合A方言、B方言の中心部の違いを考慮に入れて、二つの地域の中間に操作的に境界線を引くことはあり得る。このような場合、境界線の両側に近接している二地点の方言は極めて類似しているのが普通である。
東西方言境界線という最も上位の境界がこのような処理になることについて問題視する見解もあったが、都竹は後年、大岩正仲の語彙による区画案を参考に、長野・山梨・静岡と岐阜・愛知は互いに辺境的現象のある隣りどうしであるから共通する単語も多いだろうと付け加えているが、中部地方の方言区画は最も難しいと述べている[33]。
西日本方言とされる地域の中にも東日本方言色の強い方言があれば、東日本方言として認めなければならない。
大岩は東西対立の観点からは多く論じており、また以下のようにも述べる[33]。
東西両方言という大方言をまず区面する以上は、東西両域の方言はどこをとっても相互に相違し・内部の方はどこでも似ていなければならず、境界線の両側の接近した地域がよく似ていて区画された地域内でも遠く離れた地域との差異の方が大きくなるようでは理屈が合わないのではないか。
大岩はこれによって方言区画を完全に否定したわけではないが、区画は網の目のようになってしまい一本の線で区画しようとするところには無理があると主張。しかし枚挙的に方言を分類することは可能であり、国内に幾つかの中心的方言を求め、それから相互の関係交渉を究明することで方言研究は立派に達成できるとした。そして別箇別系列の相違を重視することで、日本の方言は打ち消しの「ン」と「ナイ」によって東西2つの言語団に分けられるとし、中間は緩衝地帯とした。これに従えば概ね太田切川以南の「ン」専用地域は西日本方言に、宮田以北の併用地域は緩衝地帯に属することになる。なお大岩は系統論を否定しており[49]、系統を推論したようなものではない[33]。
上伊那地域北部では東日本方言的特徴も多いが西日本方言的特徴も見られ、南部では両特徴がほぼ拮抗するという見方が強い[5]。
ただし、どこまでを東西対立の指標とし、どのように基準を取るかで判定が変わってくる場合がある。厳密な意味で東西2大対立型分布と言えるものは少ないためである[51]。
文法による方言区画には、井上史雄のものがあり、井上は計量的手法を用いて方言を分類した。その結果南信では、数値上西日本方言的な特徴の方がわずかに上回ったが、小さい値であったためとりあえず県境に合わせて東日本方言に所属させたという。ただし井上は中東部(ナヤシ、越後)と中西部(ギア、北陸)のように分け、東西方言境界線を挟んだ両地域の共通性についても認めている[52]。
文法による東西対立の指標として、橋本進吉、牛山初男は以下の5項目をその指標と見ているという。
西日本 | 東日本 | |
---|---|---|
一段活用動詞命令形 | …ヨ、…ー | …ロ |
動詞否定 | …ン | …ナイ |
ワ行五段活用動詞ウ音便 | ◯ | × |
形容詞ウ音便 | ◯ | × |
指定助動詞 | …ジャ、…ヤ | …ダ |
牛山はそれら5項目の分布を詳しく調査し、太平洋側で大きく展開した等語線を一つにまとめて一線を画すことは困難であるが、さらに「…ヘン」「…ヤス」「…コトナイ?」といったような近畿方言の分布についても加えてみると、長野県では上伊那中部以南でやや近畿的なところもあるが岐阜愛知方言と比べると少なく、総合的に照らし合わせれば新潟・長野・静岡と富山・岐阜・愛知の県境をもって文法上の東西方言境界線としてもよいのではないかと主張した[53]。
これは長野県全域を文法上の東日本方言に含んで良いとする積極的な見解であるが、牛山が方言区画論においてどのような立場であるかは不明であり、例えば中国方言など非近畿的とされる西日本方言との整合性についても特に検討はされていない点は、念頭に置かなければならない。
都竹通年雄、岩井隆盛は以下の7項目を指標として挙げている[46]
西日本 | 東日本 | |
---|---|---|
一段活用動詞命令形 | …ー、…ョ | …ロ |
動詞否定 | …ン、…ヘン | …ナイ |
動作存在態 | …トル、…チョル | …テル |
ワ行五段活用動詞ウ音便 | ◯ | × |
形容詞ウ音便 | ◯ | × |
指定助動詞 | …ジャ、…ヤ | …ダ |
サ行五段活用動詞イ音便 | ◯ | × |
馬瀬良雄は以下の10項目を取り上げたことがあり、これらの上伊那地域における分布についても綿密な臨地調査を元に科学的な研究を行っている。
なお馬瀬自身常識的な線を押さえて以上の項目を挙げたというが、後年の研究ではオル/イルは文法というよりも語彙的に東西を分かつ指標であるとして省略したこともあり(このように、オル/イルは東西対立の指標としては重要であるが、それが文法上のものであるかについて学者によって意見が分かれる部分である)、そのかわりに次のような対立の指標も挙げることができると述べた。
以上の項目の上伊那地域における分布状況については、次のような調査結果となったという。
辰野町小野 | + |
---|---|
伊那市富県 | ± |
伊那市長谷非持山 | ± |
宮田村田中 | ± |
駒ヶ根市赤穂 | − |
中川村片桐 | − |
その後大西によって2010年から2015年にかけて行われた調査(長野県伊那諏訪地方言語地図)では、以下のような分布となっており、大西は、「上伊那北部や旧高遠町でもオルが使われるようになった」と分析した。
地域 | 居る | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
イル | イル オル | オル | ||||
辰野町小野・川島 | 2 | 2 | 0 | |||
辰野町辰野・朝日 | 19 | 3 | 0 | |||
箕輪町 | 9 | 1 | 0 | |||
南箕輪村 | 2 | 2 | 0 | |||
伊那市 (旧高遠町・長谷村除く) |
20 | 7 | 0 | |||
旧高遠町 | 14 | 4 | 0 | |||
旧長谷村 | 10 | 1 | 0 | |||
宮田村 | 2 | 0 | 4 | |||
駒ヶ根市中沢・東伊那 | 0 | 1 | 5 | |||
駒ヶ根市赤穂 | 0 | 0 | 4 | |||
飯島町 | 0 | 3 | 5 | |||
中川村 | 1 | 2 | 6 |
地域 | 起きろ | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
オキロ | オキロ オキョ(ー) オキヨ | オキョ(ー) オキヨ | ||||
辰野町小野・川島 | 7 | 0 | 0 | |||
辰野町辰野・朝日 | 12 | 0 | 0 | |||
箕輪町 | 13 | 0 | 0 | |||
南箕輪村 | 5 | 0 | 0 | |||
伊那市 (旧高遠町・長谷村除く) |
37 | 0 | 0 | |||
旧高遠町 | 21 | 0 | 0 | |||
旧長谷村 | 17 | 0 | 0 | |||
宮田村 | 7 | 0 | 0 | |||
駒ヶ根市東伊那 | 3 | 0 | 0 | |||
駒ヶ根市中沢 | 8 | 2 | 0 | |||
駒ヶ根市赤穂 | 8 | 0 | 0 | |||
飯島町 | 10 | 1 | 1 | |||
中川村南向 | 5 | 4 | 3 | |||
中川村片桐 | 1 | 1 | 3 | |||
(参考)松川町 | 0 | 0 | 13 |
ただし、「見せる」「貸せる」「くれる」など、ほぼ全域で「…ヨ」となるものもある[5]。
いま、「良く来た」を例にとれば、駒ヶ根市以南の地域で半数以上がウ音便形「ヨー来た」を使うと報告している。
地域 | 良く来た | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
ヨク来た しか使わない | ヨー来た を使う | |||||
辰野町小野・川島 | 7 | 0 | ||||
辰野町辰野・朝日 | 12 | 0 | ||||
箕輪町 | 12 | 1 | ||||
南箕輪村 | 3 | 2 | ||||
伊那市 (旧高遠町・長谷村除く) |
30 | 7 | ||||
旧高遠町 | 19 | 2 | ||||
旧長谷村 | 15 | 2 | ||||
宮田村 | 5 | 2 | ||||
駒ヶ根市中沢・東伊那 | 1 | 12 | ||||
駒ヶ根市赤穂 | 4 | 4 | ||||
飯島町 | 2 | 10 | ||||
中川村 | 7 | 10 |
馬瀬はこれらの結果を踏まえ、上伊那北部では東日本方言的特徴が比較的色濃いが、上伊那南部(から下伊那にかけて)では文法的には西日本方言的特徴の方ががわずかに上回るのではないかと考察した[5][13]。また、文法における東西方言の境界線のいくつかが上伊那地域の太田切川-分杭峠線にかなり近いところを通っていることも明らかになった[5][13]。
以上のように、通常はまず東西対立の指標となりうる項目をいくつか選び、それがある地域においてどのように行われているか、当てはまる数の多少などを考慮しながら、西日本方言的か、または東日本方言的かなどの度合いを判定するというのが一般的である。
なお馬瀬良雄によると、今まで文法上の東西方言対立の指標として挙げられてきたものの言語的特徴を見ると、母音をていねいに発音するか(西)、子音をていねいに発音するか(東) の音声的性質に還元されるものが極めて多いという。例えば「シロー/白ク」、「落トイタ/落トシタ」、「コータ/買ッタ」、「ジャ・ヤ/ダ」、「ヨ・ー/ロ」などは、元々同一の語形であったものがそのような音韻上の性質の違いによって変化を遂げたものであると説明することができ、馬瀬によれば、初め子音性優位の方言が日本一円を覆っていたところに近畿を中心に母音性優位の方言が起こり、それによって変化を起こした語形はほぼ西日本一帯にくまなく広まっているように見えるものがいくつかあるが、より厳密に見ると山陰や九州の一部などに、東日本方言に共通する特徴が残っていたりするという[51]。このようなことから、馬瀬は音韻上の東西対立についても詳しく論じている。それについては音韻の項で述べる。
ところで、打ち消しの「ン/ナイ」だけはそのような原則から説明することができない。また語源が遠いと思われ、古く万葉時代の「ヌ/ナフ」まで遡る可能性が高いことから、別系列の相違を重視した大岩正仲は、ナイを使う方言を東日本方言に、ンを使う方言を西日本方言と見ても良いのではないかと述べている[33]。
また「ン/ナイ」は唯一完璧な東西対立型分布をなしている点でも注目される。
以上では、東西文法の違いをその一つ一つの特徴によって述べてきたが、では東西文法の体系を比較するとどうなるか。馬瀬良雄は、文法を体系によって区画しようとする場合、その体系部分は明らかでないため難しいのではないかという[44]。一方で金田一春彦は、文法の体系部分について積極的に解明しようとしたが、その結果、従来東西対立とされてきたものは文法の体系部分とはあまり関係がなさそうで、東西両方言の文法体系は比較的似ているのではないかという。ただし以下のものは体系とやや関係がありそうだという[59]。
以上のようなものもあるにはあるが、構文や文体といったようなかなり基本的なものから助詞の特殊な用法まで東京と大阪では比較的共通点が多く、東西方言の文法体系はあまり変わらないであろうと金田一は考察する[59]。
音韻・アクセントでは、典型的な東西2大対立型と言える分布はない。しかし楳垣実は、東西音韻にも性質上の違いが認められるとして具体的には以下の3点を挙げている。また馬瀬良雄もそれを支持する[13]。
このような相違の根幹部分は東西文法の性質と全く同じで、母音が子音よりも長く発音される(西)か、子音が母音よりも長く発音される(東)か、という部分に還元できるという。
すなわち、文法では母音優位の性質から変化を起こしたものがほぼ西日本一帯に広がっているパターンが幾つかあるのに対し、音韻ではどの項目もそれほどまでは広がらず(変化を起こさず)、漠然とした東西対立となっているものがあるということである[51]。なお楳垣は、そのさらに根本原因については、談話速度がおそい(西)/談話速度がはやい(東)という部分にたどり着くのではないかと結論づけている[60]。
馬瀬は、上記(1)〜(3)の分布に加え実際に聞いた音声の印象なども参照しながら、次のように分析する。
なお、次のものも母音優位/子音優位の性質上の違いに由来するとされ、東西対立の指標としてよく取り上げられる[51]。
しかし分布としては近畿/非近畿的な分布となり、近畿方言の西日本一帯への広がりは(1)〜(3)よりもさらに狭い。このような分布から、楳垣実や金田一春彦は概ね、京阪式アクセントが行われていたり、一拍語がキー(木、気)、ヒー(日、火)のように発音される地域を西日本の中心(ないし近畿式方言)、そのような特徴は広がっていないが、ほぼ西日本一帯に広がるような文法的特徴を持っている岐阜・愛知方言や中国方言などを、西日本の周辺(ないし非近畿式方言)のように見ているという[33][60]。
またそのほか、母音uが西日本では円唇の[u]であるのに対し東日本では平唇の[ɯ]であるのも音韻上の東西対立の指標としてよく取り上げられるが、馬瀬によれば全国における分布もあまりはっきりわからないまま東西対立の指標とされていたといい、子音性優位方言と母音性優位方言の違いに由来するものであるかどうかも馬瀬は特に触れていない。馬瀬によれば上伊那方言では東京よりも平唇の度合いはかなり著しく、上伊那でも南部に行くほどその傾向が強いという[5]。
なお母音uの分布については、田原薫によると、概ね近畿方言、中国方言、四国方言、九州方言で円唇の傾向があり、かつ舌が後ろによく引かれる。それ以東の東日本では、平唇でありまた中舌寄りの発音であるという[62]。馬瀬良雄は、上伊那地域の方言では東京方言と比べても平唇の度合いは著しいが、調音は後ろ寄りである点に注意すべきと主張する[5]。
また、徳川宗賢による、アクセントの型の統合の系譜の推測を試みた研究のある。徳川は何度か結論を修正しているが、上伊那地域の中輪東京式アクセントについては、東日本アクセント系に属すると見ている見ている[48]。
東西語彙の境界も概ね糸魚川から浜名湖にかけて集まるが、長野県南部にも西日本の語形が侵入してきているものがあり[51][63]、それらの勢力が上伊那南部の太田切川あたりで食い止められている例もいくつかあるという[5]。ただ上伊那地域全体としては、文法よりも比較的、東日本方言的特徴が多く見出せるのではないかと思われる。
一方で、語彙は個別的であり、東西対立型だけでなくかなりさまざまな分布の型がある。境界線を引こうとしても網の目のようになりやすく[33]、また東西語彙の特徴・法則性が見出しにくいこと[59]などから、語彙によって東西方言を明確に区画しようとする試みはやや少ない。
語彙による区画に挑戦したものには古くは橘正一のものがあり、それを修正した計算法によって発表されたものには大岩正仲の区画がある。それによれば長野県方言は東部辺境方言とされ、岐阜・愛知以西の西部方言と境を接し、かつそれらとの連続性を強調した区画となっており、枚挙的区画として、中部地方を「中部方言」として一つにまとめ、東西どちらにも含めないという把握の仕方も可能ではないかという[35][33]。
また語彙を中心とした区画論で上伊那地域に詳しいものとしては、福沢武一のものがあり、福沢は語彙の分布を中心に(しかし厳密には、語彙以外の要素も総合している)見ながら、太田切川以南を西日本方言に区画すべきとする論文を発表したこともあるが、のちに撤回し、「西日本直系の方言は決定的な数には程遠いが、県内の他地域に比べれば目ぼしい特徴をなしている」「東日本の中の西日本というべきである」と述べた[9][4]。
また、五條啓三は『日本言語地図』を利用し、ネットワーク法を用いた方言区画を立てている。それによれば、東北方言園・関東方言圏・北陸方言圏・関西方言圏・九州方言圏の五つがそれぞれ対等な等質性をもって対立しているのではないかという結論に到達したという。長野県方言は関東方言圏に含まれるが、東西2大対立を認めていない点、長野県方言や上伊那地域の方言の所属という意味でも注目すべきである[64][65]。
以下では、典型的な東西対立を示す語彙について『日本言語地図』で詳細な分布が確認できるものを取り上げ、上伊那における使用の有無を記載する。このうち上伊那地域に境界線や地域差が認められると考えられるものについては「おる/いる」「からい/しょっぱい」「すい/すっぱい」「やいと/きゅう」「しあさって/やのあさって」などを挙げることができる[4] [66] [5]。「おとつい/おととい」「つゆ/にゅーばい」等は全域的に混在しているが、上伊那内での明確な地域差を見出すことは難しい[66] 。なお、境界線が京都よりも西にあったり、あるいは東京よりも東にあるような対立も東西対立として扱っている文献があるがここでは省略した。また、玄孫や明々々後日など、日常的にほとんど使われず無回答としている地点の多いものも省いた。
