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スノキ属シアノコカス節に分類される落葉低木 ウィキペディアから
ブルーベリー(英: blueberry)は、ツツジ科スノキ属シアノコカス節に分類される落葉低木およびその果実(ベリー)の総称[1][2][3][4]。果実は生食・加工いずれにも用いられる[5]。別名はヌマスノキ[6]。英名のブルーは果実の青紫色に由来し、ベリーは「小さな実」の意味である[7]。いくつかの系統と品種があり、果樹や庭木として植えられる[8]。
ブルーベリーは大別して6系統(種・タイプ)あるが、食用として重要なのはハイブッシュ系・ラビットアイ系・ローブッシュ系の3系統(種・タイプ)である。そのうち、栽培種にはハイブッシュ系とラビットアイ系の2系統ある[7]。細かい品種は数百種にも及ぶ。
成木の樹高は品種によって違うが、概ね1 - 3メートル (m) になる[8]。北アメリカ大陸でのみ栽培される野生種に近い品種は数十cm程度の低木である。幹は単生、あるいは株立ちすることもある[8]。樹皮は灰褐色で縦に筋があり、やがて裂けて剥がれる[8]。若い枝は淡灰褐色で毛がある[8]。花期は4 - 5月(日本の場合)[8]。春に、ドウダンツツジに似た白またはピンク色の釣鐘状の花を咲かせ、花後に0.5 - 1.5センチメートル (cm) ほどの青紫色の小果実が生る。
葉は秋に紅葉して美しい[9]。葉や果実に含まれるアントシアニンという物質が、葉を赤く紅葉させる主要色素でもある[7]。枝ごとに葉色が異なったり、他の葉の陰の部分が黄色になるなど一枚の葉の中でも濃淡があったり、紅葉の色幅は豊かである[7]。冬芽は卵形で紅紫色、6 - 10枚の芽鱗に包まれていて、芽鱗の縁は褐色である[8]。枝先に仮頂芽がつき、側芽は枝に互生し、枝に下の方の側芽は小さい[8]。葉痕は半円形で、維管束痕が1個つく[8]。
ブルーベリーの祖先にあたる植物は南アメリカに自生していた。その植物がカリブ海諸島を経て北アメリカに渡って進化し、ブルーベリーとなった[10]。
北アメリカ原産[7][8]。野生種(近縁種)はヨーロッパ、東アジアなどにみられ[5]、ヨーロッパ・アメリカでは古くから食用に供し[3][5]、日本でも近縁種のクロマメノキ・ナツハゼ・シャシャンボ・クロウスゴなど野生種の果実を食用とした[3][5]。栽培用園芸品種群の登場は19世紀の末に遡り[5]、北アメリカ大陸のインディアンが利用していた各地の野生種を基にして創出された[5]。これら北アメリカ産の園芸用ブルーベリーが、食用品種としてヨーロッパや日本に伝播した[5]。
果実は北アメリカでは古くから食用とされており、さらに20世紀に入り果樹としての品種改良が進み、ハイブッシュ系、ラビットアイ系、ハーフハイブッシュ系、ローブッシュ系の交配により多くの品種が作出された。(詳細は後述の「種と品種」節を参照。)
主としてビルベリー(bilberry)などを改良したもので、アメリカ原産の背の低いローブッシュ・ブルーベリーと、背の高いハイブッシュ・ブルーベリーとがある[11]。細かく見ると数百種あるブルーベリーの品種の多くはアメリカ合衆国で作られたが、日本やオーストラリア、ニュージーランドなどで作られた品種もある。日本で導入されている品種は100種にも及び多くはアメリカ産品種だが、日本で開発された品種も栽培されている[12]。
1960年にアメリカ農務省(USDA)が七大品種を選定したが、日本の気候に必ずしも合わないことが指摘されている。また、日本に導入された品種名に誤りがあったことが明らかになっている[13]。
高さ50センチメートルから、高いものでは3メートル以上になり、果実は青色から黒紫色になる[11]。 このタイプはさらにノーザンハイブッシュ系とサザンハイブッシュ系、ハーフハイハイブッシュ系の3グループに分けられ、それぞれのグループにたくさんの品種がある。
ラビットアイブルーベリーにもたくさんの栽培品種がある。このタイプは、果実が成熟する前にウサギの目のようにきれいなピンク色になることから名付けられた[14]。
高さ15 - 50センチメートル程度の灌木で、果実は明るいブルー色である[11]。
