ユーロコプター EC 225 シュペルピューマMk II+(Eurocopter EC 225 Super Puma Mk II+)は、ユーロコプター(現エアバス・ヘリコプターズ)により開発・製造されている大型輸送ヘリコプター。AS 332 シュペルピューマをもとに設計された。2名の乗務員と1名の客室乗務員の他に24名の乗客を乗せることができる。石油プラットフォームなどへの沖合輸送、VIP輸送、警察任務などに利用されている。
開発
EC 225の開発は1998年7月にユーロコプターから発表された。最初のプロトタイプ2機は2000年11月27日に初飛行し、欧州航空安全局により2004年7月に認証された。
EC 225はユーロコプターのAS 332L2 シュペルピューマを元とした拡大発展形として設計された。振動を低減するために新規に設計した翼型の5枚ブレードからなるメインローターを採用した。エンジンはチュルボメカ社のマキラ2Aターボシャフトエンジンで二重チャネル全自動デジタルエンジンコントロール(FADEC)と寒冷地における運用を可能にする除氷装置を備える。メインローター・ギアボックスも強化され、アクティブマトリックス液晶ディスプレイによりグラスコックピット化された。
現在は4種のコンフィギュレーションが用意されている。乗客輸送版は標準19名、最大24名の座席配置が可能である。VIP輸送版はVIP用ラウンジを備え、8名の乗客と1名のアテンダントを輸送できる。救急医療用として6つのストレッチャーと4名の医療要員が搭乗可能。捜索救助版は専用装備品の積載とそのオペレーター、ホイスト担当の他に8名分の座席と3つのストレッチャーの収容が可能である。
その後、エアバス・ヘリコプターズによって2014年2月に改良型のEC225eの開発が発表された。EC225eはTCAS Ⅱなど新型アビオニクスの装備に加え、マキラ2Aエンジンの改良による最大離陸重量の引き上げ、後部の手荷物コンパートメント内への燃料タンク増設による航続距離延長などの改良がなされる予定で、一部の改良は既存のEC225にも施すことが可能である。2016年2月にコスト削減策によりマキラ2Aの改良は取り止めとなったが、それ以外の改良は引き続き開発が続けられることとなった。
一方、翌2015年にエアバス・ヘリコプターズはEC225の後継となる大型輸送ヘリコプターとしてX6(英語版)の開発を開始したが、2018年初頭に中止となった。そのため、EC225は2030年まで製造が続けられるとみられている。
なお名称はユーロコプターのエアバス・ヘリコプターズへの社名変更に伴い、2015年よりH225と改称されている[2]。
バリエーション
運用者
- 陸上自衛隊は皇室、首相、国賓などの輸送任務向けに3機保有し、陸上総隊第1ヘリコプター団特別輸送ヘリコプター隊において運用される[8]。AS 332Lの代替機として2005年に導入されたが東日本大震災の津波により仙台にて整備中の1機が損失、平成23年度3次補正予算にて1機(JG-1024)が追加取得された[9]。
- 海上保安庁は巡視船搭載用及び航空基地用として11機保有する(JA687A~JA697A)[10]。さらに追加で4機を導入予定である[11]。
- 都道府県警察航空隊は警視庁、福岡県警、沖縄県警などがEC225LP Super Puma Mk2+を保有し、うち福岡県警及び沖縄県警は離島警備のため国境離島警備隊輸送を目的として運用する。
- 東京消防庁航空隊は救助・救急・消火など航空消防用途に3機保有する(JA119Y、JA71KT、JA62HC)。
- エアロパーソネル社が3機のVIPチャーター機を保有する。
- CHCノルウェーが石油開発および全天候捜索救難用途に8機保有する。
- ブリストウ・ノルウェー社が輸送及び捜索救難用途に2機保有する。
- 2006年に中華人民共和国商務部が救難・サルベージ任務向けに2機発注した[12]。
- 2006年に中信海洋直升机股份有限公司が2機発注した。追加燃料ポッドを備え、海上開発に利用される[13]。
- 広東省公安局が1機発注した[14]。
- 中華民国(台湾)
- 2010年に警察庁が1機発注した[18]。
- サザン・フライト・サービス・カンパニー社が救難およびVIP輸送任務に1機保有する[22]。