西日本方言 | 上伊那での使用 | 共通語 | 東日本方言 | 上伊那での使用 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
あかい | 明るい[32] | あかるい | ○ | 境界線は上伊那よりもかなり西を通っておりこの語では完全に東の陣営に属する[66]。 | |
あぜ | ○ | あぜ[63][67] | くろ | 境界線は上伊那よりもかなり東を通っておりこの語では完全に西の陣営に属する[66]。 | |
おる | ○ (南部に多い) |
居る[32][63][67] | いる | ○ (北部に多い) |
この項目は概ね糸魚川浜名湖線で分かれるが長野県南部のみ西の勢力がえぐるように侵入してきている点に特徴があり、その境界線は上伊那中部を明確に通っている[68][66]。 |
うろこ | 鱗[63][67] | こけら | ○ | 境界線は上伊那よりも少し西を通っておりこの語では東の陣営に属する[66]。 | |
こっとい | 牡牛[67] | おとこうし おとこべこ | ○ | 境界線は上伊那よりも少し西を通っておりこの語では東の陣営に属する。なお、境界線付近では「おうし」「おす」類もかなり分布しており、他の項目と比べるとあまりはっきりと分かれない対立である[66]。 | |
おとつい | ○ | 一昨日[32] | おととい | ○ | この対立では上伊那も概ね境界線上に位置すると思われ、混用されている。なお、接触地域では混用地帯が広く、他の項目と比べるとあまりはっきり分かれない対立である。また、おとといは上伊那では「おっとい」となる場合もある[66] [4][69]。 |
おう | おんぶする[63][67] | おぶう | ○ | 境界線は上伊那よりもかなり西を通っておりこの語では完全に東の陣営に属する。なお、上伊那ではうぶう、うんぶーの形で用いられることが多い[69] [66]。 | |
かる | 借りる[32][63][67] | かりる | ○ | 境界線は上伊那よりもかなり西を通っておりこの語では完全に東の陣営に属する[66]。 | |
やいと | ○ (南部) |
灸[67] | きゅう | ○ | やいと類は西日本にしかないが、きゅう類は東日本を覆うほかに西日本各地にもかなり入り込んでおり、厳密にはやいと、きゅう/きゅうと言った対立となる。上伊那ではきゅうを全域的に用いるが、西日本方言のやいと類が連母音融合形のえーととして上伊那南部に入り込んできており東限の一つである[66][69]。 |
べにさしゆび等 | 薬指[32][63][67] | くすりゆび | ○ | べにさしゆび類はほぼ西日本にしかない(例外あり)が、くすりゆび類は東日本を覆うほかに西日本各地にかなり入り込んでおり、厳密にはべにさしゆび、くすりゆび/くすりゆびと言った対立となる。西日本方言のべにさしゆび類は下伊那中部まで入り込んできているが、上伊那までは若干の距離がある。なお、駒ヶ根市中沢においてべにさしゆびを報告した地点が1地点だけあったが分布しているとまでは言えない[68] [66]。 | |
けむり | 煙[32][63][67] | けむ | ○ | この項目ではほぼ糸魚川浜名湖線で分かれるが木曽から下伊那中北部にかけてけむりを使う地点が多いため長野県南部のみ西の勢力がえぐるように境界線を想定する学者もいる(ただし下伊那南部では再びけむが多い)が、上伊那では全域的にけむ、けぶ、けも等が用いられており、東日本語形の一つの西限と言える[51] [4][69]。 | |
しあさって | ○ | 明々後日[32][63][67] | やのあさって | ○ (辰野町小野のみ) |
この項目ではその境界線は上伊那北部の辰野町内を明確に通っている。辰野町小野のみ東日本語形のやのあさってを用いるが、上伊那の大部分ではしのあさって、しがさって等西日本の語形が用いられる[66] [4]。 |
からい | ○ | 塩辛い[32][63][67] | しょっぱい | ○ (伊那市以北?) |
この項目ではほぼ糸魚川浜名湖線で分かれると考えられることが多く、木曽から下伊那中北部にかけてからいのみを使う地点が多いため長野県南部のみ西の勢力がえぐるように境界線を想定する学者もいる[70]が、上伊那中北部ではからい、しょっぱいの両形を併用する。上伊那南部に関しては調査がされていないため不明だが、しょっぱいの連母音融合形「しょっぺー」が伊那市以北のみで用いられる点を考えると、上伊那南部から下伊那中北部にかけてはからいのみを用いる可能性が示唆され、その場合上伊那地域を東西の境界線が通っているとも言える[66] [4] |
すい | ○ | 酸っぱい[32][63][67] | すっぱい | ○ (北部) |
西日本方言のすいは全域的に広く用いるが、概ね箕輪町あたりから北ではすっぱいと併用されている。この項目では接触地域では混用地帯も比較的広いが、上伊那北部もその混用地帯に含めることができる[66]。 |
おう | 背負う[63][67] | しょう | ○ | 境界線は上伊那よりもかなり西を通っておりこの語では完全に東の陣営に属する[66]。 | |
つゆ ついり | ○ | 梅雨[67] | にゅーばい | ○ | にゅーばい類はほぼ東日本にしかないが、つゆ類は西日本を覆うほかに東日本各地にかなり入り込んでおり、厳密にはつゆ/にゅーばい、つゆと言った対立となる。上伊那では全域的に両形とも用いられているが、東日本方言のにゅーばいはもっと西の岐阜県や愛知県にも連続して分布していることを考えると、東の陣営に属すると考えることもできる[66]。 |
なすび | 茄子[32][63][67] | なす | ○ | 境界線は上伊那よりも少し西を通っておりこの語では東の陣営に属する[66]。 | |
なぬか | 七日[32][63][67] | なのか | ○ | 境界線は上伊那よりも少し西を通っておりこの語では東の陣営に属する[66] | |
ぬか | 糠[67] | こぬか | ○ | 境界線は上伊那よりもかなり西を通っておりこの語では完全に東の陣営に属する。ただし、関東地方にぬかが、九州地方にこぬかがかなり分布しているなど、他の項目と比べるとあまりはっきり分かれない対立である[66]。 | |
ひまご | △ | 曽孫[32][63][67] | ひこ | ○ | 境界線は上伊那よりもかなり西を通っておりこの語では基本的に東の陣営に属すると考えられる(上伊那では一般的にひこまごを用いるが、これはひこ類としてカウントされている)ただし、箕輪の方言ではひまごも載せており、この地域で全く用いられないということはないようである[71][66]。 |
東西対立分布の一種と言えるものに、東側が単純で西側が複雑と言ったようなものもある(その逆はほとんど見られないという)。例えば、共通語の「あぐら」は東側が「アグラ」一色なのに対し西側は「アグチ」「ジョロ」「オタグラ」「ヒザ」「アブタ」などのさまざまな語が分布していると言ったような対立である[72]。
西日本方言 | 上伊那での使用 | 共通語 | 東日本方言 | 上伊那での使用 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
複雑 (あぐち じょろ おたぐら ひざ等) | ○ | あぐら[72] | 単純 (あぐら) | △ | 境界線は上伊那よりも少し東を通っており、中北部であずくみ、南部でどっすわるが用いられるなど基本的に西の陣営に属すると考えられる。ただし、あぐらも基底方言としてではないが多少使われている[4][68] |
複雑 (おそろしい おぞい等) | △ | 恐ろしい[63][67] | 単純 (おっかない) | ○ | 境界線は上伊那よりも少し西を通っており上伊那では一般的におっかないが用いられるため、基本的に東の陣営に属すると考えられる。ただし、上伊那方言集ではおそろしねーも載せており、おそろしい類も多少用いられると思われる[69][66] |
複雑 (おどし そめ等 (かがし)) | ○ | かかし[67][73] | 単純 (かかし (かがし)) | ○ | 東日本方言のかかしが全域的に用いられるが、そめも用いられ、混用地帯として東限の一つとなっている[66] [4][69]。 |
複雑 (かたぐ になう かく等) | 担ぐ(材木)[63] | 単純 (かつぐ) | ○ | 境界線は上伊那よりもかなり西を通っておりこの語では完全に東の陣営に属する[66]。 | |
複雑 (かたぐ になう かく等) | 担ぐ(天秤棒)[63] | 単純 (かつぐ) | ○ | 境界線は上伊那よりも少し西を通っておりこの語では東の陣営に属する[66]。 | |
複雑 (かたぐ になう かく等) | 担ぐ(二人で)[63] | 単純 (かつぐ) | ○ | 境界線は上伊那よりも少し西を通っておりこの語では東の陣営に属する[66]。 | |
複雑 (たけ みみ こけ なば等) | きのこ[63][67] | 単純 (きのこ) | ○ | 境界線は上伊那よりも少し西を通っておりこの語では東の陣営に属する[66]。 | |
複雑 (ばら はり くい いげ等) | トゲ(植物)[63][67] | 単純 (とげ) | ○ | 西日本方言のばらは下伊那南部まで入り込んできており境界線はすぐ近くを通っているが、上伊那は全域が東の陣営に属する[66]。 | |
複雑 (おどし そめ等) | ○ | とりおどし[73] | 単純 (かかし 無回答) | 境界線は上伊那よりも少し東を通っており、そめ等が用いられるなど西の陣営に属すると考えられる[4]。 | |
複雑 (そげ くい いげ すいばり等) | △ | 裂片[72] | 単純 (とげ) | ○ | 境界線は上伊那よりもかなり西を通っておりこの語では基本的に東の陣営に属すると考えられる。ただし、箕輪の方言ではすいはりも載せており、日本言語地図でも1地点だけではあるがすぎばりを用いるという地点があるため、西日本方言のすいばり類もこの地域で全く用いられないとは言えない[71][66]。 |
以上のように、通常は語彙による東西対立の指標となりうる項目をいくつか選び、それがある地域においてどのように行われているか、当てはまる数の多少などを考慮しながら、西日本方言的か、または東日本方言的かなどその度合いを判定するのが一般的である。
なお東西語彙の特徴については、大岩正仲によればよくわからないという[59]。
一方で、福沢武一は、方言語彙の語感について次のように感じているという。
馬瀬良雄によれば、方言語彙の体系は全く不明であり、語彙体系による方言区画は困難ではないかという。よって東西方言を語彙体系によって区画しようとする試みも今のところない[44]。
特に分布を示していないものは全域に共通する特徴である。南部に特徴的なものは、下伊那地域の方言と連続した分布を持っている点について注意されたい[5]。
未然 | 連用 | 終止 連体 | 禁止 | 目的 | 仮定 | 命令 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
シル | シ-ネー シ-ン | シ-タ | シル | シン-ナ | シー シレー | シリャー | シロ |
セル | セ-ン | シ-タ セ-タ | セル | セン-ナ | セー | セリャー | セロ セヨ ショー |
ただし飯島町中部以南にも「シル」は点在し、上伊那方言集では全域が使用地域に含まれる。一方で、北部に「セル」はなく、「シル」と「セル」を併用する地域では「シル」が古いという意識が持たれている傾向にある。また、飯島町北部〜駒ヶ根市赤穂は終止形は「シル」が一般であるが(共通語と同じ「スル」が固まって分布する地域もあり)「セン(しない)」「セマイ(しよう)」「セロ(しろ)」などが方言集に載るなど、活用形によって混在している点に注意されたい[69][5]。
次のような形容動詞が用いられる[2]
推量表現に「…ズラ」「…ラ」を用いるのは長野・山梨・静岡方言の特徴である[5]。
伊那市(南部除く)以北では「…ナイカ(ネーカ)」「…ンカ」など、直訳すると「…ないか」となる表現が多く用いられているが、「…マイカ(メーカ)」や「…ジャンカ」などさまざまな表現が分布する。伊那市東西春近、宮田村以南は「…マイカ(メーカ)」が非常に多い[12]。
指定・断定の表現には東日本方言の特徴である「…ダ」が用いられている。中・北部では「見タダ(見たのだ)」「行ッタダ(行ったのだ)」のように活用語に「の」を介さずに「ダ」が続く用法を持っており、共通語の「…なのだ」には「…ダダ」、「…のか」「…のですか」には「…ダカ」が対応する場合がある[5]。一方南部ではこのような用法はそれほど盛んではないようである[5][4]。また、伊那市西春近以南では「…ナ」という表現もあり下伊那地域に近づくにつれ使用頻度が高くなる[7][5]。東部の谷では旧長谷村南部で多少用いられているという[5]。例.ソーナ(そうだ)
上伊那では一般に、「この子はもう字が読める」といったような能力的可能と、「暗くても大きな字なら読める」といったような条件的可能が語形の上で区別される。ただし南部では区別がやや曖昧である。また、中・南部では「読メレル」「着レル」といったようないわゆる「れ足す言葉」、「ら抜き言葉」が用いられている[5]。
能力 | 条件 | ||||
---|---|---|---|---|---|
肯定 | 否定 | 肯定 | 否定 | ||
辰野町小野 | 読む | ヨメエル | ヨメエネー | ヨマレル | ヨマレネー |
着る | キーエル | キーエネー | キラレル | キラレネー | |
伊那市長谷 | 読む | ヨメエル | ヨメエネー ヨメエン |
ヨメル | ヨメネー ヨメン |
着る | キーエル | キーエネー キーエン |
キラレル | キラレネー キラレン | |
伊那市富県 | 読む | ヨメエール | ヨメエーネー ヨメエーン |
ヨメレル | ヨメレネー ヨメレン |
着る | キエール | キエーネー キエーン |
キレル | キレネー キレン | |
中川村片桐 | 読む | ヨメレル | ヨミエン | ヨメレル | ヨメレン |
着る | キレル | キエン | キレル | キレン |
上伊那地域では一般に、敬語表現は隣接する諏訪方言などと比べて比較的分化しており、敬意の程度によって様々な言い方を使い分ける。しかし東部では、敬意の高い表現はごく一部の言葉の丁寧な人が用いるにすぎず、基底方言では敬語表現はそれほど複雑でない[5][13]一方で、飯田市に近接する南部では敬語表現が非常に豊富であり、特に尊敬語を多用するなど、上伊那地域内でも差が認められる。馬瀬良雄は、社会階層が発達していた地域では一般に敬語表現が豊かであると指摘している[3]が、南部駒ヶ根市赤穂や中川村南向などでは、豪農が多くの家来を引き連れ関西方面より移住し、多くの小作人を使用し封建的な主従関係を結んでいた歴史的背景を持つ。これらは太田切川以北にはほとんど見られないという[8]。
南部では尊敬表現が多彩であり、以下に示す方言形式のもののほかにも「御…」や「…様」などを多用する[3]。
謙譲表現はあまり発達していない。一例として、東部伊那市長谷では自身の動作について近所の知り合いに向かってやや丁寧に言う場合と、この土地の目上の人の向かって非常に丁寧に言う場合を文の上で区別しない場合が多いが、場合によって「御…モース」(一般には「御…モーシマス」の形で用いられる)「シンゼル」が用いられる。これらは全域で用いられるが、「シンゼル」は「神仏に物を供える」といったような意味のみで用いる地域もあるという[13]。南部では「オ…スル」「頂戴スル」などの謙譲表現が用いられ、一般に謙譲表現が用いられることのない長野県の多くの方言と対立する[3]。
これらの語の本拠地は名古屋で、長野県では飯田方面に色濃く、また木曽南部でも用いられる[4]。上伊那では南部で用いられ、下伊那地域に近い中川村、飯島町中部以南での使用頻度が高い。語形によって分布に多少の差があり、語形別の分布状況を以下の表に示す。文献の(1)〜(5)はそれぞれ、
とし、語形もしくは地域が調査対象となっていないものは空欄とする。小黒川・三峰川以北にはいずれの語形も分布していない。
語形 | 文献 | 使用地域 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
春富[81]大部分 | 西春近南部 | 宮田 | 中沢 | 赤穂 | 飯島 | 中川 | ||
…ナー | (1) | |||||||
(2) | ||||||||
(3) | ||||||||