栽培においては酸性土壌で水捌けが良い土質を好み[7]、農薬を一切使わずに栽培することも可能である。乾燥にも過湿にも弱いため、培土の管理に注意する必要がある。(ただし、地植えであればほとんど気を使う必要はない)ラビットアイ系の品種は自家受粉しにくく、1本だけ植え付けても実つきが悪い傾向にある。同じラビットアイ系で別の品種を一緒に植え付けることで受粉がうまく行われるようになる。ハイブッシュ系のブルーベリーには1本でも結実する品種もあるが、同じハイブッシュ系の異なる品種を一緒に植えることで、より実付きが良く、そして大きな果実が実るようになる[15]。
ブルーベリーは挿し木で増やすのが一般的である。ブルーベリーの挿し木には、挿し木に用いる枝によって新梢を用いる「緑枝挿し(りょくしざし)」、休眠時期の枝を用いる「休眠枝挿し(きゅうみんしざし)」がある[15]。
栽培適地はハイブッシュ系が寒冷地向き、ラビットアイ系が暖地向きとされる。また、サザンハイブッシュ系が作られ暖地でも食味のよいハイブッシュ系の栽培ができるようになった。日本では関東地方の気候は全ての系統の栽培に好適であり、関東地方が日本国内ブルーベリーの主産地となっている。
果実は夏から秋にかけて熟し、甘酸っぱい。生食用の他、ジャムや果実酒、ジュース、菓子材料などに用いる[9]。
一部の品種にはアントシアニンが豊富に含まれ、ブルーベリーやビルベリーを使用した健康食品やサプリメントが「視力回復によい」「動脈硬化や老化を防ぐ」「炎症をふせぐ」などと謳われて広く市販されているが、人での有効性・安全性については、質の高い臨床試験は、ほとんど行われていない[16][17]。食品化学からも、食事から摂取したアントシアニンがそのまま吸収され、目に到達することは考えにくい[18]。アントシアニン酸化・分解しやすく、中性からアルカリ性では容易に分解する[18]。また、水溶性であるため、体内ではほとんど吸収されない(胃や腸などの消化管を通過できない)[18]。国立健康・栄養研究所の論文調査では、ブルーベリーではデータが見つからず、ビルベリーではランダム化比較試験が複数存在するが、目の諸機能の改善を一貫して示してはいない[19][20]。コレステロールや血圧では3つのメタ分析で効果を示していなかった[19]。
いくつかの小規模な研究では、有益な効果の可能性が示唆されているが、規模の小さい研究は偶然に得られた可能性が大きいため、これらの知見を裏付けるためにはさらに多くの研究が必要である[16][21][22]。
ブルーベリーから抽出されたアントシアニンを使った72人と59人での偽薬対照クロスオーバー試験2研究では、暗順応と夜間視力の改善は見られず、光退縮後の視力の回復は早くなっていた[23]。
7つのランダム化比較試験からブルーベリーの抽出物や粉末(クランベリージュースでも)は、12週間後までに2型糖尿病の血糖制御に有益な効果が示されていた[24]。6つのランダム化比較試験をメタ分析し、ブルーベリーのサプリメントは血圧への影響はなかった[25]。
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 240 kJ (57 kcal) |
14.49 g | |
糖類 | 9.96 g |
食物繊維 | 2.4 g |
0.33 g | |
飽和脂肪酸 | 0.028 g |
一価不飽和 | 0.047 g |
多価不飽和 | 0.146 g |
0.74 g | |
トリプトファン | 0.003 g |
トレオニン | 0.02 g |
イソロイシン | 0.023 g |
ロイシン | 0.044 g |
リシン | 0.013 g |
メチオニン | 0.012 g |
シスチン | 0.008 g |
フェニルアラニン | 0.026 g |
チロシン | 0.009 g |
バリン | 0.031 g |
アルギニン | 0.037 g |
ヒスチジン | 0.011 g |
アラニン | 0.031 g |
アスパラギン酸 | 0.057 g |
グルタミン酸 | 0.091 g |
グリシン | 0.031 g |
プロリン | 0.028 g |
セリン | 0.022 g |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(0%) 3 µg(0%) 32 µg80 µg |
チアミン (B1) |
(3%) 0.037 mg |
リボフラビン (B2) |
(3%) 0.041 mg |
ナイアシン (B3) |
(3%) 0.418 mg |
パントテン酸 (B5) |
(2%) 0.124 mg |
ビタミンB6 |
(4%) 0.052 mg |
葉酸 (B9) |
(2%) 6 µg |
ビタミンB12 |
(0%) 0 µg |
コリン |
