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ヘリカルスキャン方式(ヘリカルスキャンほうしき)とは、磁気テープレコーダ(主に1980年代以降のビデオテープレコーダ)の記録メカニズムの1方式で、回転ヘッド方式の1種。
回転する円筒形の磁気ヘッドアセンブリ(形状から「ヘッドドラム」「シリンダ」、働きから「スキャナ」などと呼ぶ)に磁気テープを斜めに走行するように巻きつけ、テープ磁性面に傾斜した多数の記録トラックを形成することを特徴とする。
映像信号のような高い周波数の信号を記録するためには磁気テープと磁気ヘッドの相対的な速度を高める必要がある。しかしテープ送り速度だけで映像信号の記録に必要な相対速度を得るのは困難であるため、考え出された方式である。
ヘッドドラムへのテープの巻きつけレイアウトには大きく分けてα巻き(アルファまき)とΩ巻き(オメガまき)の二つがある。どちらもテープ走行レイアウトを上からみた形状から名づけられた。
α巻きは図1のようにヘッドドラムにテープを360度巻きつける方式が代表格である。テープの走行が比較的素直でテープへの負担が軽くできる。巻きつけ角度は360度以下にすることもできる。代表的なものに1インチBフォーマットおよびDフォーマットがある。家庭用ではかつてVX方式で採用されていた。
Ω巻きは図2・3のようにヘッドドラム近傍に備えたガイドポストでテープの走行方向を変える方式である。図2は巻き付け角が360度弱のものを、図3は約180度のものを示す。
ガイドポストでドラム近傍のテープの姿勢を規制するため、記録トラックの開始・終了部での記録状態を安定させやすい。また、図3のレイアウトはカセットテープ方式に適合させやすいレイアウトであり、VHSもベータマックスもこの方式を採用する。但しカセットハーフからテープを引き出してヘッドドラムに装荷する方式(ローディング方式)はそれぞれ異なる。 1インチCフォーマットは図2に近いレイアウトを採用する。
図1,2のように360度近くテープを巻きつける方式では1組のヘッドでドラム1回転につき1フィールド分の画面を記録する。1フィールドはインターレーススキャン方式における1枚の画像で、NTSC方式では1/59.94秒分にあたる。ただしこの方式ではテープからヘッドが離れて記録できない期間が存在するため、以下のいずれかの方法がとられている。
図3のように約180度巻きつける方式では、円周上で180度ずれた位置に配置した2組のヘッドでドラム1回転につき1フレーム分の画面を記録する。1フレームはインターレーススキャン方式における2フィールドにあたる。1組のヘッドがテープから離れている間に、もう1組のヘッドで記録することになる。
1組のヘッドには、磁気ヘッド1個の場合と、2個以上の磁気ヘッドで構成される場合とがある。複数ヘッドを用いた例としては、Ω巻きでのテープ・ヘッド非接触期間の記録を補償するための補助ヘッドを用いる1.5ヘッド方式(1インチCフォーマットVTR)や、輝度信号と色差信号を別々に記録する方式(ベータカムなど)、高密度記録のため2~4個のビデオヘッドを用いて並列に書き込むデジタルVTRの例などがある。
図4に磁気テープへの記録トラックのレイアウトの一例を示す。
記録トラック間にはトラック間の信号の混入(クロストーク)を防ぐため、何も記録しない隙間をガードバンドとして設けるのが一般的であったが、高密度記録を狙った方式では、記録面を有効活用するため隣り合った記録トラックを隙間なく密着させて記録する。この場合、隣接トラック同士のクロストークを軽減するためヘッドギャップの傾き(アジマス)を隣り合うトラックと変えることが行われる。これはもちろん、ヘッドを複数個使用する記録方式について用いられる。
ヘリカルスキャン記録方式はVTRだけでなく、高密度記録を要求される他の機器、例えばデータレコーダ、R-DAT、汎用コンピュータ用のマス・ストレージシステム(MSS:IBMなどが1980年代に供給した超大容量磁気記録装置)にも用いられた。
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