(4) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
(5) | ||||||||
…ナーシ、…ナシ | (1) | × | × | × | × | × | ○ | |
(2) | ||||||||
(3) | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
(4) | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
(5) | ||||||||
…ナム | (1) | |||||||
(2) | ||||||||
(3) | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
(4) | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
(5) | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
…ナムシ | (1) | |||||||
(2) | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
(3) | ||||||||
(4) | ||||||||
(5) | ||||||||
…ナモシ | (1) | |||||||
(2) | ||||||||
(3) | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ||
(4) | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
(5) | ||||||||
…ナンシ | (1) | |||||||
(2) | ||||||||
(3) | × | × | × | ○ | ○ | × | ||
(4) | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
(5) |
「お米」「お水」のように上品に美しく表そうとする言い方を美化語と言うが、南部では美化語を多用する傾向がある。また「良い」に「お」をかぶせた「オイイ」が南部を中心に用いられる。宮田村以南に色濃く、北部にも分布する[3][5]。
上伊那全域で広く用いられている語彙を中心に、点々と分布するものや主に中部で用いられているものも含む。 参考文献:[8][69][4][11][83][71][84]
福沢武一によると、上伊那の方言は北部系・南部系がはっきり識別される[4]。以下に北部系方言と南部系方言の分布を示す。
なお北部系には、北部地域にまとまって分布する語彙のほか、諏訪、松本方面に色濃く上伊那以南に少ないものも含み、また南部系には南部地域にまとまって分布する語彙のほか、下伊那方面に色濃く上伊那以北に少ないものも含む。
表の使用地域は畑美義『上伊那方言集』による10区画から代表地点を一地点ずつ選び、その地域での使用の有無を示したものである。表にはないが、南箕輪村及び駒ヶ根市中沢の方言語彙については以下の書籍に詳しい。
語彙 | 意味 | 使用地域 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
小野 | 辰野 | 箕輪 | 伊那 | 高遠 | 長谷 | 宮田 | 赤穂 | 飯島 | 中川 | |||
あおる | 箕を使って穀物とゴミをえりわける | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | × | × | × | |
あかす | 誘う | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | × | × | |
あかなす | トマト | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | × | × | |
あけくずすようだ | 雨が烈しく降るさま | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
あさじゃ | 朝食前の簡単な食事 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
あずくみ、あずきみ | あぐら | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
あった | 頭 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
あっちこっち | あべこべ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | |
あらこ | 開墾地 | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | × | × | × | |
あわたけ | アミタケ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | × | × | |
あわばな | オミナエシ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | △ | |
あんねに | あんなに | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ | × | × | △ | |
い? | え?(聞き返し) | × | × | ○ | ○ | × | × | × | × | × | × | |
いーつける | 結びつける、縛りつける | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | × | × | |
いくずす | 住んでいるうちに家屋を汚す 住んでいるうちに家屋を痛める |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | × | |
いけん | ダメ、いけない | ○ | ○ | ○ | ○ | × | △ | ○ | × | × | × | |
いしっかてー | 非常に意志が固い | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | ○ | × | × | × | |
いちまき | 血統、一族 | × | ○ | ○ | ○ | × | △ | ○ | × | × | × | |
いちゃつく | あわてる | ○ | × | × | × | × | × | × | × | × | × | |
いつく | 泥が固化する | △ | △ | △ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | △ | |
いっぴょーし | 一気 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | × | |
…いと、…いとに | …うち、…あいだに | ○ | ○ | × | △ | ○ | × | △ | × | × | × | |
いどころね | うたた寝 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | |
いぬこ°、いのこ°、えのこ° | リンパ腺炎 | ○ | ○ | ○ | △ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
いぼーつる、いぼつる | すねる | △ | ○ | ○ | △ | ○ | △ | ○ | × | × | △ | |
いもすこし | も少し | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ | × | × | × | |
いれこ | 混作 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | |
うしんぼ | 牛 | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ | ○ | × | × | × | |
うっつい | 美しい | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | |
うぶめし | 出産直後に祝う飯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
うまいれ | 耕作地の公共路 | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | × | × | × | |
うんでんさま | 個人または同族の守り神 | × | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | × | × | |
うんね | いいえ | ○ | △ | △ | × | × | × | × | × | × | × | |
えーしくる | かまう、相手になる | × | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | × | |
えせみ | 嫉妬 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | × | △ | |
えそーか°ある | 愛想がいい | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ | ○ | × | × | × | |
えぶる | ゆする | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ | × | × | × | |
えもく°せー | 布類の焼ける匂い | △ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
えんか° | 縁側 | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | |
おいしさそー | 美味しそう | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | × | × | |
おえー | 本家 | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | × | × | × | |
おーたば | 大柄な言葉 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ | × | × | × | |
おーまくらい、おーまくり | 大食家 | ○ | △ | △ | △ | ○ | △ | △ | × | × | △ | |
おかんだっつぁま | 雷 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ | × | × | × | |
おくみ、おくめ | 人見知り | × | × | △ | ○ | × | × | ○ | △ | × | × | |
おこと | 2月8日 | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
おさんど、おさんどん | 炊事 | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | × | × | |
おちゃっこき | お世辞をよく言う人 | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | × | × | |
おつくべ、おつんぶ | 正座 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | ○ | × | × | × | |
おっさま | おじさん | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | △ | × | |
おっとさま、おっとさん | 父親 | ○ | ○ | × | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
おてんこ | お手玉 | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | |
おとこんば | おてんば | △ | △ | ○ | × | × | × | △ | × | × | × | |
おなしかった | 同じなら | ○ | × | × | × | × | × | × | × | × | × | |
おなじくちゃ | 同じでは | ○ | × | × | × | × | × | × | × | × | × | |
おなじければ | 同じなら | ○ | × | × | × | × | × | × | × | × | × | |
おはく°ろおや | 嫁の親分 | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
おへき° | お盆(給仕用) | △ | △ | △ | ○ | ○ | ○ | △ | × | △ | × | |
おめー | お前の家 | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | ○ | × | |
およこ°し | 和え物 | △ | ○ | ○ | ○ | △ | × | × | × | × | × | |
おんなしょ | 妻 | ○ | ○ | ○ | ○ | × | △ | ○ | ○ | × | × | |
おんなしょー | 女衆 | ○ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | × | × | |
おんばーむし | てんとう虫だまし | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
…かい | …か | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | |
かかしらう、かかしろー | からかう | △ | △ | △ | ○ | ○ | × | △ | × | × | × | |
かくねる | 隠れる | ○ | ○ | × | × | × | × | × | × | × | × | |
かけっこ | 賭け事 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | △ | × | |
かもー | いじめる | ○ | ○ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
かんかる | 軽々 | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | △ | × | × | |
かんば | 白樺の皮 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
かんます | かき回す | △ | ○ | △ | △ | △ | △ | △ | × | × | × | |
ぎざか°わりー、ぎざくそわりー | 縁起が悪い | ○ | × | ○ | ○ | × | × | × | × | × | × | |
きしゃご | おはじき | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
きっきと(働く) | 休みなく(働く) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | × | × | × | |
きのうな | きのう | ○ | ○ | ○ | △ | × | × | × | △ | × | × | |
くき°ぞー | 杭 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | × | × | × | |
くせ | 農業の病気 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
くちぼそ | 蚊 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | × | × | × | |
ぐやぐや | 数多く集まったさま | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
けーくれ | 全然、一瞬のうちに | ○ | ○ | △ | × | × | × | × | × | × | × | |