(1%) 6 mg |
ビタミンC |
(12%) 9.7 mg |
ビタミンD |
(0%) 0 IU |
ビタミンE |
(4%) 0.57 mg |
ビタミンK |
(18%) 19.3 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(0%) 1 mg |
カリウム |
(2%) 77 mg |
カルシウム |
(1%) 6 mg |
マグネシウム |
(2%) 6 mg |
リン |
(2%) 12 mg |
鉄分 |
(2%) 0.28 mg |
亜鉛 |
(2%) 0.16 mg |
マンガン |
(16%) 0.336 mg |
セレン |
(0%) 0.1 µg |
他の成分 | |
水分 | 84.21 g |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 出典: USDA栄養データベース |
国内産に加え、長期輸送・市場流通に十分耐えうる品質のものが世界中から日本の市場へ供給され、通関は通常検査で行われる。
日本にブルーベリーが導入されたのは1951年で、当時の農林水産省北海道農業試験場が米国からハイブッシュ・ブルーベリー(比較的冷涼な気候を好む栽培種)を導入したのが始まりである。一方、暖地に対応するラビットアイブルーベリーは1962年に農林水産省によって導入された[27]。このラビットアイ系品種は1962年に米国ジョージア州から導入され、1968年より東京都小平市で商業栽培が始まった。 [28]。「ブルーベリー栽培発祥の地」を掲げる島村ブルーベリー園経営者の島村速雄によると、東京農工大学時代の恩師で、「日本のブルーベリーの父」と呼ばれる岩垣駛夫(はやお)教授から約130本の苗木を託されたのが始まりだが、当初は日本での認知度が低く、青果市場に持ち込んでも取引を渋られたという[28]。
1971年、長野県にハイブッシュ系品種が導入され、栽培に適した高冷地のある群馬県、新潟県、山梨県、宮城県などを中心に各県で生産されるようになった。東北地方では、岩手県の岩手大学で行われた公開講座により経済栽培が広まった。石川県鳳珠郡能登町の旧柳田村域では、土地の事情からラビットアイ系品種が栽培されている[29]。
1990年以降、パン食文化の浸透や健康ブーム(健康食品としての宣伝効果のほか、外国産農産物に対する不安視)などを受け、関東近郊に摘み取り目的の観光農園や産地が急増した。都道府県別収穫量は、1981年から2014年まで長野県が首位を保っていたが、2015年から東京都が追い抜いている[28]。東京都など関東でブルーベリー栽培が増えた理由としては、追熟で美味しくなる果物と逆に生食用は日持ちがしないうえ、観光農園での摘み取り体験向きであり大消費地との近さが有利に働いたことが大きい[28]。栽培に適した酸性土壌[28]として火山灰土の関東ローム層が広がっていること、砂礫も含んでいるため水はけも良いことなども挙げられる。東京都練馬区では都市農業を残すために補助金で宣伝でブルーベリー栽培を支援している[28]。
2015年以降は東京都が生産量首位となっている[28]。2014年時点の収穫量国内1位は長野県、2位は茨城県、群馬県、東京都だった。神奈川県を除く1都5県が10位以内、神奈川県も15位以内と関東地方に産地が集中している。その他生産が盛んなのは岩手県を中心とした東北地方のほか滋賀県、兵庫県、愛媛県、熊本県など西日本でも高原地帯を中心に栽培が盛んとなっている。加工品は頭打ちだが、生食での人気で年々需要が高まっており、2014年の収穫量は1989年(平成元年)の6倍以上の約2700トンとなっている(輸入量の1970トンを上回る)。農林水産省では特産果樹として統計をとっている。
北米原産で日本では帰化植物として雑草化しているヨウシュヤマゴボウは、ヤマゴボウに似た根だけでなく、ブルーベリーのように見える果実にも毒を含むため誤食しないよう注意が必要で、見つけ次第抜き取ることが望ましい[32][33]。ヨウシュヤマゴボウは多年生草本であり、ブルーベリーのような木本植物ではないが、草丈が2000mm位まで生長するためにブルーベリーと似た外観に見える可能性がある。
ただし、一箇所に複数、青紫色の実が着くブルーベリーとは異なり、一つの果軸に多くの黒紫色の実が生ることや、茎が赤みを呈してブルーベリーのような幹ではないことから、見分けは容易である。
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