採用候補
- 現在SH-3 シーキングを利用しているノルウェー海軍の全天候捜索救難機の後継機候補となっている。10-12機が調達される予定で、他の候補はアグスタウェストランド AW101、V-22、NH-90、シコルスキー S-92である[23]。
- イギリスの次期捜索救難機の候補になっている[24]。
事故とインシデント
- 2009年2月18日に乗員2名、乗客16名を乗せたボンド・オフショア・ヘリコプター社のEC 225LP(G-REDU)がアバディーン沖120マイルの北海上に不時着した。18名全員は無事救助された。原因は落雷によって操縦不能状態に陥ったためである[25]。
- 2016年4月29日、北海海上にあるスタトイルの石油採掘プラントに向け飛行を予定していたCHCヘリコプター・サービスのEC 225LP(LN-OJF)がノルウェーのホルダラン県にあるSkitholmen島の付近で墜落した。原因はギアボックスの欠陥によりローターヘッドが飛行中に外れたことである。乗員2名と乗客11名全員が死亡した[26]。
- 2019年10月31日、韓国の中央119救助本部が捜索救難向けに運用する1機が、患者を搬送中に竹島近海に墜落[16]、翌11月1日現在、韓国軍と海上警察がこのヘリの捜索救難活動を展開しているが、ヘリや、患者を含む搭乗者7名は見つかっていない。韓国消防庁のチョ・ソノ報道官は「ヘリコプターの問題か、あるいは操縦未熟など単純事故と見られる」としている[27]。
- 2023年1月18日に、ウクライナ非常事態庁ヘリ墜落事故が発生し、同国内務大臣ら9人乗員乗客と、墜落した幼稚園園児3人が犠牲になった。
詳細(EC 225)
出典: [28]
諸元
- 乗員: 1または2名(正副操縦士)
- 定員: 乗客24名とキャビン・アテンダント1名
- 全長: 19.50m (63.98ft)
- 全高: 4.97m (16.30ft)
- 空虚重量: 5,256kg (11,587lb)
- 運用時重量: 11,000kg (24,251lb)
- 有効搭載量: 5,744kg (12,663lb)
- 最大離陸重量: 11,200kg (24,690lb)
- 動力: チュルボメカマキラ2A ターボシャフト、1,798kW (2,411shp) × 2
性能
- 超過禁止速度: 324km/h,201mph=M0.24 (175kts)
- 最大速度: 275.5km/h,171mph=M0.22 (148.5kts)
- 巡航速度: 260.5km/h,161mph=M0.21 (140.5kts)
- フェリー飛行時航続距離: 985km,612mi (532nm)
- 航続距離: 857km,532mi (463nm)
- 実用上昇限度: 5,900m (19,350ft)
- 上昇率: 8.7m/s (1707ft/min)
登場作品
映画
- 『BRAVE HEARTS 海猿』
- 海上保安庁所属機「JA687A みみずく1号」が登場。大阪湾でタンカーとコンテナ船が衝突する海難事故が発生したことを受け、救助活動にあたる特殊救難隊を現場上空まで輸送し、救助された要救助者の収容にあたる。
- 『シン・ゴジラ』
- 海上保安庁所属機「JA691A いぬわし」と陸上自衛隊所属機が登場。
- 「いぬわし」は、大量の水蒸気が吹き上がっている東京湾羽田沖を上空から観測する。
- 陸上自衛隊所属機は、ゴジラの接近に備えて内閣総理大臣を初めとする重要閣僚を退避させるため、重要閣僚たちを搭乗させると首相官邸から立川広域防災基地へ向かおうとするが、離陸直後にゴジラが発射した放射線流に巻き込まれ、撃墜されてしまう。その後、撃墜された機体と思われる残骸が登場している。
- 『コード・ブルー』
- CGではあるが、後半の海ほたる フェリー衝突事故現場に海上保安庁のJA691J『いぬわし』が登場。ドクターヘリとともに救助活動にあたる。
- 『Fukushima 50』
- 本作には在日米軍・自衛隊が撮影に協力しており、陸上自衛隊の所属機である要人輸送機が登場する。
アニメ・漫画
小説
関連項目
参照
外部リンク
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