けたくる、けったくる | けりつける | ○ | △ | △ | ○ | ○ | △ | △ | △ | △ | △ | |
げーに | 強く、きつく | △ | ○ | △ | ○ | △ | △ | △ | × | × | × | |
げす | 肥やし水 | ○ | ○ | × | ○ | ○ | × | ○ | × | × | ○ | |
けもしー | あきあきとした | × | ○ | × | × | × | × | × | × | × | × | |
ごーまく | 嵩ばること | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | × | × | × | |
こか°、みずこか° | 大きい深い水おけ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
…ござんす[3] | …ございます | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
こすんぼ | 悪がしこい人 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ | × | × | △ | |
こば | 山の仕事の荷場 | ○ | ○ | ○ | △ | ○ | △ | △ | × | × | × | |
こぶる | 味噌玉をつきこむ | △ | ○ | ○ | ○ | × | × | △ | × | × | × | |
ごまい | 悪がしこい | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | |
ごまいし | 花崗岩 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
こまそだて | 大勢の子供を育てること 幼児の教育 |
○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | × | × | × | |
こむそ(ー) こもそ(ー) |
(1) | オンブバッタ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
(2) | 精霊バッタ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | × | × | |
(3) | イグサで編んだ雨具 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | × | × | × | |
…ごめ、…ごめー | …毎、…ごと | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | × | × | × | × | × | |
ごんばな、ごっぱな | たくさんな鼻汁 太い鼻汁 |
○ | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | × | × | |
こんぼこ | 幼児 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | × | × | × | |
こんまい | 小さい | × | △ | △ | ○ | △ | △ | ○ | × | × | × | |
さなけ°る | 探す | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | × | × | × | |
さなこ° | 蛹 | ○ | △ | ○ | ○ | △ | △ | ○ | × | × | × | |
さらける | 捨てる | ○ | ○ | × | × | ○ | △ | ○ | × | × | × | |
さわさわ | 落ち着きのないさま | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | × | |
さんけ°ーち | 竹馬 | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | × | × | |
さんじ | 通知 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
さんぱーて、さんばーて | 俵の小口へあてるもの | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | × | × | × | |
…し | …なさい | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | △ | △ | △ | △ | |
…じ | …ぞ | ◎ | △ | △ | × | × | × | × | × | × | × | |
しーなびる | しおれる、ちぢむ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
じっさ | 老人(男) | ○ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | × | × | × | |
じなし | ぼけ | ○ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | × | × | × | |
しぶい | 滑りが悪い | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
…じゃー | …しようではないか(勧誘) | × | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | × | × | |
しょいこ | ワラ製の背負い袋 | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | × | ○ | × | × | × | |
しょくしあけ°る | 告げ口する | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | △ | × | × | |
しょっぺー | 塩辛い | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | |
しらしら | こちょこちょするさま | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
しりのこ | 直腸 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
しんしょーまわし | 世帯主 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | ○ | × | × | × | |
しんのぶい | 図々しい | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | △ | × | |
すっぽー | 筒袖 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | × | × | × | |
ずべる | 怠ける | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
せこをかう、せこーかう | けしかける | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | |
せんねんもち、せんねんよ | 棟上げ餅 | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
そーせ | そーさ | ◎ | × | × | × | × | × | × | × | × | × | |
そーろだち、そーめんだち | 密生 | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | × | × | × | |
…ぞい | …ぞ | △ | △ | ○ | ○ | △ | △ | × | × | × | × | |
そべる | 寝そべる | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | × | × | |
ぞもぞも | 虫などの動くさま | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | × | |
…ぞよ | …のだよ | △ | △ | ○ | ○ | × | × | × | × | × | × | |
たかす | たからせる | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ | × | × | × | |
…だんね | …ですよ | ◎ | × | × | × | × | × | × | × | × | × | |
だんま、おだんま | お手玉 | ○ | ○ | × | × | × | × | × | × | × | × | |
ちがしぬ | 内出血 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | × | × | |
ちみち | 親類 | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | × | △ | |
ちょーなっくび | 前方に突き出た首(鎌首) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | |
ちょーらかす | じゃらす | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | |
ちょーれる | じゃれる | ○ | △ | ○ | △ | ○ | △ | ○ | △ | △ | △ | |
つとっこ | ふくらはぎ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | △ | × | |
つぼどこ | 庭園 | ○ | △ | △ | ○ | △ | △ | △ | × | × | × | |
でかさわき° | 大騒ぎ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | × | |
でかばちもねー | ひどく大きい | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | × | × | |
てのき°、てぬき° | 手ぬぐい | ○ | △ | △ | ○ | △ | △ | ○ | × | × | △ | |
てんぽ | 手を失った人 | ○ | ○ | ○ | × | × | △ | × | × | × | × | |
てんぽーせん(天保銭) | マヌケ、愚か者 | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | × | △ | × | |
…どー | …だよ | ◎ | ◎ | ◎ | × | × | × | × | × | × | × | |
どぶす | 寝る | ○ | × | ○ | × | ○ | × | × | × | × | × | |
どん、どんけ | 最下位 | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | ○ | × | × | × | |
とんぽく°さ | 露草 | ○ | ○ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
…ない | …ね、…ねえ | ○ | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
…なえ | …ね、…ねえ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | △ | △ | |
なる | 野菜のツルを巻きつかせる棒 | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | × | × | × | |
なんたらず | 何ともありはしないのだ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
なんちょ | なんで | △ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | × | × | × | △ | |
にやさま | 二十二夜尊のお祭り | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
ぬき | 家の軒 | △ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
…ねーけりゃー | …なければ | × | ○ | ○ | ○ | × | × | × | ||||
ねき°さま | カマキリ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | ○ | × | × | × | |
ねこずり、ねこすり | ねこそぎ(ねこそげ) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | × | |
のーなし | 怠け者 | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | × | × | |
のくとい | 暖かい | × | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | × | × | |
ばー | 祖母 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
ばーくろ | そばかす | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | |
ばか | ヌスビトハギ | ○ | × | × | × | × | × | × | × | × | × | |
はけ°かん | ハゲ頭 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | |
はぞ | 稲架 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
はぞあし | 稲架の支柱 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | △ | × | |
はぞき° | 稲架の横木 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
はそん | 修繕 | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | |
はちあがる | 登る | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
ばらざくれ | 点々と続いている浅い傷 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | |
ひーてー | 一日中 | ○ | △ | △ | ○ | ○ | △ | △ | △ | △ | △ | |
ひきずり | 無精者 | ○ | ○ | ○ | × | ○ | ○ | × | × | × | × | |
ひくば | こまげた | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | × | × | |
ひじろ | いろり | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | |
ひとまねこじき | 人の真似をする人 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | |
ひのぬき | 真昼間 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | |
ふーきんだま | 紙風船 | × | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | × | × | |
ふえふき | スズメノテッポウ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ | ○ | × | × | × | |
ふえふきく°さ | スズメノテッポウ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | ○ | △ | △ | △ | |
ぶっこむ | 混ぜる | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | |
ふてー、ずぶてー | 図々しい | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | |
ふてる | 捨てる | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | ○ | × | |
ぶに | 分け前 | △ | △ | △ | ○ | × | △ | × | × | × | × | |
べーさ | 丸太 | ○ | ○ | ○ | × | ○ | × | × | × | × | × | |
へーし | 林 | ○ | ○ | ○ | △ | ○ | △ | × | × | × | × | |
へびのまくら | うつぼ草 | △ | △ | △ | △ | ○ | △ | △ | × | × | × | |
へんで | 急いで | × | ○ | × | × | × | × | × | × | × | × | |
ぼーうち | 脱穀 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ | × | × | × | |
ほーかい | そうですか | ○ | ○ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
ほーかね | そうですか | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | × | × | × | |
ほーく°い | 副食物なしで飯を食うこと | ○ | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
ほける | 成長する | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | |
ほろける | 寝ぼける もうろくする |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | |
まーこ、まーま | おんぶ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | × | × | |
…ましねー | …ません | ○ | ○ | × | ||||||||
まちる | 待つ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | × | × | × | |
まつごみ | 枯れ松葉 | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ | ○ | × | × | × | |
まつまる | 子供がなつく | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | × | × | |
まめっこい | ごく小さい | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
まる | 便をする | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | × | × | × | |
まんの(ー)か°、まんのー | 万能鍬 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
みく°さい | 見苦しい | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | △ | |
みねぞー | いちい | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
みみっと | 蟻地獄 | ○ | ○ | ○ | × | △ | × | × | × | × | × | |
みょーらみょーら | ひどく病弱なさま | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | ○ | × | |
もこ°い | かわいそう | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | |
もこ°っちねー | いたましい | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
もじゃける | くしゃくしゃにする | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | |
ももね | 腿 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
やくなげ | 厄落とし | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | △ | |
やこい | 柔らかい | ○ | × | × | × | ○ | × | × | × | × | × | |
やだこと | いやなこと | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | |
やのあさって | 明々後日 | ○ | × | × | × | × | × | × | × | × | × | |
ゆきおんば | 雪夜の妖婆(雪婆) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
よへーじ | 茸の一種 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | |
りこーぼー | ぬめりいくち | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | |
わにる、わにわにする(しる) | ふざける | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | |
…んけりゃー | …なければ | ○ | ○ | ○ | × | × | × |
語彙 | 意味 | 使用地域 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
小野 | 辰野 | 箕輪 | 伊那 | 高遠 | 長谷 | 宮田 | 赤穂 | 飯島 | 中川 | |||
あいそしー | 愛想がいい | △ | △ | △ | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | |
あおしゃんぶれた | 青ざめた | × | × | △ | × | △ | △ | △ | ○ | △ | △ | |
あおたく | あおむく、ぼんやりしている | × | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | |
あおろじ | 青大将 | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
あくと | かかと | × | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | |
あさっぱち | 早朝 | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | |
あしをおくずしないしょ | あぐらをかいて下さい | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
あつに | 魚とあらと一緒に煮た大根汁 | ○ | ○ | ○ | ||||||||
あっぱ | 終わり | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
あっぽしる | 物をしまう | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
あにー | 年輩の男を呼ぶ称 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
あにーちゃ、にーちゃ | 兄 | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
あにーま、にーま | 兄 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
あねーま、ねーま | 姉 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
あねさ | 人妻 | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||
あぼ | あぶ | × | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | |
あまえん | えんがわ | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
あらす | 新品 | × | × | × | × | × | ○ | × | × | ○ | ○ | |
…あります | …ございます | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
あわいくち、いくち | あみたけ | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
いおき | 蚕が眠りから覚めること | ○ | ○ | ○ | ||||||||
いかき | ざる | × | ○ | ○ | ○ | △ | ||||||
いきみ | 陣痛 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
いき°れ、えき°れ | 夏の赤切れ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
いきれる | 調子づく | × | × | × | × | × | △ | × | △ | ○ | ○ | |
いく°る | 睡眠中に体を動かす | × | × | × | × | × | △ | × | × | ○ | ○ | |
いこ | 眠っている蚕 | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | |
いしけない | (1) | 食いしん坊だ | × | × | × | × | × | × | △ | △ | ○ | ○ |
(2) | 口がむさい | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | × | |
いしこ°つ | 石が多いさま、石の堆積 | △ | × | × | △ | △ | △ | △ | ○ | ○ | ○ | |
いじゃる | ざる | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
いせる、えせる | 自分の行動をわざと見せる あくどいことをする |
△ | × | △ | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
いちえ | イチイ | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
いちゃつく | 子供などが調子づいて騒ぐ | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
いどむ | 妬む | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
いややく | 墓の穴掘り当番 | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
うえー | わきが | ○ | ○ | |||||||||
うしぼったろ | ホタルの幼虫 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | × | |
うすいた | 経木 | × | × | ○ | × | × | × | × | ○ | ○ | ||
うそのろ | 愚かな | × | × | × | × | × | △ | × | × | × | ○ | |
うっそり、うっそれ | 馬鹿 | × | × | × | × | × | × | △ | △ | ○ | ○ | |
うな | 牡鹿 | ○ | ○ | |||||||||
うばれる | 赤ん坊が背負われる | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
うまかりそー | うまそう | × | × | △ | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | |
うやす、うやる | くすぶり黒くなる 盛んに煙を立てる |
× | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
うら | 後ろ | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
うらじゃける | ただれる | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||
うるさったい | うるさい | × | × | × | △ | △ | △ | ○ | △ | ○ | ○ | |
うんま | 背負ってもらうこと | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
えーまち | 怪我 | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
えき°ら | 簀 | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
えましむき° | 大麦 | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
えんこ° | 縁側 | △ | △ | △ | △ | △ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
えんばな | 家の上り口 | × | ○ | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
おありる | おありになる | × | × | × | × | × | × | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | |
おいな | いらっしゃい | × | × | × | × | × | △ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
おーずら | えらそうな顔 | △ | △ | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
おかーちゃ | 母親 | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
おかーま | 母親 | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
おかえぼん | お盆(給仕用) | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
おかしま | 正座 | × | × | × | × | △ | △ | △ | ○ | ○ | ○ | |
おかど | 大家に従属する小作人 | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
おくでー | 奥座敷 | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
おこじはん | 午後の間食 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
おこびる | 昼前の中間の軽い食事 | △ | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
おさっぱ、おしゃっぱ | おしまい | × | × | △ | × | × | △ | △ | △ | ○ | ○ | |
おさなびらき | 田植え始め | ○ | ○ | ○ | ||||||||
おさなぶり | 田植えの終わり | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | |
おしー | 欲しい | × | × | × | × | × | △ | × | × | ○ | ○ | |
おじーちゃ | 祖父、老爺 | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
おしなこ° | お手玉 | × | × | × | × | × | × | × | △ | × | × | |
おしろもの | 年ごろの娘 | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
おたま | お手玉 | × | × | × | △ | △ | △ | △ | ○ | ○ | ○ | |
おたりんさ | 低脳な人 | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
おちゅーはん | 午後の間食 | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
おったて | 霜柱 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
おてのこ | 手のひら | ○ | ○ | |||||||||
おとーちゃ、とーちゃ | 父親 | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
おとーま | 父親 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
おばーちゃ | 祖母、老婆 | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
おはっとー | 汁と共に煮たうどん | × | × | × | × | ○ | × | × | ○ | × | ○ | |
おびしさま | 尼さん | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | |
おまちて | お待ち下さい | × | × | × | × | × | × | △ | ◎ | ◎ | ◎ | |
おもずな | 手綱 | × | × | × | × | ○ | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
おもらもち | もぐら | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
およりて | お寄りください | × | × | × | × | × | × | △ | ◎ | ◎ | ◎ | |
おらん | 居ない | × | × | × | ○ | × | × | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
おる | 居る | 使用頻度低 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ||||||
おわえる | 追いかける | × | × | × | △ | ○ | ||||||
おんなざしき | 炉ばたの主婦の座席 | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||
おんべ | どんど焼き | × | × | × | × | △ | ○ | × | △ | ○ | △ | |
かーらっち | 粘土 | ○ | ○ | |||||||||
かいと | 畑 | ○ | ○ | ○ | ||||||||
がいろっぱ、げーろっぱ | オオバコ | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
かき° | 泥棒 | × | × | × | × | × | ○ | × | × | ○ | ○ | |
かきまぜ | 五目飯 | × | × | × | × | × | △ | × | × | ○ | ○ | |
かきやす | かき回す | × | × | × | △ | △ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
がせー | かさ、分量 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
かぜんぼー | 葉を取り去った桑の棒 | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
かとえる | 待ち合わせる、飢える | ○ | ○ | |||||||||
…かな | …か、…かね | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ◎ | ◎ | |
がなる | どなる | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | ○ | ○ | ○ | |
かまける | 愚痴を言う 心配する 引け目を感じ、いじける |
○ | × | × | × | × | △ | △ | × | △ | ○ | |
かわらんべ、かーらんべ | 河童 | × | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | |
かんじく°さ | カンゾウ | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
かんじらく°さ、かんずらく°さ | カンゾウ | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
ぎじぎじむし | カミキリムシ | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
きつねつつじ | おにつつじ | × | × | × | △ | × | × | × | ○ | △ | ○ | |
きぶる | 機嫌悪く振る舞う | △ | △ | △ | △ | △ | × | △ | ○ | ○ | ○ | |
きまめだ | かいがいしい | × | × | △ | × | ○ | ○ | × | ○ | ○ | ○ | |
ぎゃらしー | いやらしい | × | × | × | △ | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | |
きゃんきゃん | おしゃべり | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
ぎょーさん | たくさん | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
きりばん | まな板 | × | × | × | × | × | △ | × | ○ | ○ | ○ | |
くき° | 稲架の支柱 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
くき°(ん)ぼー、くいぼー | 稲架の支柱 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
くずす | あぐらをかく | ○ | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
くすばっこい | くすぐったい | × | △ | × | × | △ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
くね | 垣 | × | × | × | × | × | △ | × | × | ○ | △ | |
くよる | くすぶる | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
くろじに | 内出血 | × | × | × | × | △ | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
…け | …か | △ | △ | × | × | ○ | × | △ | ◎ | ○ | ○ | |
けちょつく、けちょけちょ | 落ち着きがない、こせこせすること | × | × | × | × | × | ○ | × | ○ | ○ | ○ | |
けつける | つまずく | × | × | × | × | × | ○ | × | × | ○ | ○ | |
けなぶる | 馬鹿にする | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
けなるい | 羨ましい | × | × | × | × | × | × | △ | × | ○ | △ | |
けん | めんこ | × | × | × | ○ | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
こいの | 野良着 | ○ | ||||||||||
こーしいも | 馬鈴薯 | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
こーと | 柄の地味 | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | |
ごかき | 熊手 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | × | × | |
こき°り | 田の土を細かくたたく作業 | × | × | △ | × | × | △ | × | ○ | ○ | ○ | |
こじきのすいもの | 漬物に湯を注いだもの | × | × | × | × | △ | △ | ○ | △ | △ | ○ | |
こせみち | 畦道 | × | × | × | × | × | × | × | △ | △ | △ | |
こっぺー | ひどい目 | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | ○ | ○ | ○ | |
こんきー | 息苦しい | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
ごんど | ゴミ、塵埃 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | △ | ○ | |
さいぼーふる | 指図する | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
さけ°もっこ | 二本の棒の間に藁縄の縄を張り、物を乗せ二人で運ぶ道具 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ||
さぶしみまい | 葬式後1か月後頃までにする見舞 | × | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | |
さむさいぼ | 鳥肌が立つ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | ○ | ○ | ○ | |
さらけ°る | 探す | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
じー | 字 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ||
しか°さって | 明明後日 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
しくた | 下繭 | × | × | × | × | × | △ | △ | ○ | ○ | ○ | |
じじ | 小便 | × | × | × | × | × | △ | × | × | ○ | ○ | |
じち | 記憶力 | ○ | ○ | |||||||||
しみずいど | 泉 | ○ | ○ | |||||||||
しもでー | 下座敷 | × | × | × | × | △ | △ | △ | ○ | ○ | ○ | |
じゃんこ | あばた | ○ | ○ | |||||||||
しんまき | 未亡人の所へ来た夫 | ○ | ||||||||||
すか°き | 熟蚕 | × | × | × | × | × | × | △ | △ | ○ | ○ | |
すこやか | 立派なこと | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
ずこんぼ | かまっか | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
すそよけ | 女の腰巻き | ○ | ○ | ○ | ||||||||
すびる | しなびる | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | |
ずるずるいも | 長芋の幼児語 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
すんでのこと | あわや、既に | × | × | △ | ○ | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
ずんもーる | 雪の中へ足を踏み入れる | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
せこつく | あくせくする | × | × | × | × | × | △ | × | × | ○ | ○ | |
せっきかい | 年末の買い物 | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
せなし | しないで | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
せまい | しよう | × | × | × | × | × | △ | × | ○ | ○ | ○ | |
せめ | 仕事の終わり | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||
せろ | しろ | × | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | |
せん | しない | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
…せん | 婉曲打消表現 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
せんしょ | 物好き | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
せんしょー | でしゃばり、おせっかい | △ | △ | △ | △ | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
そびえる、そべーる | ふざける | × | × | × | × | × | × | × | ○ | × | ○ | |
そよも | 冬青 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
そらっこと | 嘘 | × | × | △ | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
…た | …たち | × | × | × | × | × | △ | × | × | ○ | ○ | |
たいき°、たいけ° | 疲労 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
だえろ | カタツムリ | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
たかたかうんぶ | 肩車 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ||
たかたかゆび | 中指 | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
だちゃあかん、 らちゃあかん、 だちかん |
ダメだ どうしようもない らちがあかない |
○ | ○ | |||||||||
たったと | はかどるさま | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
だるま | 肩車、売春婦 | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
だんなざしき | 炉辺の主人席 | × | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | |
ちにくる、ちねくる | つねくる | × | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | |
ちゃのこ | お茶菓子、間食 | × | × | △ | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
ちゃりる | ふざける | × | × | △ | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
ちんき°る | ちぎる | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
ちんこ°ろ | 片足とび | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
つく | 支柱 | × | × | △ | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
つなみ | 桑の実 | × | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | |
つぼ | タニシ | × | × | × | △ | ○ | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
つる | 持ち上げて運ぶ | ○ | ○ | |||||||||
つるね | 尾根の続き | × | × | × | ○ | ○ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
てばなっこ | 手放しで、紐を使わずのおんぶ | ○ | ○ | |||||||||
でんぐるま | 宙返り | × | × | × | × | × | × | × | △ | △ | ○ | |
てんじく | 天、空 | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
てんびん | 肥桶 | × | × | ○ | × | × | × | × | ○ | ○ | ||
どえる | 蒸す、蒸し暑い | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
とー | 早く | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
どーねき | 強情 始末に負えない人 横着者 |
× | × | △ | ○ | ○ | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
とちむすび | こま結び | × | × | △ | × | × | × | △ | △ | ○ | ○ | |
どむ | 疥(顔の皮膚病) | × | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | |
…な | (1) | …だ | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
(2) | …の | × | × | × | × | × | △ | × | ○ | ○ | ○ | |
…ない、…なえ | …なさい | × | × | × | × | × | △ | × | ○ | ○ | ○ | |
…ないしょ | …なさい | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
名古屋ナモシ | …なー | …ねえ(敬意をこめる) | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ |
…なーし、…なし | × | × | × | × | × | × | △ | △ | ◎ | ◎ | ||
…なむ | × | × | × | × | × | × | △ | △ | ○ | ◎ | ||
…なむし | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ◎ | ||
…なもし | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ||
…なんし | × | × | × | × | × | × | × | ○ | △ | ○ | ||
なめ | 地面の凍っているところ | × | × | △ | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
…なむほい | …ねえ(重ねた呼びかけ) | × | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | |
なる | 稲架の横木 | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
なんしょかんしょ | 何でもかんでも 何しろかにしろ |
○ | ||||||||||
にこ°し | 白水 | ○ | × | △ | ○ | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
にすい | 弱い | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
にわ | 土間 | × | × | × | × | × | △ | △ | △ | ○ | ○ | |
ねーさま | おんぶばった | ○ | ○ | ○ | ||||||||
ねこ | あいこ | × | × | × | × | × | △ | △ | ○ | ○ | ○ | |
ねこのつめ | つめれんげ | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ||
ねずけ | うぶ毛 | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
ねぶる | なめる | × | × | △ | ○ | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | |
ねやねや | 混み合う様子 | ○ | ||||||||||
のす | 登る | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | |
はい | もう | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
はざくき°、はざくい | 稲架の支柱 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
はしか | のぎ | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
はだてる | 発起人となる | ○ | ○ | |||||||||
はっこ | 蟻地獄 | × | × | × | × | × | ○ | × | ○ | ○ | ○ | |
はばえる | 葉がしおれる | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
はやす | 卵をかえらせる | × | × | × | △ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
ばんぞー | 取引仲人 | × | × | △ | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
びー | 婦人(卑語) | △ | × | △ | △ | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
びーさま | 尼さま | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
ひーとい | 一日中 | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | |
びーどろ | ガラス製のおはじき | × | × | × | × | × | × | △ | △ | ○ | ○ | |
ひかん | 大地主に仕える小作人 | × | × | × | × | × | △ | × | × | ○ | ○ | |
ひけ°、とけ° | のぎ | × | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | |
ひのくれしま | たそがれ時、日没時 | × | × | × | × | × | × | △ | △ | ○ | ○ | |
ひょーる | ボールなどが弾む | × | × | × | × | × | × | × | △ | △ | × | |
ひょーっている | 落ち着きのないさま | × | × | × | × | × | × | × | ○ | |||
ふたく° | 塞ぐ | × | × | △ | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
ぶるくる | つるす | × | × | × | × | × | × | △ | △ | ○ | ○ | |
へこ | 度胸 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | × | ||
へち | ふち | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
へびじゃくし | テンナンショウ | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
へんか°かーる | 病気が悪化する | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
ほーたる、ほーたろ | 蛍 | ○ | ○ | ○ | ||||||||
ほい | 呼びかけ語 | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
ほいずら | 泣きつら | × | × | △ | × | × | △ | × | ○ | ○ | ○ | |
ほた | 株 | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | ○ | ○ | ○ | |
ほっこりしない(しん、せん) | 病状がはかばかしくない | × | × | × | ○ | × | × | × | ○ | ○ | ||
ほっそくね | 山の麓 | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
ほつる | 穂屑 | × | × | × | × | △ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
ほつろく | 痩せた人 | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
ほでうり | 屑物売り | ○ | ○ | |||||||||
ぼぼさ | でく人形 | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ||
ほんじょくなる | しゃがむ | ○ | ○ | |||||||||
ほんやく | 葬式のとき棺を担う人 | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
ほんやり | どんど焼き | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | |
…ま | …様 | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | |
…まい | …しませんか(勧誘) | × | × | × | × | △ | △ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
まんか° | 万能鍬 | △ | × | × | × | ○ | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
まんだ | まだ | × | × | △ | △ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
みしっかい | 見次第 | ○ | ||||||||||
みしる | むしる | × | × | × | △ | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
みぞ | 針孔 | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
みそっつぶれ | 柿などが落ちてべたりと潰れたさま | × | × | × | △ | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
みちあけ | 嫁の親類まわり | × | × | △ | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
むっさり | 無愛想 | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
めく°り | 月経 | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
めだか、めたか | トノサマガエル | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | △ | ○ | |
もえきじり | 燃え残り | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
もっくら、もっくり | もんぺ | × | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | |
もや | 柴、枯れた小枝 | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
やーこい | 柔らかい | × | × | × | × | × | × | × | ○ | × | ||
やく°い | か弱い | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
やや | 赤ん坊、女の赤ん坊 | × | × | △ | × | × | △ | × | ○ | ○ | ○ | |
ややさ | 乳児(女) | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
ややける | あわてる | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | |
ゆるり | いろり | × | × | × | × | △ | × | △ | ○ | ○ | ○ | |
よいだれ | 宵っ張り | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | |
よー | よく | × | × | × | △ | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | |
よーきをくう よーきあたり |
気候の変わり目に負ける病気 熱中症 暑気あたり |
○ | ○ | |||||||||
よどろ | 竹の枝 | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | |
よめさん、よめさま | ネズミ | × | × | △ | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
らくだいも | 長芋 | △ | △ | × | △ | × | × | × | ○ | ○ | △ | |
らんごく | 乱雑なさま | × | × | △ | △ | △ | × | △ | ○ | ○ | ○ | |
わや | 幼児がぐずる | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | |
共通語の「じゃんけん」には「ちっち」が全域で用いられるが、散点的なものなどに以下のものがある[5][4]。なお、2010年代の調査では方言形は縮小し、「じゃんけん」が多くなってきている[12]。
「じゃん・けん・ぽい」の掛け声には以下のものが用いられる[4]。
出典:[100]
A、Bは友人同士。ともに年配の男性。朝、AがBを起こすところから始まる(出典:[5][6])。
七夕の前日。おばあさん(A)と小学校の孫(B)の会話。あとで嫁(C)が加わる(出典:[5])。
北原貞蔵『暮らしとことば』「孫」より一部抜粋(出典:[88])。
北原貞蔵『暮らしとことば』「傾斜畑」より一部抜粋(出典:[88])。
北原貞蔵『暮らしとことば』「製材屋」より一部抜粋(出典:[88])。
出典:[11]。
参考文献:[5]
参考文献:[5]
上伊那方言のアクセントは有アクセントの中輪東京式アクセントに属し、体系的には共通語とほとんど同じであるが、中には異なる点も認められる[5]。
一拍名詞では、類による対立は共通語と同じであるが、以下の語に若干の違いがみられる。
なお、「帆」は元々共通語及び上伊那南部で平板型、北部で頭高型という対立を為していた[13]が、近年は共通語で頭高型が優勢となってきており[117]、若年層では全域で頭高型となる[5]。
二拍名詞も類による対立は共通語と変わらない。なお、第2類の語(石・歌など)は北信地方や下伊那南部で「いし(が)」「うた(が)」のように平板型で発音される傾向が強いが、上伊那方言では「いし(が)」「うた(が)」のような尾高型が多く、平板型の語は県内では非常に少ない。上伊那で平板型をとる語はほぼ全域で「人」、一部地域で「北・寺・梨」のみであり、このうち「北・人」は共通語でも平板型、「梨」は平板型と尾高型[5][13]。 二拍名詞に属する語で、共通語とアクセントが異なると言われる場合のある語には上記の第2類の語も含め以下の表に示すようなものがある。このように羅列すると非常に多いようにも見えるが、大半の語は共通語と同じである。
語彙 | 共通語 | 上伊那方言 | 備考 |
---|---|---|---|
姉 | あね | あね | 伊那市など(ほか未調査)[118] |
あれ | あれ | あれ | |
嘘 | うそ | うそ | 中・南部 |
餌 | えさ | えさ | 伊那市[118] |
垣 | かき | かき | 伊那市など(ほか未調査)[118] |
瘡 | かさ | かさ | 若年層及び一部の老年層 |
神 | かみ | かみ | |
上 | かみ | かみ | 若年層 |
亀 | かめ | かめ | |
榧 | かや | かや | [95] |
岸 | きし | きし | 北部 |
北 | きた | きた | 中・南部 |
杭 | くい | くい | |
雲 | くも | くも | |
倉 | くら | くら | 東部の若年層[119] |
くろ(農林業) | くろ | くろ | [4] |
桑 | くわ | くわ | 箕輪町など(ほか未調査)[84] |
声 | こえ | こえ | |
これ | これ | これ | |
鷺 | さぎ | さぎ | 伊那市など(ほか未調査)[118] |
四季 | しき | しき | |
砂 | すな | すな | 南部 |
席 | せき | せき | [120] |
象 | ぞう | ぞう | |
底 | そこ | そこ | 東・北部の若年層 |
それ | それ | それ | |
乳 | ちち | ちち | 伊那市など(ほか未調査)[118] |
辻 | つじ | つじ | 伊那市など(ほか未調査)[118] |
唾 | つば | つば | 伊那市など(ほか未調査)、尾高か平板かは不明[118] |
梅雨 | つゆ | つゆ | 伊那市など(ほか未調査)[118] |
寺 | てら | てら | 中部に多く、若年層で増加 |
咎 | とが | とが | 伊那市など(ほか未調査)、尾高か平板かは不明[118] |
虹 | にじ | にじ | |
ネジ | ねじ | ねじ | 伊那市など(ほか未調査)、尾高か平板かは不明[118] |
畑 | はた | はた | 伊那市など(ほか未調査)[118] |
鳩 | はと | はと | |
百舌 | もず | もず もず | 中・北部で「もず」 南部で「もず」 |
八重 | やえ | やえ | 伊那市など(ほか未調査)、尾高か平板かは不明[118] |
なお、近年共通語で元々尾高型であった「熊」「匙」の頭高型が広まっている[117]が、上伊那でも一部地域で同様の変化が見られる[13]。また「汽車」「鹿」「父」は元々共通語で尾高型、上伊那で「きしゃ」「しか」「ちち」という対立を為していた[79][5]が、近年は共通語でも上伊那方言と同様のアクセントが優勢となっている[117]。
三拍名詞では、「アワビ・黄金(こがね)・小麦・サザエ・力・二十歳(はたち)・岬」など第3類に属する語は共通語では「あわび」のような頭高型と「こがね」のような平板型が拮抗しているが、上伊那方言では「あわび」のような中高型が若干優勢であるものの、頭高型、尾高型、平板型も見られ、一定の傾向を示さない[5]。
また、「朝日・油・命・姿・涙・柱・火ばし・眼」など第5類に属する語は共通語では「あさひ」のような頭高型が多いが、上伊那方言では「あさひ」のように中高型とする傾向が強い[5]。
類に属さない三拍名詞でも、共通語で頭高型のものに上伊那方言で中高型が対応するパターンが多く見られ、例として「青葉・落ち葉・きのこ・去年・トマト・花火・火鉢・めがね・若葉・わさび・わかめ」などがそれにあたる。上記の語のうち「去年・トマト・花火・めがね」などは「きょねん」のように平板型をとる地域もあるが、いずれにせよ共通語アクセントの頭高型は極めて少ない[5]。
なお、第6・7類に属する語は、長野県方言では交通不便な山間部で頭高型の語が東京と比べて多く見られるが、上伊那方言では平板型が多く、共通語に近い。第7類に属する語では頭高型の語も少なからず見られるが、その多くは東京でも頭高型である。「烏・ミミズ・苺・後ろ・便り・椿」など、上伊那内でも頭高型と平板型が混在する語もみられる[5](共通語では「烏・便り・椿」が頭高型、「苺・ミミズ・後ろ」が平板型[117])。
三拍名詞で共通語とアクセントの異なる語は該当数が多いため、個別アクセントは取り上げない。
四拍名詞は、東京では尾高型の語は3拍目にアクセント核を置く中高型に移行している(例.としより→としより)が、上伊那方言ではこの現象が認められず、依然として尾高型が多い[5]。
上伊那では頭高型をとるものが多く、下伊那と接する中川村や飯島町南部では頭高型をとるものが非常に多い。ただし駒ヶ根市赤穂を中心とした小地域では、平板型が非常に多い[13]。
疑問詞 | 中・北部 | 赤穂及び その周辺 |
南端部 | |
---|---|---|---|---|
名詞 | 幾つ | いくつ | いくつ | いくつ |
幾ら | いくら | |||
誰 | だれ | だれ | ||
どこ | どこ | どこ | ||
どっち | どっち | どっち | どっち | |
どれ | どれ | どれ | どれ | |
なに | なに | なに | なに | |
連体詞 | どの | どの | どの | どの |
どんな | どんな | どんな | ||
副詞 | いつ | いつ | いつ | いつ |
なぜ | なぜ | なぜ | なぜ |
二拍動詞では、「着く」「吹く」「伏す」「付く」などは共通語では「つく」のように尾高型のアクセントを持つが、上伊那方言ではいずれも「つく」のように頭高型のみになる。これは母音の無声化が起こらず、アクセントの山が移動しないためである。また、「切る」「食う」「降る」「来る」が付属語「て」「た」をともなう場合、共通語では「きって」のように尾高型を持つが、上伊那方言では「きって」のように頭高型のみである。そのほか、「織る」は共通語では「おる」だが、上伊那方言では「おる」、「行く」は共通語では「いく」であるが伊那市高遠町三義で「いく」[5]。
三拍動詞では、第1拍、第2拍がCa’e-またはCa’i-の構造を持つ「帰る」「返す」「入る」「参る」などの語は共通語では「かえる」のように頭高型だが、上伊那方言では「かえる」のように中高型に発音される場合が多い[5][116]。そのほか、個別的な共通語との差異としては、以下が見られる。
四拍動詞では、「集める」「数える」「調べる」など第2類Bに属する語を松本地方では「あつめる」のように中1高型に発音するが、上伊那にはその傾向はない。類に属さない語では北部で「(物などに)つかまる」が中1高型「つかまる」であり、松本平と同様のアクセントである[5]。
複合動詞は、起伏型+平板型、起伏型+起伏型ともに共通語では平板型となるが、上伊那方言では前節部の山が消えず、以下のようなアクセントとなる[5]。
語彙 | 共通語 | 上伊那方言 | 備考 |
---|---|---|---|
逃げ出す | にげだす | にげだす | |
はき出す | はきだす | はきだす | |
考え込む | かんがえこむ | かんがえこむ | |
思い巡らす | おもいめぐらす | おもいめぐらす |
自立語に付属語が続く場合、上伊那方言では共通語よりも複合の度合いがさらに弱く、原則として自立語のアクセントの型を変えることはない。それは北部ほど顕著である。しかし特に南部では、共通語でアクセントの型を変えない付き方をするものが、型の対立を失わせる付き方をするパターンも見られる。共通語とアクセントの異なるもののうち、文献によって確認できるものを以下に示す[5][117]。
例 | 共通語 | 上伊那方言 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
平板型+さ | 水さ | みずさ | みずさ | 中・南部 |
平板型+よ | 水よ | みずよ | みずよ | 中・南部 |
尾高型+ぐらい | 山ぐらい | やまぐらい | やまぐらい | 北部、共通語でも同様のつき方もあるという |
尾高型+だけ | 山だけ | やまだけ | やまだけ | 中・北部、共通語でも同様のつき方もあるという |
尾高型+ばかり | 山ばかり | やまばかり | やまばかり | 北部、共通語でも同様のつき方もあるという |
中高型[121]+の | 日本の | にほんの | にほんの | |
頭高型+ぐらい | 春ぐらい | はるぐらい | はるぐらい | 共通語でも同様のつき方もあるという |
頭高型+らしー | 春らしい | はるらしー | はるらしー | 中・北部、共通語でも同様のつき方もあるという |
例 | 共通語 | 上伊那方言 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
平板型+が | 行くが | いくが | いくが | 南部 |
平板型+ぐらい | 行くぐらい | いくぐらい | いくぐらい | 南部 |
平板型+けれど | 行くけれど | いくけれど | いくけれど | |
平板型+ぞ | 行くぞ | いくぞ | いくぞ | 南部 |
平板型+そーだ(伝聞) | 行くそうだ | いくそーだ | いくそーだ | |
平板型+たがる | 行きたがる | いきたがる | いきたがる | |
平板型+だろー | 行くだろう | いくだろー いくだろー | いくだろー | 北・東部 |
平板型+と | 行くと | いくと | いくと | |
平板型+な | 行くな | いくな | いくな | 南部 |
平板型+ので | 行くので | いくので | いくので | |
平板型+のに | 行くのに | いくのに | いくのに | |
平板型+まい | 行くまい | いくまい[13] | いくまい | 北・東部 |
平板型+ます | 行きます | いきます | いきます | |
平板型+よ | 行くよ | いくよ | いくよ | 南部 |
頭高型+ぐらい | 書くぐらい | かくぐらい | かくぐらい | 南部 |
頭高型+どころか | 書くどころか | かくどころか | かくどころか | 南部 |
頭高型+ない | 書かない | かかない | かかない | |
頭高型+なかった | 書かなかった | かかなかった | かかなかった | 南部 |
頭高型+ばかり | 書くばかり | かくばかり | かくばかり | 南部 |
頭高型+ます | 書きます | かきます | かきます | |
頭高型+らしー | 書くらしい | かくらしー | かくらしー | |
中高型+ぐらい | 動くぐらい | うごくぐらい | うごくぐらい | 南部 |
中高型+どころか | 動くどころか | うごくどころか | うごくどころか | 南部 |
中高型+ない | 動かない | うごかない | うごかない | |
中高型+ばかり | 動くばかり | うごくばかり | うごくばかり | 南部 |
中高型+ます | 動きます | うごきます | うごきます | |
中高型+らしー | 動くらしい | うごくらしー | うごくらしー |
例 | 共通語 | 上伊那方言 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
平板型+か | 厚いか | あついか | あついか あついか | 中・北部で「あついか」 南部で「あついか」 |
平板型+が | 厚いが | あついが あついが | あついが | 北・東部 |
平板型+けれど | 厚いけれど | あついけれど あついけれど | あついけれど | |
平板型+そーだ(伝聞) | 厚いそうだ | あついそーだ | あついそーだ | |
平板型+た | 厚かった | あつかった | あつかった | |
平板型+だの | 厚いだの | あついだの あついだの | あついだの | 中・北部 |
平板型+だろー | 厚いだろう | あついだろー あついだろー あついだろー | あついだろー | 北・東部 |
平板型+て | 厚くて | あつくて | あつくて | |
平板型+ので | 厚いので | あついので あついので | あついので | 中・北部 |
平板型+のに | 厚いのに | あついのに あついのに | あついのに | 中・北部 |
平板型+ば | 厚ければ | あつければ | あつければ | |
平板型+よ | 厚いよ | あついよ | あついよ あついよ | 中・北部で「あついよ」 南部で「あついよ」 |
平板型+より | 厚いより | あついより あついより | あついより | 中・北部 |
頭高型+ば | 良ければ | よければ | よければ | 中・南部 |
頭高型+らしー | 良いらしい | いいらしー | いいらしー | |
中高型+ば | 暑ければ | あつければ あつければ | あつければ | 中・南部 |
中高型+らしー | 暑いらしい | あついらしー | あついらしー |
2015年から2016年にかけて、上下伊那地域に居住歴のある短大生(上伊那6人、下伊那1人)を対象に行われた調査によると、家族や友人との会話では方言がよく使われており、また方言が好きで残したいと全員が回答した。語彙・語法別に見ると、推量の「ら」や否定の「ん」、理由・原因の「で」、愛嬌ある主張「に」、「ずく」「まえで」「いただきました」などが盛んに用いられている一方で、推量の「ずら」、「おやげない」「もごっちない」「みやましー」などは若年層では使われていなかった。また就職後の職場では使用を控えるという回答が多く、方言と共通語を場に応じて使い分けようという意識が広く持たれていた[100]。
このうち「ずく」は、共通語に言い換えられない独特の意味合いを持ち、また信州の風土・信州人の生き方と合っているなどの理由から全県的に非常に人気の高い方言であり、好きな長野県方言に関する調査では毎回上位にランクインしている[123][78]が、2015年に駒ヶ根市の中学生約250人を対象とした調査では、「ずく」を使用すると回答した割合は3割程度にとどまり、意味はわかるが使用しない、もしくは意味を知らないと回答した割合が合計で約7割に達するという前述の調査と相反する調査結果が得られた[124]。これに対して大橋敦夫はショッキングであると評している[123]。しかし共通語と形式の異なるものでは「つまい」の使用率が低く、「ずく」の使用率がやや低かったものの、過去否定「なんだ」や愛嬌ある主張「に」、「…まるけ」「うつかる」などは意味がわかり、かつ使用すると回答した割合がそれぞれ6割前後となった。また共通語と形式が似ているものや、形式が同一であるが意味用法が異なるものなどは使用率の著しく低い語は見られず、方言であると認識されていないものほど使用率が高くなる傾向が認められた[124]。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.